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第128話 美容院に行こう

 僕が予約を入れた美容院キュア大和八木店は、大和八木駅のすぐ駅前だ。電車で来たので予約の時間より20分くらい早く着いてしまった。かと言って先に仕入れをしたら大荷物を持って店に入ることになってしまう。早すぎるとは思うけど、行ってしまおう。


 店の前に到着すると店員さんがやってきてドアを開けてくれる。


「いらっしゃいませ。ご予約はされていますか?」


「17時に予約している柊です」


「柊様、お待ちしておりました。初めてのご来店ですね。会員カードを作りますのでこちらのお席へどうぞ」


 椅子を引かれてそこに座ると、氏名や住所を書くための紙が出てくる。


「こちらにご記入をお願いします」


 僕は言われるがままに空欄を埋めていく。氏名、生年月日、住所、連絡先、来店のきっかけや、アレルギーの有無、髪型の希望や悩みなど、結構色々書かされる。髪を切るだけなのにこれって必要なのかな?


 書き終わったアンケートと母さんから貰った紹介カードを渡す。初回1000円オフの特典付きだ。


「お預かりしました。少し時間がありますので、そちらでお待ちください。雑誌などお読みになられますか?」


「あ、じゃあ、お願いします」


「はい。少々お待ちください」


 店員さんは3冊の雑誌を持ってくる。ヘアメイクの雑誌と、地方の紹介誌と、雑貨の雑誌だ。とりあえずどんな髪型にしてもらうかも決まっていないからヘアメイクの雑誌でも見てみようか。


 うーん、全然イメージが湧かない。僕としてはなんかこうナチュラルな感じがいいのだが、それが野暮ったいってことなんだろうしなあ。


 雑誌に載っているモデルはみんなイケメンで、そこに僕の顔を当てはめて考えると、一気にダサくなる感じがする。くそ、結局は顔か。顔なのか。


 雑誌をざっくりと読み終わる。文字ばかりのコーナーは読み飛ばしたけど。とりあえず分かったことは、僕に似合う髪型は自分では分からん、ということだ。


「柊様、お待たせしました」


 ちょうどそのタイミングで声を掛けられる。母さんよりは若いなと言ったくらいの女性だ。


「今日の担当をさせていただきます山口です。こちらへどうぞ」


 奥へと案内されて付いていくとずらりと鏡と椅子が並んでいる。理髪店と違うのは椅子の前にシャンプー台がついていないことだ。


 マントみたいなのを着せられて、首の周りにタオルを巻いて、さらにその上からひらひらしたのを着けられる。


「お首苦しくはないですか?」


「あ、大丈夫です」


 なんでこういうとき最初に「あ」って言っちゃうんだろうな。


「今日はどんな感じにしましょうか?」


「それが自分でもどんな髪型がいいのか全然分からなくて。こういうところに来るのも初めてですし」


「普段は理髪店ですか? どんな感じにされています?」


「短くしてくださいとしか。刈り上げとかはしてもらってません」


「高校生なんですよね? 校則とか厳しいですか?」


「いえ、普通だと思います。染めたら流石に怒られるでしょうけど」


「セットするくらいは大丈夫ということですね。先ほど読まれていた雑誌で気になる髪型とかありませんでしたか?」


「それがもうさっぱりで。どんな髪型なら似合うと思いますか?」


「そうですね……」


 美容師さんは僕の髪を弄りながら少し考える。


「癖の無い綺麗な髪ですし、清潔感とボリューム感を出して行きましょうか」


 そう言いながら美容師さんは霧吹きで僕の髪を少し濡らす。そしてハサミを入れ始めた。チョキンチョキンと髪の毛が切り落とされていく。自分でも伸びてたとは思うけど、結構バッサリ行くなあ。


「柊さんはどういうきっかけで美容室を利用しようと思われたんですか?」


「最近、変わらなくちゃいけないなと思う出来事があって、体を鍛えたり勉強に力を入れたりしてたんですけど、見た目のことを疎かにしてるって父に言われまして」


「いいお父様ですね。どんな出来事か聞いても大丈夫ですか?」


「ええと、女の子の友だちができまして、一緒にいるときに今までのままの自分だと恥ずかしいなと」


「そういうのいいですねぇ。じゃあ格好よくならないといけませんね」


「そこまで考えてないんですけど、せめて並んで立って恥ずかしくならない程度にはなりたいなって」


 言ってから思ったけど、メルと並んで恥ずかしく無い程度ってかなりハードル高くない?


「じゃあ目一杯格好良くさせていただきますね」


「なれますかね?」


「髪型から受ける印象ってすごく大きいですから、少なくとも変わったことは伝わると思いますよ。後は姿勢や表情ですかね。眉も整えましょうか。千円かかりますけど、いいですか?」


「じゃあ、お願いします」


 こうなりゃ毒を食らわば皿までだ。

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