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第176話 その後のメルについて話そう

 僕の実家へとキャラクターデータコンバートした僕らは汗だくになっていた。


 それはそうなる。

 寒冷地用の防寒着を着たまま、夏のアーリアを駆け抜けて来たからだ。


 僕の分はともかく、メルの分を脱がすタイミングが分からず、結局2人とも防寒着のまま日本の僕の部屋に転移してきてからもエアコンこそ入れたものの、メルは防寒具を身にまとったままだ。


 だって女の子を脱がしていいか分からないもん。


 僕はたまらず助けを求めることにした。


「水琴、すまん、メルの着替えを手伝ってやってくれ」


「お兄ちゃん。ドラゴンはどうしたの?」


「それは倒した。事情は後、メルが茫然自失になっていて、自分で着替えられそうにないし、着替えもここにないから、水琴、なんとかしてやってくれ」


「わ、わかった」


 そう言って僕の部屋に飛び込んでいく水琴だったが、すぐに自分の部屋との往復を始め、やがて諦めた。


「お兄ちゃんの服使っていい?」


 まあ、水琴とは身長差があるからなあ。


「クローゼットの服、自由に使って良いよ」


 まあ、センスとか壊滅的かもしれないけど、そこは水琴のコーディネート力が試される。(無茶ぶり)


「ああ、それから父さんと母さんは?」


 今日は日曜で、元々は家族のパワーレベリングを始める予定の日だった。


「探索者の登録しにいったよ。今後レベルが上がっていくのに、探索者でない不自然だからって」


「ふぅむ」


 こちらから言い出さずとも率先してやって欲しいことをやってくれている。僕と同類の父さんによる考えか、それとも母さんの気遣いか。その両方かもしれない。


「それにしてもメルさん、どうしたの? 全然返事とかしてくれないんだけど」


「メルの個人的な部分に触れる問題だから、僕が言うのはちょっと違うかな。メルが自分から話すのを待って欲しい」


「分かった」


 水琴は素直に頷いて、僕の部屋へと消えていく。


 両親は夕方には帰宅した。

 僕も経験があるが探索者になるときの講習って結構長いんだよなあ。これまで安全な世界しか知らなかった人間が、命を奪い合う世界に踏み込むことになるわけだから、当然の配慮かも知れないけれど。

 ただの受講者としては、一刻も早く終わってくれ。早く資格者証をくれ。と、思っていたものだ。


「じゃじゃーん」


 と、子どものような擬音を口に母さんは僕に探索者証を掲げて見せた。


「運転免許証の更新よりずっと大変だったな」


 父さんはげんなりした顔で言う。


 そりゃまあ、銃刀法との絡みとかありますからね。

 探索者証を得ると、刃物や銃器を持ち歩けるようになる。もちろんオープンに持ち歩くのは禁止されていて、刃を保護したり、什器は見えないようにする配慮が求められる。

 それでも一般人の中に武器を持った人間が混じることを許したわけで、政府としての懸念ももっともだ。

 だがそれも現在ともなればやや形骸化していることは否めない。


 ひとつは警察職員のレベルが上がってきたことで治安が良くなったこと。

 また警察職員も探索者を相手にする場合の使用できる武器の範囲が広がったことだ。


 もうひとつは犯罪を犯した探索者をひっ捕まえるクランが発足したことで、この活動を政府は黙認している。

 彼らは私刑を行わず、引っ捕らえた犯罪者を警察に証拠と共に送り届けているからかも知れない。


 つまりちょっとでも考えるということができるのであれば、探索者としての力を利用して犯罪を犯すのは割に合わないのである。


 それだけの強さがあるのなら、他の職にいくらでも転職できるしなあ。


「母さん、僕の部屋にメルが来てるけど、あんまり調子が良くないんだ。多分心因性で、病院に行かなくちゃならないほどではないと思うけれど、一応気にかけてあげて欲しい。今は水琴が相手をしてくれている」


「そう。でもまずは夕食の支度をしなくちゃね。メルさんはしばらくウチで預かるの?」


「独り暮らしだからさ。ちょっと今の状態では放置できないかな」


「分かったわ。いつまでだっていていいのよ。あんたの部屋にだったらね」


 ええー、僕はどこで寝ればいいんですかね?

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