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第163話 家族に全てを明かそう

 柊家では可能な限り夕食は一緒に食べることになっている。

 平日は父さんが仕事のため、中々そんな機会もないけど、休日は別だ。そして幸いというか、僕がアーリアで商売するのは土曜日だ。


 夕食を一緒に食べるのは家族間の情報共有会も兼ねている。なので行儀が悪いかもしれないけど、我が家の食卓では結構会話がある。

 そんな会話が一段落するのを見計らって、僕は差し込んだ。


「ちょっと改まって話がしたいんだけど、食事の後に時間もらってもいいかな?」


「今じゃダメなのか?」


 父さんが聞いてくるが、ただ話をするだけではないのでそういうわけにもいかない。


「食事しながらだとちょっと、ね」


「悪い話か?」


 僕は頷く。


「分かった。まずは食事を終わらせよう」


 当然ながらその後で会話が弾むはずもなく、僕たちは黙々と夕食を平らげた。キッチンに食器を下げて、洗うのは後回しということになった。父さんと母さん、水琴の目が僕に向けられている。


「何から話したものかな。時系列に沿っていくかな。去年、僕がしばらく行方不明になっていたことがあったよね。あの時、僕は自分の時間が飛んだと説明したと思う。あれは嘘なんだ」


「嘘だって? しかしお前はダンジョンから出ることなく一ヶ月以上もそのままだったじゃないか」


「僕がミミックに襲われたのは本当。丸呑みにされた僕は気が付くと、別の世界にいたんだ」


 3人が眉根を寄せた。到底信じられないという顔だ。


「まずこの世界は非常に高精度なシミュレーターだよね。その中で僕らは生きている。だけど10年くらい前にコルパゲームズという会社がシミュレーターを買い取って、ゲームとして再構築した。その結果、僕らにはレベルやステータスという概念が付与され、可視化された」


 ここまでは最早一般常識となった情報だ。


「だけど運営の管理するシミュレーターがこの世界だけというわけじゃないみたいだ。ずっと昔からゲームとして運営されてきた別の世界があって、僕はそこと行き来できるようになった。とは言っても信じられないよね。でも皆どこかで感じていたと思う。あの行方不明事件から僕という人間は変わった。まるで別人みたいに」


 父さんたちは顔を見合わせて頷く。どうやらその認識は一致しているようだ。


「大きな要因は2つある。1つはあちらの世界でレベルを上げたこと。もう1つは僕にとってとても重要な出会いがあったこと。今からびっくりさせると思うけど、これは手品じゃないから、心構えだけしておいて」


 そう言って僕はキャラクターデータコンバートした。アーリアの僕の部屋に転移する。僕の部屋のベッドではメルが寝転がりながら漫画を読んでいた。暇だったんだね。ごめんね。

 アーリアの夜は早いから、メルにしてみればいつもならもう寝ている時間だ。寝こけていなかっただけでも褒めてあげたい。


「メル、お願い」


「うん」


 メルは立ち上がる。パーティを組んで、僕は再びキャラクターデータコンバートを実行する。その間はわずか20秒ほどだっただろうか。僕とメルは柊家のダイニングに転移した。


「和也、に、メルさん? 一体これは……」


「僕はあちらとこちらの世界を自由に行き来できるんだ。玄関に行こう。靴を手に持って僕のパーティ申請を受け入れてほしい。実際に見てもらうのが一番手っ取り早いんだ」


「分かった……」


 僕らは玄関に移動して、3人がそれぞれに靴を手にしたので、パーティ申請する。


「それじゃ行くよ。安全な部屋の中に出るけど、向こうの感覚ではもう夜も更けているから、騒がしくはしないで欲しい。隣人が起きちゃうかも知れない」


 パーティ申請が受け入れられたのを確認して、僕はキャラクターデータコンバートを行う。次の瞬間、僕らはアーリアの僕の部屋に転移した。

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