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第136話 確認を取ろう

 パワーレベリングを終えることに決めたが、それは僕の決断でパーティメンバーの了承を得たわけではない。赤の万剣との契約だっていきなり打ち切るというわけにはいかない。


 日本ではゴールデンウィークに入った5月1日、その日のパワーレベリングを終えた僕はアーリアへの帰り道でパワーレベリングの終了を提案してみた。


「確かに頃合いじゃねぇかなぁ」


「あたしはむしろいつ終わらせるんだって思ってたよ。ロージアたちもレベル40になったし、元々レベル40までのはずじゃなかったっけ?」


 言われてみればそんな予定だったような気もする。


「ヘイツさんから見て、どうですかね? 僕らで30層のドラゴンに勝てると思います?」


「真っ当に育ったヤツなら余裕だろうが、パワーレベリングでのレベル40だからな。それに俺たちゃお前さんらが戦うところを一度も見たことが無いときたもんだ。後衛2人がド素人なことを考えると、このまますぐにってのはオススメできないな」


 ニーナちゃんとロージアさんはパワーレベリングの間、それぞれの魔法を繰り返して使うことで熟練度を上げてきた。それでも期間が短かったこともあり、レベルの割りにスキルが熟達しているとは言えない。


 レベルによるステータスの上昇で威力は底上げされているが、スキルそのものへの理解が足りなかったり、使い慣れていなかったりするのだ。


「16層辺りから30層まで自力で上がっていくのがいいんじゃねぇかな。16層なら今の前衛で簡単に蹴散らせるだろうし、それだけ時間をかければ後衛も場慣れするだろう」


「ちなみに30層に到達できたからと言っていきなりドラゴンと戦うのは勧められないよ。竜種は1層か2層先の魔物だと思ってかかったほうがいいからね。29層で十分に慣れてから30層というのが安全だよ」


 ヤクトルさんの注釈が入る。僕らのパーティに専門の斥候役はいないので、僕はパワーレベリングの間、ずっと彼の動きを目で追っていた。僕がいきなり本職の斥候のようにできるとは思えないが、少なくとも全くの無知ではない。


「少なくともレベルが足りないということはない、ということですね」


「それを言うとレベル30ちょっとあれば、30層まで行けないこともないからな。レベル35もあれば30層でレベル上げができる。やるヤツは少ないがな」


「大抵は29層で十分にレベルを上げて30層はスルーするからね」


 それはつまりそれだけドラゴンという相手が厄介だ、ということだ。


「つまり僕らに足りないものは経験だ、ということですね」


「話が戻るが、レベルが足りないなんてことは無いな。経験は、積むしかない」


「分かりました。パワーレベリングの依頼は今回までということでいいでしょうか?」


「元々レベル40くらいまでってことだったし、十分に稼がせてもらったからな。俺は異論無いが、皆はどうだ?」


「異議なーし」


「俺も大丈夫だ」


「それで構わねぇよ」


 特に異論はないようだ。


「では、そういうことでいいですか?」


「ああ」


 ヘイツさんが頷く。僕は感謝の意味を込めて頭を下げそうになったが、アーリアの文化ではこういうときは握手を交わすものだ。右手を差し出すと、ヘイツさんが強く握り返した。


「長い間ありがとうございました」


「こちらこそ毎度ありだ」


 こうして僕らのパワーレベリングは終わり、赤の万剣は冒険者から引退した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです。 少なくとも最新話まで楽しんで読むことができました。 [気になる点] 情報化社会の中、警察とかダンジョン管理局とか、そういう公共機関の絡みがないのが少し残念。 世界観の広がり…
[一言] ドラゴン退治の後は二人の関係も進展して欲しいですね。
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