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第112話 ロージアさんと話をしよう

 ロージアさんが働くというオスカー衣料品店は一般市民向けの古着屋だった。穴が空いたりした衣服を安く買い取って修繕して売る仕事だ。そこでロージアさんは衣服の修繕を行う針子として働いているのだという。


「すみませーん! ロージアさんに会いに来たんですけど!」


 メルが元気よく声を掛ける。


「ロージアなら奥だよ。勝手に入りな」


 男性の店主かあるいは店員は、カウンターの奥の扉を指差した。うーん、セキュリティが緩い。良い言い方をすればおおらかということになるのだろう。


「お邪魔しまーす」


 先行するメルに付いていって店の奥へと入る。そこでは数人の針子さんが山と積まれた衣服を1枚ずつ修繕していた。


「ロージアさんいますか? 魔法ギルドから紹介されてきました」


「あ、はい。私がロージアです」


 針子さんの1人が手を止めて顔を上げる。見た感じおっとり系のお姉さんだ。黒髪を左右でお下げにしている。


「じゃあ皆さんが例の募集の方ですか?」


「そうです。7日に1度でドラゴン退治の」


「わあ、それじゃ私をパーティメンバーに入れてくださるということかしら? それともこれから面接? やだ。心の準備ができてないわ」


「緊張することないですよ。お仕事ちょっと抜けられますか? それともお仕事が終わった頃にまた来ましょうか?」


「ちょっと抜けられないか聞いてみますね?」


 ロージアさんは立ち上がって店の表に出て行ってすぐ戻ってきた。


「大丈夫だそうです。行きましょう」


 僕らは連れだってオスカー衣料品店を後にする。大通りに果実をその場で搾ってジュースにしてくれる屋台があったので人数分を頼んで席を借りた。


「まずは僕らのパーティメンバーの募集に応募してくださってありがとうございます」


「いえ、とても良い条件だと思ったので」


「すでにお知りだとは思いますが、条件の再確認をしますね。僕らの活動は7日に1度、アーリアのダンジョン20層に住み着いたドラゴンの撃破が目的です。最初のうちはパーティ資金でパワーレベリングを行います。とりあえずはレベル40を目標に、資金の様子を見ながら可能なところまでパワーレベリングします。それから魔法ギルドでは報酬の話をしていませんでしたね」


 今更気付く。それが募集が少なかった原因かも知れない。魔法ギルドの人も言ってくれればいいのに。まあ、考えたの今日だけど。


「パーティメンバーには月に金貨5枚をお支払いします。その代わりパワーレベリング中に得られた魔石はすべてパーティ資金用にいただきます。その後、自分たちで稼いだ魔石については半分をパーティ資金用に、残りを皆で等分します」


「それってパーティとしては赤字ですよね? どこからその資金が出ているのかお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「僕がしている商売の利益を充てます。この条件でならやっていけるだけの利益は出しています」


「なるほど。しかしそれだけの資金をお持ちであれば、直接20層のドラゴンを倒す依頼を出した方がよろしいのではないですか?」


 シャノンさんたちと同じ疑問だ。だが今回はメルが声を荒げるようなことはなかった。


「僕たちは自分の手で20層のドラゴンを倒すことを目的としています。そのためならお金は惜しくありません。ロージアさんこそ、報酬について書かれていない募集によく応募してくださいましたね」


「レベルを上げたいとは前々から思っていましたけれど、直接魔物と対峙するのは怖くて。攻撃魔法も最近覚えたところなんです。かと言って1人で魔物相手に試す気にもなれなくて。でも、あの、パーティに加えてくだされば一生懸命頑張りますのでっ!」


「どう、ニーナさん、ロージアさんとはうまくやっていけそう?」


 僕としては攻撃魔法使いはもう少し積極的な人のほうがいいのではないかと思うが、ニーナちゃんとの相性が一番大事だ。


「私は大丈夫です!」


「それならいいかな。ロージアさん、よろしくお願いします。早速なんですけど、明日は大丈夫ですか? それ以降も7日毎にアーリアのダンジョンに挑みたいと思います」


「明日はお休みをいただくようにします。こちらこそよろしくお願いします」


 こうして僕らは最後のパーティメンバーを確保したのだった。

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