第117話 依頼を受注した冒険者と会おう
翌朝、メルと一緒に冒険者ギルドに行くと僕の出した依頼はすでに受注が済んでいた。引き受けたのは20台半ばくらいに見える6人パーティだ。ただレベルが上がると老化が抑えられるというデータもあるので、もしかしたらもっと若いのかも知れない。
「パーティ暁の巡礼、リーダーのソールだ。君が依頼主のカズヤでいいのかな?」
「はい。僕が和也です。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく頼む。今日はダンジョンの8層から15層までの護衛だと聞いているが、間違いないか?」
「はい。それと道中で倒した魔物の魔石は折半です」
「2人しかいないようだが、他のメンバーは?」
「西門の前で待ち合わせています」
「では早速向かおうか。15層までとなると時間がかかるからそのつもりでいてくれ」
ソールさんが颯爽と歩き出したので僕らは慌てて付いていく。
「日が暮れるまでに到達できますか?」
「正直に言うと、分からん。15層までの道なんか覚えてないしな」
ポータルで簡単に階層間を行き来できるから、しばらく通っていない階層の道を覚えていないのは当然だと言える。
「明日の朝日が昇るまでに15層に到着できればいいだろ?」
あー、そういう感じかぁ、と僕は改めて日本とアーリアの常識の違いを思い知る。アーリアでは今日中にということは、翌日の朝日が昇るまでなのだ。これは常識を知らなかった僕のミスだ。
「途中、日が沈んでから2時間とかの休憩をもらうかも知れません」
「明らかな遅延行為じゃなければ構わないさ」
「遅延行為?」
「つまり14層とは言わずとも13層くらいまでポータルを開けさせつつ、時間に間に合わないようにして依頼料の返金を狙うのは無しってことだ」
「そんなこと考える人がいるんですね」
「割りと頻繁にな。自分たちが依頼を受ける側になったらすぐに分かる」
「肝に銘じておきます」
そんなことを話している間に西門に辿り着く。ニーナちゃん、ロージアさん、シャノンさん、エリスさんは1カ所に固まって僕らの到着を待っていた。僕が思っていたよりも時間が無いようなので自己紹介は歩きながら行う。
ソールさんのパーティは前衛2中衛1斥候1攻撃魔法使い1回復魔法使い1の、メルの言葉を借りれば一般的なパーティ構成だ。僕らの構成にも近い。今日は勉強させてもらおう。
「ダンジョン内では俺らの命令が絶対だ。走れと行ったら走り、止まれと言ったら止まれ。それができないようなら守り切れない」
「分かりました」
僕とメル、ニーナちゃん、ロージアさんは神妙に頷くが、シャノンさんとエリスさんは不服そうだ。それでも表立って文句を言わないのはソールさんとレベル差があるからだろう。レベル15のシャノンさんたちと、レベル25以上であるソールさんたちでは、レベルによる補正値が違いすぎる。例え腕前に差があったとしても、レベル差の前にひっくり返される。
「カズヤは日が暮れる前に15層に行きたいんだよな?」
「まあ、できればでいいんですけど」
「なら10層までは駆け足で行くぞ。なに、速度はそこの小っちゃいのに合わせるさ。だけど回復魔法使いだろ? 自分に回復魔法を使いながら走れば体力については心配いらない。一気に駆け抜けるぞ」
まさかのマラソンが始まった。