第116話 依頼を出そう
11月23日、勤労感謝の日。アーリアでは月が変わってシャルタクの月になっているということもあって、僕はまず家賃を払うためにアーリアに行った。不動産屋のお婆さんに家賃と手数料を払って、日本に戻る。
パーティでのポータル開通で手に入れた魔石を売るために橿原ダンジョンへ。半分を皆で分けたために手元にある魔石はさほど多くは無いが、8層まで潜ったこともあって単価の高い魔石も混じっている。3万円ほどになってひとまず安心する。この調子なら今後も日本での仕入れに困るというようなことにはならないだろう。
大和八木駅前で仕入れをして、自宅に戻る。これらの作業をしておくだけで、土曜日に使える時間がぐっと増える。とは言ってもメルは日本に来たがるかも知れない。それはそれでいいだろう。用事がなければメルを日本に連れてきてはいけないということはない。
平日、クラスメイトからの接触は依然として無い。どうやら檜山たちが睨みを利かせているのだとようやく気付いた。僕に声を掛ければ、どうなるか分かっているんだろうな。というようなやりとりが裏で行われているのだと思われた。
一方で僕を孤立させてなにかするというわけでもない。単なる意趣返しということであるようだ。まあ、僕としても今のところ1人でいるのは好都合なので、放っておくことにする。
11月27日土曜日、メルはやっぱり日本に来たがったので、大和八木駅前でパフェだけ食べに行く。寒いのにパフェで良いのかと思ったけれど、メルは平気のようだ。
その後、レザスさんのところで仕入れた商品を納品して、前回の納品分の売り上げをもらう。手数料と税金が差し引かれて、金貨300枚ちょっとだ。
売上金を口座に入れるついでに冒険者ギルドでポータル開通の依頼について聞いてみる。
「ポータルの開通の協力、というか、護衛ですか。ダンジョン内での護衛ってあまり聞かないので相場はあって無いようなものですが、レベル25のパーティを1日拘束するということであれば金貨8枚くらいからですね」
エリスさんの見立ては正しかったということになる。
「じゃあ金貨8枚で依頼を出していいですか? レベル25以上のパーティで8層から15層を目指します。魔石は折半。護衛対象は6人です。期限は明日の間です」
「分かりました。明日の朝に貼り出されるようにしておきます。金貨11枚までの依頼は手数料として金貨1枚をいただくことになっていますがよろしいですか?」
「金貨11枚を超えると手数料は1割ですか?」
「その通りです」
「冒険者が依頼を受けなかったとしても手数料は返金はされない、ということでいいんですね?」
「はい。仰るとおりです」
僕は少し考える。金貨8枚は相場通りだから他にも似たような依頼が出ていてレベル25を過ぎたくらいのパーティが出払った結果、僕の依頼が残ると言うこともあり得る。
「依頼料を金貨10枚に変更します。手数料と合わせて金貨11枚です」
「はい。確かにお預かりしました」
冒険者ギルドを出て、その後はベクルトさんのところで修行に励む。僕はようやく丸太の的から解放されて、乱打ちに参加できるようになった。少しは成長しているということだろう。