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第110話 新年について聞こう

「結局、今日は訓練で終わっちゃったね」


「日本のお金にはまだ余裕があるから大丈夫だよ」


「ならいいけど」


 会話が途切れたところで僕はなんとなくスマホのスケジュールを開いて思い出す。


「そう言えばアーリアでは新年ってどういう感じで過ごすの?」


「新年? 随分先の話だね。まあ、大体は冬の蓄えの残りを使ってお祭りかな」


「冬の蓄えの残り?」


「そうだよ。冬が終わったら新年でしょ」


「あー、そこがもう違うのか。日本だと真冬に新年が来るんだ。アーリアの暦だと2ヶ月と少しくらい先かな?」


「へぇ、そうなんだ! 変なの!」


「まあ、確かに」


 なんで冬の真ん中に新年があるのか僕も知らない。春に1年を始めたほうがなにかと都合がいいはずだ。


「多分、暦ができる時になにかあったんだろうね。それじゃ日本が新年を祝う時はアーリアは普通の日なんだな」


「そういうことになるね」


「それじゃその時はメルも日本に来て、日本式の新年のお祝いをしてみない?」


「するする!」


「それじゃあ近づいてきたらまたスケジュールを組もう」


「わぁ、楽しみだなあ」


 その後メルと別れて僕は自分の部屋へ、装備品を置いて、日本にキャラクターデータコンバートした。こっそり靴を玄関に戻して、自室で勉強する。アーリアに行く用の靴を買ったほうがいいな、これ。


「そう言えば健康診断の結果が来てたわよ」


 夕食時に母さんからそう言われる。


「健康診断?」


「ほら、ダンジョンから戻ってきた時に斉藤さんに連れられて医大で検査を受けたんでしょ」


「ああ、あれかあ」


 すっかり忘れていた。あれからちょうど1ヶ月くらいだ。


「先に中身を見たけど、問題ないみたいで安心したわ」


 母さんはそう言って僕に封筒を手渡す。僕は中身を引っ張り出して広げてみた。学校の健康診断なんかでは検査しないような項目までびっしりと埋まっている。異常を示すような数値はどこにも見当たらない。健康体だ。


 僕は安心する。健康だったことについてでは無く、アーリアで過ごしたことが何らかの形で検査結果に表れるのではないかと心配していたからだ。いや、検査を受けたことすら忘れていたんだけど。


 例えば便を取られたけど、その内容物まで調べれば、それが地球の食物でないことが分かるかも知れない。調べたのかどうかは届いた検査結果からは分からない。もしかしたら調べていて、結果がダンジョン管理局には行っている、ということもあり得る。


 ダンジョン管理局が知りたかったのは当然ながら僕の健康状態などではないはずだ。時間を跳躍した――ということになっている――僕の状態を医学的に検査しておきたかったと言うことに違いない。だからきっとここに書かれている以上の検査が行われたはずなのだ。


 しらを切る心の準備はしておいた方がいい。

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