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第151話 これからについて考えよう

 階層の雑魚モンスターとは言え、30層のドラゴンを倒した僕らはアーリアの第一線冒険者の仲間入りをしたと言える。


 その日は早めに切り上げて宴会が開かれた。

 せっかくなのでドラゴンの魔石を売った金をそのままぱーっと使った。というより、シャノンさんが売却金の入った袋をお店のカウンターにどんと置いて、これで出せるだけ酒と料理を! って宣言したのだ。

 もちろん僕らだけで食べきれるような量ではなく、その店にいた他の人も巻き込んで宴会になった。


 赤の万剣との契約が終わったいま、僕の所持金はみるみるうちに膨れ上がっていたから、ある程度はアーリアの町にお金を落とさなければならない。

 こうやって店で豪遊したり、社会貢献活動をしているようなところに寄付したり、色んな方面で恩を売っている。

 もちろんだけど打算に基づいた行動だ。

 冒険者ギルドマスターに目を付けられている以上、味方は少しでも多い方がいい。20層のイレギュラーなドラゴンを倒すまでは、アーリアを追放されるわけにはいかないからだ。


 だけど30層のドラゴンを倒したことで、一旦の目処はついた。

 その後のことを考え始めなければならない。


 アーリアの町を出て行くにしても、まずメルがどうするのかを確かめなければならない。そしてどちらの場合でも、僕があちらの世界で何日も旅をし続けるということは難しい。

 毎日日本に帰らなければならない都合上、馬車旅や、馬に乗っての移動は難しいということだ。

 もしもメルが一緒に来てくれたとしても、それじゃメルをどうするのかという話になる。


 来年の春までアーリアに留まることができるのが一番いい。

 僕は模試で東大のA判定をもらっているし、過去問にそれほど手こずらない。結構な確率で合格できるはずだ。そうしたら実家を出て、首都圏で一人暮らしということになるだろう。その部屋はメルの仮宿として使えるはずだ。


 親の目から離れることで日本のダンジョンへも入れるようになる。

 親にはバイトで生活費を稼ぐなどと言っておけばいい。

 我が家の経済状況であれば、国立であれば家賃までは見てもらえると思うが、学費以外は僕が負担できるはずだ。

 というか、魔石が売れるようになれば学費も余裕なんだよなあ。


 水琴の今の成績だと国公立は難しいだろうから、親のリソースはそちらに振って欲しいというのもある。なんならこちらから仕送りだってできるだろう。魔石さえ売れたらね。

 流石にそこまでしたら怪しまれるかな。まあ、そこは状況に応じて、ということで。


 とりあえず目標としては来年の春までに20層のドラゴンを倒して、東大に合格する。親元を離れて、生活基盤を整える。その後、アーリアを出る。


 となるとどこに向かうかも考えておかないといけないな。


 確かここは名前は知らないけど王国の西側であるらしい。なのでさらに西に向かうのが一番手っ取り早い。

 でもそれをすると冒険者ギルド長から、それ見たことかって言われそう。

 言わせときゃいっか。

 あの100均鏡が王様に献上されている以上、王都に向かってもトラブルを引き寄せるだけだろう。


 そうなると西にある国の情報収集をしなきゃいけない。

 領主が鏡をせっせと国内貴族に売っていることから、それほど緊迫した国際情勢ではないはずだ。軍備を増強しているみたいな話も聞かないし。


 折良く日本では夏休みに入った。

 高校3年生の夏休みということで、本当なら受験の追い込みに忙しい時期なのだろうけれど、僕の学力は先に述べた通りだ。

 レベルによるステータスの暴力で勉強を捻じ伏せている。

 読解力、理解力、記憶力のいずれもが大幅に上昇していて、大抵の参考書は一度読めば理解して忘れない。入試の過去問についてもそうだ。

 あえて苦手を挙げるなら小論文などの記述系の設問だが、これも回答例を記憶して継ぎ接ぎすれば大体それっぽくなる。


 もちろん勉学の時間をまったく無くすようなことはしないけれど、両親もこの成績では勉強しなさいとは言いにくいのか、なにも言ってこない。

 というか、夕食後はきっちり勉強しているため、日中の行動についてとやかく言われない、という感じだ。


 なので夏休み中は平日もアーリアに行って情報収集に勤しんだ。


 商材を手に入れに往復6日かかるというような偽装は、もうバレているっぽいので開き直った。なんなら人を雇って運ばせているという体でもいい。それだけの資金を僕は持っている。

 実はもうダンジョンだけで利益出てるんだよね。

 未だに商材をせっせと運んでいるのは、レザスさんにお願いされているから、という側面が強い。近いうちに国を離れるであろう事はもう伝えてあるけど、いる間は消耗品くらいは持って行く予定だ。


 こうして僕の準備は着々と進んでいる。

 メルには言い出せないままに。

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