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第119話 凍土を突っ切ろう

 僕はソールさんたちと折半した残りの魔石をパーティ資金として預かった。その代わりに冒険者ギルドに行き、お金を下ろして皆にそれぞれ金貨10枚を配った。


「これは防寒着を買うためのお金だから、そういうつもりで使って。余った分は返さなくてもいいけど、必ず防寒着を買ってね」


「さっすが大将、気前が良い」


 シャノンさんにバンバンと肩を叩かれる。


「じゃあまた7日後に西門の前で」


「連絡忘れんなよ。あたしは忘れてるからな」


 エリスさんが笑う。


 僕は冒険者ギルドの受付カウンターで来週分の依頼を出しておくことにした。今回は昨日の今日で募集を掛けたため、応じてくれるパーティがいるかどうか不安だった。7日の猶予があればもうちょっと余裕を持って対応できる。


 依頼はアーリアのダンジョン第16層から第21層までのポータル開通の護衛。最低レベルは30に設定した。報酬は金貨15枚。日取りはシャルタクの14日。日が暮れるまでが期限だ。


 そして僕らは冒険者ギルドの前で別れた。すでに日が暮れている。僕も日本に戻らなくてはいけない。


 アーリアの自室から日本に戻って何食わぬ顔で夕食を食べて、勉強して筋トレして風呂に入って寝る。


 翌週には日本でも12月を迎え、冬が本格化し始めた。補習も今週で終わりだ。幸い自主勉強の甲斐もあって、授業には完全に追いついた。期末テスト範囲の復習もバッチリだ。今回は赤点を取らずに済むだろう。


 土曜日がやってきて僕はメルを連れて魔石を売り、仕入れをして、レザスさんに納品して、冒険者ギルドにお金を預け、依頼を受けた冒険者がいるか確認した。金貨15枚と奮発したお陰か、依頼はすぐに受注されたらしい。依頼を引き受けたパーティと実際に会うのは明日の朝ということになった。


 その後、メルと一緒に防寒着を買いに行き、シャノンさんとエリスさんの宿に伝言を頼んで、念のためニーナちゃんとロージアさんにも明日冒険に出ることを伝える。


 翌日、防寒着を身に纏った僕らはアーリアの凍土に挑む。とは言ってもレベル30超えのパーティが護衛だ。湿地帯のように歩きにくいということもなく順調に第20層まで進む。


「ひーくん……」


 第20層へのポータルを抜けたところでメルが僕の服の袖を掴んだ。僕はメルの手を手袋の上から握った。


「今じゃないよ。メル。今じゃない」


「分かってる。もうちょっとの辛抱だよね」


 ドラゴンが住み着いたというエリアを避けてポータルを目指す。案外あっさりと第21層に到達した。第21層からは砂漠だ。今度は防寒着を脱がなくてはいけない。僕らはポータルでダンジョンの外に出た。護衛のパーティに割り符を渡し、魔石を分け合って別れる。


 次回の依頼を出して皆とは別れる。次回は21層から26層だ。最低レベルは冒険者ギルドの受付嬢の勧めもあってレベル40にした。35でも良いんだそうだが、砂漠は護衛の難易度が高いらしい。その分の余裕を見てレベル40だ。報酬は金貨30枚にした。


 日本に戻ると、期末テストが待ち受けていた。5日間のテストを難なくこなす。補習が無くなって空き時間が増えたので、テスト対策をする時間が十分にあったからだ。手応えを感じつつ、テスト最終日が終わった。


 中間テストの時はこの後、吉田くんに声を掛けられたんだっけか。だが今回はそういうこともないようだ。僕は相変わらずクラスではぼっちで、友だちがいない。できれば欲しいと思ってるんだけどな。友だち。


 ただ趣味が合う友だちを探すのは難しい。僕は趣味だったゲームやアニメから遠ざかってしまったし、学校以外の時間は運動と勉強に費やして、土日はアーリアで過ごしてきた。一般的な高校生と話ができるような話題がなにもない。


 まあ、ドラゴン退治が済んだら、そういうことも考えていこう。

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