表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/483

第127話 美容院の予約を入れよう

 僕はなんとなく先延ばしにしていた美容院の予約をようやく入れることにした。


 いや、美容院ってハードル高くない?


 理髪店なら勝手が分かる。髪を切られて、シャンプーされて、顔剃りされて、はい終了ってなもんだ。最近だと本当に髪を切るだけのクイック理髪店とかも増えてきている。そういうのって気楽で良いよね。値段も安いし。


 それに比べて美容院ってそもそも男が予約を入れていいものなの? ってところから話は始まる。なんか女の園って感じがするじゃん。


 家族に言わせれば考えすぎだとのことだ。美容院にも普通に男性客はいるし、むしろ髪の整え方まで教えてくれるという。


 と言われても実際に電話をかけるにはハードルが高い。まず店を知らないし。


 結局は母さんや水琴も利用しているという大和八木駅前の美容院に予約を入れることにした。紹介特典をどちらが貰うかで母さんと水琴の間で一悶着あったが、そこはお金を出してくれる母さんが勝った。


 紹介用カードというのを母さんから受け取って、スマホの通話アプリを立ち上げる。なんか凄い緊張する。電話番号を入力したものの、通話ボタンをなかなかタッチできない。


 店が忙しい時間とかそういうことないかな?


 などと電話をしない言い訳ばかりを考えてしまう。分かるかな、分からないかな。多分陰キャ特有の病気みたいなものだと思うんだけど。


 でもメルならきっと気にもしないんだろう。ひーくんのお母さんから紹介されました!って言って相手がきょとんとするところまで思い浮かぶ。


 ふっと口元に笑みが浮かんで、緊張が解ける。通話ボタンを押した。


『お電話ありがとうございます。キュア大和八木店、佐々木(ささき)です』


「えっと、そちらでお世話になっている柊早苗ひいらぎさなえの紹介で、予約を入れたいんですけど」


『ありがとうございます。カットのご予約でよろしいですか?』


「はい」


『お名前をお伺いしてよろしいでしょうか?』


「柊和也です」


『ひいらぎかずや様ですね。お電話番号は今おかけになっている番号で問題無いでしょうか?』


「はい。それで大丈夫です」


『それではご予約の日時ですが、担当など、ご希望ございますか?』


「担当は、その、お任せします。日時は今週木曜までならいつでも大丈夫なんですが、金曜日だと夕方以降で、土日はちょっと都合が悪いです」


『そうですね、ちょっとお待ちください……。6日の木曜日夕方17時からで如何でしょう?』


「大丈夫です。それでお願いします」


『それでは当日お待ちしております。お電話佐々木が承りました』


「はい。失礼します」


『失礼致します』


 電話を切って息を吐く。ふー、予約をするだけなのに緊張した。こんなんじゃお店に入る時に心臓発作を起こすのではないだろうか。


 なんて言っている間に冬休みも終わりが近い。宿題は早めに終わらせてあるが、3学期の予習を始めておくことにした。知力の上昇に伴って教科書の理解度が格段に増している。一読しただけで大体の内容が理解、また記憶できる。ちょっと怖いほどだ。


 日本でも金持ちは子どもをパワーレベリングさせることがあって、その是非について議論が巻き起こっている。一部では法規制するべきだとの声もある。確かにこれだけ理解力が上がると平等な競争だとはとても言えないだろう。富める者がさらに富めるという循環が生まれそうではある。


 地球がゲーム化してまだ10年。企業も、人も、試行錯誤の段階だ。パワーレベリングがこれほど学力に影響を与えるのだとすれば、この流れは今後加速していくことだろう。


 一方で地球の探索者たちはまだそれほどレベルが高くない。専業探索者でも10年で上げられるレベルはそれほどでもない。無理をすれば死ぬのだから当然だ。どうしても安全マージンを取った階層でレベルを上げることになる。


 それでも第32層まで攻略されているというのならレベル40を越える探索者がいるということだ。あるいはレベルでは及ばなくとも地球の武器類によって無理矢理狩りが成立しているということだ。彼らに依頼すればレベル20くらいまでなら簡単にパワーレベリングできる。数十万円とか、数百万円の費用がかかるだろうが、それで得られる知力を安いと考えるか、高いと考えるかは、親の資産次第だろう。


 考えようによれば僕の急激な学力向上もレベルと結びつけて考えられてもおかしくない。僕の通う高校は成績を順位で発表したりはしないから、僕の成績が急に伸びてもそれが分かるのは教師だけだが、それでもあまりにも急な学力向上は変に思われるかも知れない。成績のコントロールが必要だ。


 やるべきこと、考えることはあまりにも多い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ