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「わ、わたし達、そんなふしだらことやってません!」 

やってない?

しっかり覗いていたので、しらを切っても無駄なのです。


『実は途中まで覗いていました。 

 嘘は駄目です。 

 やっていない?

 つまり、それはうまくいかなかったのですか?』

「う、う、ううううううぅぅぅ、うるさーーーい!」

 シャロンさんが両手で頭を抱えながら発狂しました。

シャロンさんの大声に勇者さんも驚いたのか、彼女の近くに瞬間移動して光の早さでポーションを口に突っ込んでます。

あれは『トランキライザー』ですね。

たしか、精神が不安定な人を回復するために使うポーションです。

 

 まだうぶで若いカップルさんの様ですから、昨夜はうまくいかなかったようですね。

エロい事をいたし始める時にシャロンさんは結婚を迫ってました。

勇者さんも同意していたけどプレッシャー的な物とフラグ的なものが原因かもしれないです。


 本当は最後まで覗くつもりだったのだけど、覗き仲間でもあるフィリアさんが帝国の宮殿で小柄な少女が禿マッチョをベッドの上で圧倒してるという、青少年健全育成の観点からとても問題がありそうな覗きスポットがあると連絡を受けたので、そちらのほうに切り替えました。

大車輪にヘリコプター、棒高跳びとムーンサルトという魔法を駆使した荒聖技を連発され、みるみる萎れていく禿マッチョさんはまだ活きているのか心配です。


そんなことよりシャロンさんです。

すこし落ち着いたようですが、真っ赤な顔で俯いています。


そして、勇者さんは私をにらみながら彼女を守るように神剣をこちらに向けています。


この勇者さん、容姿は普通ですが、何故かすこし私の胸に『ズドキュン』とくるものがあります。

怖いです。でもなんか素敵です。

はぁぁ、私も守ってくれる素敵な人間の殿方が欲しいです。

お薬が効いてきたのかシャロンさんは落ち着いたみたいですので対話を継続します。


『そうですか、うまくいかなくて残念でしたね、完全にいたしそうな感じだったんですけど?』

「い、い、い、いたしてません! ダルジィ。 も、もう一度やるわ! 魔王を黙らして!」

 昨夜の続きを、ここでいたし直すのなら邪魔者の私は黙ってさっさと退散するのですが、どうやら破魔の霊陣の詠唱をやりなおすようです。


 とても残念です。


 しかし『逃走、あやよくば懐柔』というコンセプトは変わりませんし、痛くても苦しいのはいやなので、ここであきらめるという選択肢はありません。

私は呪文に対抗するように更に魅力的な提案を行います。


『昨夜の続きでしたらそこの扉の中が良いですよ。 疲労回復効果のある源泉掛け流しの温泉と柔らかいベッドに遊具に食料もあって、防音と覗き見防止の結界も完備。

魔改造された私の部屋は長期籠城を可能とする設備が整っていますので、誰にも邪魔されず愛を育む事が可能です』

「そ、そ、そ、そんな物必要ありません!『子宝成就、子宝成就♪』」

 シャロンさんはフクゾをキッっとにらんだ後、詠唱を始めますが、チラチラと楽園への扉の方を見ています。 


 この子かなりエッチですね。


 勇者さんはシャロンさんの事をかなり心配しているようですが、再びオラオラと私を斬りつけ始めます。 

私をぶっ殺した後、やっぱり二人は私の部屋で転げ落ちた大人の階段に再挑戦するのでしょうか? 


『そうですか、でもよろしいのですか? 

 せっかくこっそり隠れて髪を洗い。

 ムダ毛の処理を念入りに行い。

 体をきれいに拭き。

 下着も上下揃えたかわいい縞々の物にはき替え。

 催淫効果がある怪しい香水をもつけて。

 口もきれいにして。

 子宝に恵まれるお札まで用意して。

 魔王城の近くで 吊り橋効果を狙うという、万全の状態だったのに・・・

 駄目だったんでしょ♪』

「聖なる霊陣をもって、邪悪なるものを討ち・・・・・・・・・」

おや、詠唱が止まりました。

氷像のように固まっています。

いや、よく見ると真っ赤な顔で小刻みに震えています。


面白いです。 

笑いを押さえるのが大変です。

大変スッキリしました。


 勇者さんもうまくやってあげてほしいです。

週刊文鳥で美しすぎる召喚勇者さんと現地勇者さんの恋の行方という記事読みました。

この子はライバルが多いので必死に迫ってたのに失敗したから、本気で笑、いや、かわいそうだと思います。


 もしかしたら魔王との戦いで死んでしまうかも知れないので、心残りはなくそうと思ってたのかもしれません。

爆ぜろとは思いますが、健気に頑張ってたシャロンさんにはほんの少しだけ・・・、そうですね、極めて微量ですが、かわいそうと思うので応援したい気が無いわけじゃないかもしれない気がします。

 

 因みに現地勇者さんは目の前の神剣の勇者さんで、美しすぎる召喚勇者さんはご近所さんに撃退されて療養中のようです。

シャロンさんは現地勇者さんの争奪戦で強力なライバルに負けるかもしれないので必死だったのしょう。

昨夜、結婚の約束は取り付けた様ですので、完璧ではありませんが勝利したと言ってよいでしょう。

などと考えていたら、勇者さんはまた私とのシャロンさんの間に移動して彼女を守るように神剣をこちらに向けています。


羨ましいです。

妬ましいです。

はぁぁぁ、私も素敵な殿方と愛を育みたいです。


「聞いてください! どうして私は勇者様に襲われているのですか? 何か犯罪行為をしたというのなら、私の戸籍がある都市連合の刑法で罪状を言ってください!『令状みせろ、令状みせろ♪』」

攻撃が止んでいる間に説得を試みます。

まずは、私が言いたかった事をはっきり言って、再考を促してみます。

特に都市連合の戸籍部分を強調します。

都市連合には『正義』の神殿があり、そこに住むには神殿の許可が必要なのです。

かなり緩いらしいけど、私がご近所さんのような邪悪な存在なら許可が出るはずもありません。

話を聞いてくれる勇者さんであることを、強く願います。


「都市連合の戸籍? お前が? 魔王だろうおまえ?」

「あ、あなた魔王だから、それにいっぱい人を殺したじゃない!」

勇者さんは私に戸籍があることに驚いているようですね。

それと人殺しなんてやったこともない私を殺人鬼呼ばわりしたシャロンさんが泣きそうな顔で怒ってます。

怒っている顔もムカつくぐらい可愛いですが、十分いじめたので気分が良いです。 


では、シャロンさんの言い掛かりをはっきり否定します。


「異議ありです! 都市連合の刑法に”魔王だから犯罪”っていう規定はありません。 そもそも、私は魔王じゃありません。


人間です。

もう一度言います。 人間です

更に念を押して言います。 私は人間です。


周りが勝手にそう呼んでるだけです。 

見た目で判断しないでください。 

それに私に人を殺した記憶はありません。 

近所に住み着いた危ない連中が勝手に人を襲ってるだけですので、私には関係ありません。むしろ迷惑しています。

文句があるなら外にいる近所の危ない連中に言ってください。 『迷惑千万、迷惑千万♪』、『鬼面仏心、鬼面仏心♪』、『冤罪、冤罪、冤罪、冤罪!!』」

 ちょっと興奮気味になっているフクゾからの援護熟語の連発効果もあったようで、勇者さんは少し困惑しているようです。

それにしてもフクゾは難しい言葉知っていますね・・・


フィリアさんは勇者を信用するなって言っていましたが、私好みの男性なので、この勇者さんなら聞いてくれるかもしれないです。

まずは『私は悪くないです!』とはっきり宣言しておきます。


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