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第144話 前に進もう

 翌週、僕らは再び砂漠地帯で経験を積んでいた。

 僕は進行方向にサンドワームがいることに気付く。


「サンドワームが5体いますね」


 僕の報告にシャノンさんが首を傾げる。


「3体しか見えないよ」


「見えてる3体の手前に2体。完全に砂に潜っています」


「どれ、試してみるか」


 シャノンさんとエリスさんがずんずんと前に進んでいく。その歩みに躊躇が無くて、逆に僕が焦ってしまう。


「止まって! 二人とも止まって! あと二歩か三歩で踏む位置です」


「んじゃ、カズヤの言うことを信じてみますかねっと」


 二人の大剣が振り上げられて、砂地に叩きつけられる。衝撃音と共に砂が舞い上がる。サンドワームの肉片とともに。


「おー、大当たりじゃねーか。すごいな」


「二人とも振り返ってないで、後ろ後ろ!!!」


 襲ってきたサンドワームだが、奇襲が無ければ僕らの敵ではない。あっさりと片付けてしまう。実際のところ、この完全に砂に潜るタイプのサンドワームを見つけるまでが苦労だった。いないものを探すほど大変なことないのだ。


「すげーな。カズヤの、その魔道具」


「まあ、高かったですからね」


「カズヤが高価いって言うとぞっとするな。値段を聞きたくねぇや」


「ははっ、確かにそうですね」


 僕が頭に装着しているこの魔道具だが、実際には魔道具ではない。

 僕はアーリアに赤外線スコープを持ち込んだのだ。


 熱された砂の中では、サンドワームの体温は比較的低い。

 つまり不自然に温度が低く表示される砂地があれば、そこにサンドワームが潜んでいる。


 一流を目指すんじゃなかったのかと言われてしまいそうだが、これだってひとつの手段だ。僕は僕のできる全ての手段を使って、一流と同じ結果を出す。

 もちろん努力だって続けるけども、いま必要なのは結果だ。


 急ぐ道程ではなかった。つい先日までは。

 だけどアーリアの冒険者ギルド長が僕に目を付けている以上、あまり長くアーリアに留まるのは得策ではない。

 エインフィル伯爵に話は通してあるのだが、冒険者ギルドは領主からは独立した機関で、手出しができない。圧力をかけると逆に中央に連絡されて、国が動くということも起こりうるとのことだ。


 なのでエインフィル伯爵には近いうちにアーリアを離れる可能性について示唆してある。恐らくこの国を離れるであろうことも。


 惜しまれつつも、エインフィル伯爵は理解を示してくれた。鏡については供給が途絶えることも、その価値を引き上げる要因になる。

 お礼と言ってはなんだが、今度は100円ショップの鏡ではなく、ちゃんとした鏡を持って行く予定だ。


 お茶の類いや、その他の消耗品については、物凄く惜しそうな声でこちらで作成できないか聞かれたので、お茶の苗なら手に入るかもしれないと伝えてある。栽培が上手く行くことを祈るのみだ。


 そうやって僕はひとつひとつ準備を整えている。メルには知られないよう細心の注意を払いつつ、アーリアを離れる準備を。


「メル、僕らはそろそろ進むべきだと思う」


「……ロージアさんはどう思う?」


「進むべきだと思います。私の実力が足りていないのは事実ですが、鍛えるにしてももっと先の階層で良いのではないでしょうか」


「っても、決めるのはリーダーだ。あたしは長引いても構わないよ。稼がせてもらえるからね」


 この階層に留まれば長引くことになるだろう。僕とロージアさんの成長を待つにしても、それをするのはもっと先の階層でもいいはずだからだ。


 より危険な環境のほうが成長度合いは高いだろう。そして僕が思うにこの階層は僕らにとっては温すぎる。いや、温度は高いんだけどね。カラッとしてるからそれほど苦痛ではないけれど。


「うーーーーん」


 メルにしては悩んでいる。

 どうしてだろうか。僕らのレベルであれば次の岩石地帯は比較的戦いやすいはずだ。索敵の重要性、そして飲み水のためにロージアさんの水魔法が活躍するから砂漠地帯に留まっているものだと思っていたけれど、別の考えがあるのだろうか?


「うん。そうだね。26層に行こう」


 メルは決断した。

 僕らはまた一歩前に進む。

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