表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/483

第133話 ストーカー規制法について知ろう

 警官の制服を着た男性が警察手帳を開いて見せた。


「分署の塚原です。通報のあった柊さんのお宅はこちらでいいですか?」


「はい。僕が通報した柊和也です。こっちが被害にあってる妹の水琴です」


「さっき自転車で走り去っていく男性が見えましたけど、あれが付き纏っているという男性ですか?」


「はい。そうだよな? 水琴」


 水琴はこくこくと何度も頷いて同意の意を返す。


「とりあえず事情を聞かせていただけますか?」


「はい。えっと、あの……」


 水琴がたどたどしくメッセージが来たところから説明を始める。メッセージやメールを削除してしまっていることについて、やはり次からは残しておいて下さいと助言を受ける。


「さっきの男性に見覚えはありませんか?」


「ありません。知らない人です」


「分かりました。この辺りの巡回を今後密にしたいと思います。ですが、さしあたってできるのはその程度ですね。出歩くときはできるだけ1人は避けてください。なにかあってからでは遅いですから。今後もつきまといが続くようだったり、なにか嫌がらせがあった場合は、すぐに110番してください」


「分かりました。よろしくお願いします。被害届とかは出せませんか?」


「ちょっと難しいかも知れません。ストーカー規制法の要件から外れると思いますので」


「どういうことですか?」


「ストーカー規制法は恋愛感情や、そのもつれからその対象に対して行われるつきまとい等の行為を規制するものですので、この場合は微妙に外れるんですよね。こういう場合は迷惑防止条例が適用されるんですが、こちらは直接の接触がないと立件が難しくて。メールが残っていればそちらで立件が可能であったかも知れませんが」


「なるほど」


 つきまとっている男が好意を抱いているとしてもその相手はメルだと予想される。そのメルに対してつきまといをしたのであればストーカー規制法の対象になるが、あくまでその友人に過ぎない水琴であれば対象にならない。また迷惑防止条例の対象になるためには水琴への直接の接触があることか、あるいはメールなどの証拠が必要だ、ということだ。


「どういうこと?」


「お前がメールを消してなければ被害届を出せたってことだ」


「あう」


 それから警官はくれぐれも1人で出歩かないように念を押して帰って行った。


「明日から学校どうしよう……」


「休むわけにもいかないだろ。僕が送り迎えするから、部活は休めよ」


「うん。ごめんなさい」


「で、メルとの写真をどこまで広めたんだ? まさかネットに上げたりしてないよな?」


「してないよっ! ただ学校で自慢はしたかも……」


「画像を渡したりは?」


「仲のいい子には何人か……」


「ネットに上げないように言っておいたか?」


「言ったよ」


 まあ、ネットに上がっていれば例の娘の新しい画像だってことで騒ぎになっているだろうし、拡散はされていないのだろう。ということは逆に犯人が絞り込めるということでもある。


「お前の友だちの身内、だろうな」


「えっ」


「お前を特定して自転車で行き来できる範囲に住んでるってことだから、まず間違いないだろ。友だちに心当たりを聞いてみた方がいいぞ。ネットには上げてなくとも、画像を家族に見せたりはしてるかもしれないしな」


「うん。明日聞いてみる」


「それならこの画像を見せて聞いてみろ。人相までは分からないけど、雰囲気くらいは伝わるだろ」


 僕はさっき撮った写真をメルにラインで転送する。


「父さんと母さんが帰ってきたらちゃんと説明するんだぞ。それから学校にも言っておくこと。僕が送り迎えすることもちゃんと伝えておけよ。でないと僕が怪しまれるからな」


「分かった。ちゃんとする」


 その後、帰ってきた母さんに事情を説明したところ、母さんが車で送り迎えすると言い出したが、行きはともかく帰りは仕事をそんなに早く切り上げられるはずもなくて、結局僕が自転車で送り迎えすることになった。


 まあ、水琴の通う中学校は高校への経路上にあるからそれほど不便というわけでもない。朝に家を出る時間もいつも通りで構わないくらいだ。


 そして翌日になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ