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『エ、エディオスは男よ。 ダルジィは同僚としか思ってないから、不可能だわ』

『そうですね、普通は無理、でもあの容姿で貴族・・・ とても不安です』


・・・

・・・

・・・


シャロンさんは目をつむって色々思案しているようです。

悩む必要はありません。 

さあ。荒ぶる狂熊のようにエディオスさんに襲いかかるのです。


『なぜ、あなたが不安になるのかしら?

それにワンチャンって言ってたわね』

 あら?

 シャロンさんはジロリと私を睨みました。

さっきまでのオドオドした雰囲気は無く、威圧を強く感じます。


 女騎士は異世界本では、頭の中を跳ね回り転がるような小さい脳サイズなのに良く気付きました。


 私の事を警戒、いえ恋敵と認識したようです。

いいのですか? エディオスさんの方が危険ですよ。


・・・

・・・

・・・


 でも、いいでしょう、受けて立ちます。

 普通の嗜好の殿方が相手なら私に万が一の勝機もありませんが、あの勇者さんがスレンダーで、真っ直ぐボディを好むのでしたらチャンスがあります。


 ママ曰く、『男は胃袋と股間を掴めば勝ちである!』

 ママから他の料理が食べれなくなるくらい、常習性のあるやや危険な食材は教えてもらっています。

特にマヨネーズはお店の常連さんを掴んで離さなかった、我が家秘伝の調味料です。


 さらに、浮気なんてする気が起こらないくらい搾り取る方法は知識としてはありますから勇者さんと経験を積むだけです。

 この手法でママがお店の従業員から正妻へクラスチェンジを果たしたので、効果は実証済みです。


 そしてもし、私以外の女性と結婚式を挙げようとするなら、神殿に殴り込んであることないこと喚きちらして、結婚式を崩壊させることぐらいやってのける自信があります。


 しかしシャロンさんは今は勇者さんの恋人ですが、うまくやれば便利な友人になってくれる有力な候補者ですので、私が電光石火の早業で勇者さんを寝取った後も、友好的な関係を維持しないといけません。


 理想は、ちょうどいい男を紹介するのが良いです。 

そうすれば、私は勇者様と温かい家庭を築き、シャロンさんは結婚相手を見つけてあげた私に感謝するので容易に友人となれます。


 「・・・なにも言わないのね。 わ、わかったわ。 あ、あなたやエディオスと私とでは格が違うって教えてあげる。」

 私が長考している間に、シャロンさんは少し離れて、私に背を向けながら何かボソボソとしゃべってます。 


格が違うと意味不明なことを言ったので気になります。


地獄耳アンド近距離千里眼発動

横からのぞいている位置にアングルに視界を移します。


「私は女優、私は女優・・・」

 女優ですか、あと異世界本に書いてあった、人と言う字を書いてに飲み込むという緊張を和らげるおまじないのような事をしています。

その後、大きく深呼吸・・・

気弱な女子が気合いを入れるテンプレの方法です。


「なにをしてるのですか?」

何をしてるのはとてもよく分かりますが、あえて近づいて聞いてみます。

すると、シャロンさんはなにも言わず、振り返ってニッコリ笑った後、すっと、クマヘルメットを取ると目が潰れるのではと感じる位の眩しい光が彼女から放たれました。


むぅ、何でしょう。 眩しいです。

実はザビエル禿げだったら、意表をついて笑えるのですが・・・。


・・・

・・・

・・・


「はっ!!」

気がついたら、両手両膝が地面についていました・・・


「どうかしら、魔王さん」

女神様? と思えるほど美しい女性がドヤ顔で私を見下ろしてました。

直視したら意識が飛びます。

気がついたら両手両膝を地につけてしまう位の美しさ、エディオスさんもかなりの美形だけど、これは次元が違う。

さらっさらのつやっつやで元素記号がAU(GOLD)ではないかと思うほどの金髪に完璧に整った顔のパーツが黄金比率で配置されています。

さらに白磁のような白い肌、美形だけが持つ淡いオーラが全身から湧き出て発光しています。

近ずくだけで邪悪な悪意が浄化されそうです。

 そして、この女のフェロモン・・・香りを嗅ぐだけで、寿命が10年は伸びるのではないかと思うほど甘くていい香り。


 彼女が持っているつぶらな瞳のクマヘルメットを見ると、今は禍々しい邪悪なオーラを放っていて暴君熊のようです。


 改めてよく鑑定してみると魅力に関してバットステータスを行う強力な呪いがかかっています。

彼女は被っていたときは普通のクマヘルメットでした。

彼女の超絶神聖美形オーラがマスキングのように働いて呪いを浄化していたみたいです。


まさに顔が呪詛清浄器。カオスクリーナーと言って良い位神々しい。


「私の美しさに声も出ないようね。 いいのよ、皆さん、いえ女神様ですら膝を着いたから。

でも、分かったでしょ。

あなた如きが私のこ、こ、婚約者に手を出そうなんて、無謀な考えは捨てなさい。」

 シャロンさんが何か色々吠えていますが、昨夜うまく行かなかった理由がわかりました。

彼女は美しすぎる、尊すぎる。

エロい感情もこの女の浄化能力の前では露と消えてしまう。

綺麗に浄化されるでしょう。

野蛮な盗賊いやゴブリンすら萎えるのではないかという異常な尊さ。


 人の域を余裕で突き抜けた神の如き美しさは非情にも、昨夜の失敗につながったと考察します。

そして確信しました。

断言できます。


勝てると。


 彼女には私のようなお手軽感はなく、すべてが美しく、誰よりも尊くて重い。

尊すぎて萎える女。

普通はあり得ないのですが、可哀想に美しすぎて、尊すぎて喪女決定です。

マジで笑えます。 

恐らく邪気を祓うつもりで私に本当の姿を見せたのでしょうが、勝利を確信しました。

勇者さんにちょっと元気になるお薬をお酒に混ぜて飲ました後、側にいるだけ子種をもらえるであろうお手軽な私と違い、あなたは無理。

そしてあの勇者さんは子供が出来たといえば、確実に責任を取ってくれるはず。


『勝利の方程式』が出来ました。


 私が「そうね」と言ってニッタリと笑うと、彼女は腰を少し下げて、ずいっと私の目の前まで顔を近づけてきました。


シャロンさんの素顔のどアップで意識が飛びそうですが、頑張って睨み返します。


「後、あなた間違ってる。

 本当の勇者はわたし。

 『武勇』と『愛』の神殿の大神官様から連絡がきたわ。

 天魔の異能を持っているあなたを神殿が魔王として討伐対象に再設定するそうよ。

 さっさと逃げた方がいいと思うわよ?」


はい?

・・・

・・・

・・・


 シャロンさんが勇者なのですか? では、なぜ勇者の証である神剣を勇者さん・・・いや、ダルジィさんが使っていたのでしょうか?

雑誌にもダルジィさんが勇者って載って居ましたけど。


謎です。


「そうですか。 ではこの場で討伐してみてください。」

 神殿が私を討伐対象に設定したから今までと何が変わるというのでしょうか?

既に何度も私を討伐しようと召喚勇者さんたちを送り込んでいます。

いまさら恐れることも、驚くこともありません。

チラリとダルジィさんの方を見ながら、やれるものならやって見ろと笑みを浮かべ挑発します・・・


 ダルジィさんの方を見ると驚いたことに、ダルジィさんとオカマさん、女性の魔法使いさん以外は私より酷い五体投地状態です。


 オカマさんは生まれたての子馬のようも足がガクガク震えていて、なんとか剣を杖代わりにして立っています(笑)

 膝を地に付けるというのは、この人の誇りが許さないという感じです。

最後の時は『一片の悔いなし』といって立ったまま死にそうです。


 女性魔法使いさんは大きな盾を背負った男の人に微笑みながら魔法をかけています。

 この二人には誰も割り込むこと出来ない、ラブラブのリヤ充感を感じます。

完成された恋人関係でしょうか。

彼女の魔法は真田鑑定によると、状態異常からの解除魔法のようです。

 

 しかし、魔法も使わず、一発麻痺ですか、顔面凶器と言って差し支えないですね。

そういえば、破魔の霊陣を使わずに、最初からクマヘルを取ればあっさり私に勝てたのですが、気付かなかったのでしょうか?


 一番問題なのはダルジィさんがポリポリと頭を掻きながらこちらに向かってスタスタと歩いてる事です。


なぜ腰が抜けないのかとても気になります。


「ダルジィさん、平気で歩いてきてます。なぜですか?」

「私のお、お、お、夫・・・なのだから、と、と、当然でしょ・・・(深呼吸)

だから、お願いだから彼に手を出さないで!」

 格がちがうといっていた割には顔を真っ赤にして、もの凄く必死な感じになりました。

特に深呼吸後の訴えには悲鳴のようなものを感じましたが、私にも譲れない物があります。

 既婚ならきついですが、初めて好きになった未婚の男性をそう簡単にはあきらめません。

ですので、これはスルーします。

 

 それよりも気になるのがダルジィさんが婚約者から夫にランクアップしていることです。

夫の後の言葉がゴニョゴニョしていてしっかり聞き取れませんでした。

口の動きから『夫』の後ろに『になる人』と言っていると思われます。


 つまり、都合に良い『私の夫』という部分を強調して、都合の悪い『になる人』は濁したと言うことです。


 これは詐欺師の手法です。


 パパが従業員の放火でお店を失った時の保険契約の手法に酷似しています。

 パパは知り合いが必死の形相で頼むので、お店の火災保険の保険商会を変えたのですが、別紙に細かく小さな文字で記載されていた『契約者とその家族等による故意の放火は除く』の一文のため保険金は一切出ませんでした。

正確にいうと『家族等』という一文には住み込みの従業員も当て嵌まるそうで、申請は却下されました。

とても納得できませんが、都市連合ではとても力のあるベケット商会系だったので、泣き寝入りとなりました。

 

 パパの失敗から得た教訓により、この手の詐欺師に対して徹底的に突っ込みを入れることに躊躇はありません。


「先程は婚約者と言っていましたようですが、もう夫ですか。

 神殿で結婚式も上げていないし、戸籍にも登録していない状態と思われますが?

 勇者の癖に嘘をつくのですか。『笑止千万♪ 笑止千万♪』

 ママが言ってました。

 自分の利益にならず、誰かの幸福の為につく嘘は善ですが、自分の利益の為につく嘘は悪です。

 勇者なのに悪人なのですね。

 『悪即斬♪ 悪即斬♪』」

「えっ、えっ、えっ!? あの、あのね、そ、そ、そうじゃないの、聞き取りにくか『嘘つき勇者♪ 嘘つき勇者♪ キエェェェェェェェェェェ♪ チェスドーーーーーーン♪』・・・」

 さすがはフクゾ、容赦なくシャロンさんの言い訳を封殺するようにかぶせました。

示現流ですね。 

一緒に異世界の書物や動画を見てましたから覚えたていたようです。


シャロンさんはまるで雷に打たれたよう硬直して、口をパクパクさせています。

 

「おい」

ダルジィさんがやってきて、シャロンさんが持っているクマヘルを、取り上げると、彼女の頭に被せました。

彼女は「はっ」としたあと、真っ赤な顔でダルジィさんを見つめています。


「もう立てるだろ? ほら、掴まれ」

 そして眉毛を八の字のようにして、とても困ったという顔で私に手をさしのべました。


「ありがとうございます。」

 よく考えると、彼女の『彼に手を出さないで』はこの広間内に響き渡りました。

 今の段階ではシャロンさんに同情が集まり、私は悪役になってしまいます。


「シャロン、俺は結婚の約束はちゃんと守るから心配すんな。」

「う、うん」

『夜伽失敗♪ 夜伽失敗♪』

 やっぱりこうなりました。

もし、わざと叫んだのなら、シャロンさんは少し侮れないです。

フクゾの突っ込み熟語攻撃でシャロンさんの笑みが一瞬引きつったのが見えたので、良しとしておきます。


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