第115話 ポータルを開通しよう
僕らはパーティを組んでアーリアのダンジョンに突入した。ダンジョン未挑戦の2人がいるので第1層にしか飛ぶことはできない。スモールスライムを踏み潰して魔石を回収しつつ、ポータルへと真っ直ぐ向かう。
第2層、第3層と楽々進む。シャノンさんとエリスさんの手にかかればこの辺りの魔物は鎧袖一触だ。ロージアさんには熟練度上げ目的で水属性の攻撃魔法を使ってもらう。
第4層へのポータルを抜けたところで昼食休憩を取ることにした。4時間ほど歩き続けて、ニーナちゃんとロージアさんが疲れ気味だということもある。ちょっと前までの僕もこんなだったな。いや、もっと酷かったかも知れない。
第4層、僕が1人では勝てなかったレッサーコボルトも2人の敵ではない。
第5層、ついに僕とメルにとっては未到達の領域だ。
僕とメルはニーナちゃんとロージアさんを守ることに注力することにする。とは言ってもシャノンさんとエリスさんは戦い方も上手い。魔物が後衛に抜けてくることはまず無さそうだ。よって僕の仕事は周辺警戒ということになる。
第6層に到達した。
ダンジョンのフィールドは草原から森に変わる。予備知識としてフィールドタイプが変わることは知ってはいたが、実際に鬱蒼とした森に放り出されると、不安感が大きい。東の森でやっていた頃と変わらないとは思ってみても、魔物の強さは段違いだ。ひとつのミスが死に繋がる。
シャノンさんとエリスさんは競うように魔物を倒してくれるので殲滅速度は早い。だが彼女たちは周辺警戒が疎かだ。特に後衛を守ろうという意識が低い。油断しているとさっさと先に進んでしまう。
「シャノンさん、エリスさん、一旦戻って。後衛と歩調を合わせて欲しい」
「付いてこれねー方が……、いや、わぁったよ」
ニーナちゃんが少し辛そうなのが目に入ったのだろう。シャノンさんは頭をガリガリと掻いて、歩調を緩めてくれた。
「すみません。体力が無くて」
「最年少なんだし仕方ないよ。歩幅も全然違うだろうし、よく付いてきてるよ」
「ありがとうございます」
第7層へのポータルを抜けて休憩する。ここまでの強行軍でメルのレベルが8に。ニーナちゃんとロージアさんのレベルが3に上がった。
「この階層から魔物によっては武器を使い出すんだよね」
「そうだな。一気に手強くなる。まあ、あたしにかかりゃ楽勝だけど」
「ソロで7層は経験無いだろ。でもまあここまではアタシらでなんとかなるよ」
「念のためポータルの近くで狩りをしようか。行けそうなら8層へのポータルに向かおう」
「このメンバーじゃしゃあねぇな」
そういうことでポータル付近でしばらく狩りをすることになった。武器を持った魔物を相手にシャノンさんたちは1対1なら後れを取らない。つまり2匹までならどうにかなる。それでも油断せず、僕らは1匹ずつ確実に仕留めていった。
僕のレベルが6に上がり、ニーナちゃんとロージアさんもそれぞれレベルが4に上がる。
「気を付ければ問題無さそうだね。8層に向かおう」
僕が地図係を務めながら、第8層へのポータルがある方向に向かう。平原とは違い、ポータルを目視するのが難しいので、距離感覚が重要だ。周辺警戒は他のメンバーに任せ、僕は歩数に集中する。本職の斥候なら両方同時にこなせるのだそうだが、僕にはまだ無理だ。
なんとか第8層へのポータルに辿り着き、僕らは一旦ダンジョンの外に出ることにした。夕暮れが近づいていたということもある。冬の1日は短い。他の冒険者たちも今日の狩りを終えて続々とポータルから出てくる。
僕らはポータルから少し離れた場所で今日の精算をすることにした。魔石を価値でより分けて、大体半分を僕がパーティ資金として預かる。残りを6等分にして、それに加え金貨5枚ずつを配った。
「次回からは護衛をつけて進めるところまでポータルを開通しようと思う。レベルいくつからのパーティが適正かな?」
「レベル20を超えてるパーティに15層までってところかね。金貨6枚も出せば飛びついてくる」
「安全を買うならレベル25からだな。それでも金貨10枚も必要ない。レベル25の連中にしてみれば8層から15層は楽勝だからな」
「金貨8枚くらいかな?」
「適正だな」
「金貨2枚で安全を買えるなら断然そっちだな」
そういうことに決まって僕らは解散する。というか、シャノンさんとエリスさんがそれぞれ勝手に離脱していったという感じだ。それぞれ別に祝杯をあげに行くとのことだけど、2人とも同じ店に入ってまたケンカしてそうな気もする。
アーリアの町に入ったところでロージアさんも買い物がしたいとのことで別れ、僕らはニーナちゃんを家まで送っていく。
「ついに始まったね」
ニーナちゃんと別れた後、メルがそう呟く。
「そうだね。でも先は長いよ。万が一が無いくらいにはパワーレベリングするつもりだし」
「それでも私が思っていたのよりずっと早いよ。ひーくんと出会う前は冒険者になれるかどうかも分からなかったんだから。だから、ありがとう、ね、ひーくん」
メルが小走りで少し前に行ったかと思うと振り返って笑う。
その笑顔を守りたいと、そう思った。
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