第1章 春、麗らかに響く part5
日が傾き、時刻は午後4時。ほとんどの人が部活に勤しむ中、1人図書室に来ていた。運動自体は嫌いではないのだが医者から止められているのでどこにも所属できないでいた。まぁそれはそれで別にいいのだが。
「今日は何かいい本あるかな……」
1つ1つの出会い。これもまた最近の楽しみだったりする。
新しく入荷された本。随分と時間が経ち色あせた本。所々紙がボロボロになっている本…。1つとして同じような本がない。その様は人間のようにも思えてくる。
「んーと……」
本を探す時は決まったルートがある。まず新刊コーナーを無視し、古めの小説が並ぶところから見ていき、次に最近の小説、専門分野、哲学関係、最後に新刊と大体こんな感じだ。結局全部見ようと思った上にこんなルートになったのだが、今言わなくてもいいか。
気を取り直して小説コーナーへと向かう……向かおうとしたのだ。したのだけれど……あんな人を見たら足を止めてしまうのが普通な気がする。黒く艶のある短い髪、小さめの顔に物静かな表情。服装はシスターの着ているものに似たような服で全身黒1色だった。ただ、その姿が1枚の絵画のように妙にその空間に合っていた。
「…………」
ただ本を読んでいるだけの少女。それだけなのになぜだかとても惹かれた。気がつけば随分長い間彼女のことを見ていたと思う。当然それだけ見ていたら本人も気づかないわけがなく、落としていた視線をこちらに向けた。
「……………」
と思っていたらすぐに視線をまた本に戻していった。何か言いたかったんだろうかと少し考えたが結局何も思い浮かばなかった。
(あれでも……なんで見惚れてたんだろ…)
今までにない経験だっただけに僕自身も訳が分からなかった。その後帰り道を歩いている時に本を借り忘れたのを思い出した。出会うはずのない人に会い、少なかったけれど会話をした。それだけでも今日はいつもと違う新しい1日で今までの中でとても記憶に残った。
随分お久しぶりですね。こんにちは鉛筆です、なんやかんやで色々忙しくてなろうの方に投稿できていませんでした。遅くなり申し訳ありません。次から普通に投稿できるといいな。というわけでpart6です。