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第109話 2人を受け入れよう

 結局僕らは2人を受け入れることに決めた。ベクルトさんの薦めで、2人の模擬戦を見せてもらったことが大きい。性格はちょっとアレだけど、この2人は強い。それもパワータイプだ。僕らのパーティに欠けていた部分を埋めてくれる。


 僕らが実質7日に1度しかダンジョンに潜れないということも伝えた。2人とも今は日雇いの仕事をしながら、金があるときはここで訓練って感じの生活をしているそうで、僕の都合に合わせられるとのことだった。


「正直、7日に1度って覚えてるかどうか怪しいけどな!」


 シャノンさんがそう言って笑う。


「せめて前日には知らせてもらわないと」


「お2人はどこで生活をされてるんですか?」


 聞いてみると2人とも冒険者ギルドから程近い、同じ宿に部屋を借りているらしい。本当に仲が悪いんか? この2人は。


「じゃあダンジョンに潜る日の前日には宿の人に言伝を頼んでおくということで。集合場所はどうしましょう?」


「冒険者ギルドでいいだろ」


「朝の冒険者ギルドって混み合ってません? 西門にしましょう」


「それでもいいぞ」


 2人とも了承してくれたのでそういうことに決まる。一応これで5人、後は魔法ギルドで希望者が現れてくれれば6人が揃う。昨日の今日でメンバーを集め出したにしては順調だと言える。


 僕らはベクルトさんに紹介料と今日の訓練代ということで金貨2枚を払った。


「毎度」


 ベクルトさんは満足げだったので足りないと言うことは無いようだ。すみません。聖女ギルドと魔法ギルドには金貨10枚払ってるんです。でもこの2人を見てからそれぞれ金貨10枚と言われても絶対払う気にはなれない。あ、別の人探しますってなる。まあ、どうせパワーレベリングで2人にも金貨数百枚からの費用がかかってくるんだけどね。


 今まで敢えて避けてきたけど、2人の容姿について軽く触れておこう。でないとどっちがどっちか分からなくなりそうだ。


 シャノンさんは鳶色の髪の毛を短く刈り込んでいる。勝手な印象だけど、前線に立つ女兵士って感じだ。軍服を着せたら似合いそう。まあ革鎧姿も似合っていると言えば似合っている。背も高く、僕より上背がある。見上げる、というほどではないが、目を合わせようと思うとやや視線が上がる感じ。


 エリスさんは栗毛の髪の毛を肩よりかなり上の辺りで切りそろえている。ボブカットと言っていいのかな? でも切り方がいい加減なのかざんばらな感じになっている。まるで寝起きのようだが、これが平常運転のようだ。背の高さは僕と同じくらい。


 語ってみたが、髪の毛の長さくらいで、あんまり違いが無いな。髪の色もどちらも茶色系統だ。シャノンさんが赤みがかっていて、エリスさんが黒っぽいというくらい。


 正直、2人の実力なら日雇いの仕事をしなくともソロでダンジョン第5か6層辺りで狩りをしたほうが儲かると思うんだけど、どうにもその辺りの魔物では弱すぎて逆に勘が鈍る、ということであるらしい。それならまだ日雇いの仕事をしながらベクルトさんのところで修行したほうが強くなれる、と。


 例えば僕が第1層でスモールスライムを相手にしていたとしても得られるものは何も無い。彼女たちにしてみればそんな感じなんだろう。


 せっかく今日の受講料を払ったので、僕とメルも訓練を受けていく。僕は相変わらず的を相手に自分の体を思うように動かす訓練だ。メルはシャノンさんたちではなく、別の門下生と訓練を行っていた。確かにあの2人とメルでは戦い方が異なりすぎる。


「カズヤ、ここに来ていないときでも毎日素振りはしろ。やってないのが丸わかりだ」


「分かりますか?」


「当然だ。成長がまるで無いからな。剣を自分の体を動かすように扱えるまでは、教えられることもない」


「こう一足飛びに強くなれる戦い方とか」


「そんなのを教えたら努力しなくなるだろうが」


「あることはあるんですね」


「否定はしない。自分で考えろ。剣を振りながらな」


 それでもかなりマシにはなってきた。剣を横に振るのに慣れてきたからだ。薪を割るのとは違う。当てればいいのだ。求められていることはそれだ。力を抜いて、しかしあまりゆっくりにすると逆に剣先がブレる。ある程度の速さで、振り抜く。的をゴールでは無く、通過点と考える。線を引くように剣を振る。


 ベクルトさんは別の門下生のところに行ってしまった。僕は黙々と丸太に向かって木剣を打ち込み続けた。

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