1章 春、麗らかに響く part2
遅くなりました。1章part2です。
朝に強い人がいるそうだが、僕は随分と真逆だ。目覚まし時計を準備すると、だいたいその30分後くらいに目を覚ます。あの事故以来、どうしても眠る時間が多くなり、たまに授業中に寝落ちてしまうことがあったりする。中々自分でも悪い癖だなと思いつつ、この日も朝食の準備をする。
現在、一人暮らしで、ガス代や電気代と言ったところは僕の祖父にまかなってもらっている状況である。もちろん、今の生活は、自ら望んでなった訳ではない。自由度が多い分、苦労も多い。記憶がある頃から、苦難続きだったが、その分生きる喜びも大きかったと思う。実際のところは本音8割建前2割といったところだけど。
小麦の焼けたいい匂いがする。だいたい決まって朝食はパンにしている。手軽で、時間が無い朝でもすぐ食べれるから重宝している。コップを水で満たして、パンを少し噛じる。しっとりとした生地の部分と、少し焦げた味がちょうどいい。
時刻は午前6時。空気はどことなくひんやりとしている。
「…片付けやらないとな」
1度家を出ると、学校が終わるまで帰って来れないため、やれることは今のうちにやっておかないと。
食器ががちゃがちゃと鳴る。ものを洗う時や扱う時はいつも丁寧とよく父に言われたものだ。
一通り洗い終わり、食器を拭いて乾かす。
「よし。朝の分はこれでよしと」
電気の切り忘れやコンロの確認をして、荷物を持ち、玄関へと向かう。
「じゃあ。行ってきます」
両親の写真と家にきちんと挨拶をして、僕は家を出た。