表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/483

第154話 水着を買いに行こう 3

 というわけでイオンモール橿原に着きました。

 電車とバス? 特に何もなかったよ。水琴がずっとメルと話をしてたくらい。

 バスを降りて、施設内に入るとほっとする。


「じゃあ、お兄ちゃん終わったら電話するから」


 そう言って水琴はメルの手を取った。


「って、おい……、いや、まあいいか。いってらっしゃい」


「ツッコむのか納得するのかどっちかにしてよ」


「いや、よく考えたら女性用の水着売り場はちょっと居づらいなって」


「それにプールでいきなり見たほうが感動も大きいと思うよ」


「余計なお世話だ。でも頼む」


 流石の水琴も敬愛してるメルを相手に変な水着を押しつけたりはしないだろ。まあ、同い年なんですけど。あの2人。


 さて2人が水着を選んでいる間は何をしてようか。

 行き先は被ってしまいそうだが、やっぱりスポーツ用品店かな。


 ダンジョン用品と言えばスポーツ用品店かアウトドア用品店である。武器防具の類いはスポーツ用品店、ダンジョン内でのお役立ち道具類はアウトドア用品店と一応棲み分けのようなものは存在している。


 スポーツ用品店の武具類のコーナーを物色していく。

 銃器の類いはスルー。低レベル帯では銃器は有効だが、コスト面でペイできないため、万が一の保険として持ち歩かれる程度だ。なお未成年は購入できないため、どちらにせよ僕は買えない。


 まあ、10層越えた辺りから銃器は有効性を失う。

 火薬で撃ち出すというその特性から、使用者のレベルに依存しない威力が出せるのだが、それはつまりレベルが上がっても威力が変わらないということだ。メンテナンスや、動作不良のことを考えると、銃器はあまり有効ではない。

 またアーリアに持ち込むことを考えると、あまりオーバーテクノロジーな武器は却下だ。


 一方で防具はアーリア製と比べると遙かに軽くて丈夫な物が多い。僕とメルはアーリアで買った防具の下に防弾防刃ジャケットを着込んでいる。

 ポリカーボネイト製の盾なんかも有効性が高そうだけど、見た目で異質なものだとバレるから使えないんだよなあ。

 バレて軍事バランスが変わるかもしれないようなものは持ち込みたくない。


 クロスボウのボルトもまだ買い足ししなくていいかな。

 モンスターは倒すと魔石を残して消滅する。つまり打ち込んだボルトは回収できる。

 曲がっている場合があるのでメンテナンスは必要だが、それはアーリアでもできる。そりゃ日本の方が精度が高いだろうけど、資金が余っているのはアーリア側のお金だ。毒を吸い上げるための先端加工だけはアーリアではできないので、新品だけは日本で買っている。


 ボルトに使う毒は、うーん、日本では非致死性の毒しか売ってないんだよな。武器を売っておいて今更という気もするが、毒はまた違う使い道があるから仕方がない。


 日本では、というか、地球ではダンジョンはそれほど深くまで探索されているわけではない。

 あまり深くないダンジョンであれば、最後まで攻略されたこともあるが、一番奥のボスを倒したところでダンジョンが消滅しないことが分かったので、深いダンジョンに挑戦する意味合いは、あくまで大型の魔石が欲しいという用途に限られる。


 それでも大型に限らず魔石を手に入れることに意味はあるので、各国はこぞってダンジョンに人を送り込んでいるが、一般的に出回っている情報では現在一番深くまで潜った記録で45層。

 多分軍隊や自衛隊なんかはもっと深くまで潜っているが、その辺は情報公開されない。なにせレベルが上がった人間はそれだけ性能が上がっている。

 僕がドラゴンの突進を岩越しとは言え、食らっても死ななかったように、レベルの高い兵士は死ににくい。軍事力という意味で見て、ダンジョンでレベルを上げることは非常に大きい意味がある。当然、パワーレベリングも行っているだろう。


 問題はどこでバランスを取るのか、だ。

 世界がゲーム化してまだ10年と少し。

 レベル30の100人と、レベル40の10人が戦ってどちらが勝つのか、のような検証は行われていると思うが、まだ決定的な答えは出ていないというのが定説だ。

 攻略クランなんかが公開している情報をまとめているサイトを見る限りでは、パワーレベリングそのものは攻略の足枷になっている。


 この世界のルールでは1パーティ6人までだ。

 6人の高レベルな人物がいるのであれば、まとめて奥へ奥へと進みながらレベルを上げるのが、奥へと進む最短の道であり、パワーレベリングのために足を止めたクランは攻略が遅れている。

 ポータルがあるため、支援部隊にあまり意味が無いということもある。


 この先の階層で1パーティで戦っても中々レベルが上がらなくて、3パーティくらいの合同で戦ったほうが効率が良くなる、という可能性もあるが、現状では一般的にはそういう認識だ。


 そういう認識なんだよなあ。


 アーリアでは違う。というか、アーリアのある世界ではというべきだろう。

 アーリアのダンジョンは50階層までで、そこまではパワーレベリングをするよりも1PTでの遠征のほうが効率がいい。だからアーリアには攻略クランが存在しない。

 だけど別の、大迷宮と呼ばれるような50層を遙かに超えるようなダンジョンでは、攻略クランが必須とされる。

 深層を超えた深層、奈落と呼ばれる領域では1PT6人では攻略できないからだ。

 よって奈落に辿り着いた冒険者パーティは、別のパーティと合流してクランを組むか、あるいは自らクランを立ち上げて後続をパワーレベリングする必要がある。


 地球ではまだその段階に至っていないということだ。


 まあ、アーリアにはゲーム世界として積み上げてきた長い歴史があるから、仕方ない。地球はまだ10年と少し。アーリアみたいになるにはまだまだ時間がかかるだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ