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現状確認

 さて……。

 ここら辺でひとつ、俺たちがどのように動いてきたのかについて語ろうと思う。


 まず、今回、獣人たちの状況を()()なものとするにあたって最も足りなかったもの……。

 それは、毎度おなじみ――人手であった。

 いや、毎度おなじみと言ってしまっては語弊(ごへい)があるか……。

 今回は、いつも以上に人手が足りない。


 何しろ、腕前さえあればオーケーというわけではないのだ。

 普通の人間や、ましてやエルフがうろついていては不審極まりない以上、潜入し活動できるのはバンホーたち七人のサムライ及び、獣人へ擬態したメタルアスルに限られる。

 いかに『マミヤ』の超技術があろうと、それを駆使する人員がいなきゃ話にならないわけで、俺たちはまず、その確保を考えることになった。


 幸いだったのは、バンホーにその当てがあったということだ。

 かつて、幼いウルカを育てながら潜伏していた時代……。

 バンホーたちは何も、ヒャクショー仕事にばかり精を出していたわけではなかった。

 各地へ潜伏する同志たちと時たま渡りをつけ、いつか獣人国を取り戻すための活動もしていたのである。


 まあ、その渡りをつけるのに使っていたシノビたちが裏切った結果、ウルカと俺は出会うことになり、同志たちの多くも死することになったわけだがな。


 とはいえ、同志の全てが死んだわけではないと、バンホーは信じ抜いていた。

 俺もそれに賭けることとし、カミヤに頼んでバンホーの心当たりを超高空から偵察してもらったのである。

 ほとんどは外れだったが、一か所、それらしき動きをする者たちがいた。


 ただちに動画を転送してもらい、バンホーに確認を取るとこれは間違いないとのこと。

 状況が状況なため、彼らが行動するまで間がないのは確実。

 せっかく手に入りそうな人手を犬死させる前に、バンホー率いる七人のサムライとメタルアスルは、並行して建造していた揚陸潜水艦――『フクリュウ』に乗り込み近場の浜へ密かに上陸……無事に接触を果たしたというわけだ。


 あれは、まさに危ないところだった。

 あとちょっとでも遅れていたら、有志諸君はシノビの手で全滅させられていたことだろう。


 いや、危ないところではあったが、僥倖(ぎょうこう)でもあったと言うべきかな……。

 何しろ、色々な情報を抱えたシノビが捕虜になった。

 なるほど、バンホーが言っていた通り、ちょっとやそっとの拷問じゃ口を割らなそうな男だったが……。

 そこら辺で捕まえたネズミにオーガ用特製ドリンクを飲ませ、究極生命体へ進化する姿を見せたら、知ってること全部こころよく話してくれたばかりか、仲間にもなってくれたよ。


 いやあ、あの時は大変だったな。

 まだ進化中だったからメタルアスルの上半身を吹き飛ばされるくらいで済んだけど、もっと進化が進んでいたら取り返しのつかない災禍を生み出していたにちがいない。

 カッコよかったな、バンホーの秘剣……。


 閑話休題。


 共に世界の危機を防ぐことで心から信頼できる仲間となったシノビ君は、元獣人国地方に存在する危険分子について様々な情報を持っていた。

 その中で、俺が着目したのはノウミの街に潜んでいる危険分子たちである。


 ――ノウミ。


 元獣人国地方における物流の要衝たるここは、ぜひ、第一撃で壊滅させたいと思っていた。

 思っていたが、それにはタスケたち勇士を加えても少しばかり数が心もとない。

 いや、『フクリュウ』に積み込んだ大量の兵器を使えば施設の破壊そのものは可能なのであるが、それじゃ下男(げなん)として連れて来られた獣人たちを巻き添えにしかねないし。


 そこに降ってきた、この情報……。

 俺は飛びついた。


 まずは一度、『フクリュウ』に戻って装備を調達。

 しかるのち、シノビ君監修の(もと)こんな状況でもがんばって商売する商人の一団に扮装、ノウミ入りを果たした。

 元獣人国地方で獲れた魚の干物や塩漬け、練り物が皇国本土で大人気だってのは、俺たちだけじゃなかなか気づけなかった情報である。彼に感謝だ。


 余談だが、こういった下準備やら移動やらの間、メタルアスルの操作は俺以外の人間に任せてある。

 何しろ、俺は仮にも指導者だ。やらなきゃならんことが山ほどある。


 というわけで、イヴ、エンテ、ルジャカ、クッキングモヒカン、ベルク、エルフの長フォルシャ、ソアンさん、辺境伯領一腕の立つ殺し屋など……。

 暇な者、興味があった者、専門知識を見込んで俺が頼んだ者など、様々な人間が疑似的に元獣人国の土を踏むことになったものだ。

 基本、メタルアスルは操縦者を獣人化した姿となるよう設定されているので、この七変化にはタスケたちが心底驚いていたな。


 さて、俺たちは正統ロンバルドから持ち込んだ干物やら練り物やらでカモフラージュしたせいで、やたら生臭くなった装備を抱えノウミに潜入したわけだが……。

 最初に行ったのは、この街で諜報活動の任に当たっているシノビたちの始末である。


 ここでも、大活躍したのがシノビ君だ。

 何しろ、構成員やら符丁やらおおよそ全部知ってるわけだからね。大根を切るよりも簡単な作業だった。


 また、幸いだったのは、シノビの一団が忠誠を誓っているのはワム・ノイテビルク・ファイン個人であって、ファイン皇国そのものではなかった点だ。

 すなわち、こやつらが情報を伝えるのはかの女総督のみであり、ノウミを預かるスタイン・ノイテビルクなどとは一切つながりがないのである。


 だから、彼らを始末することでスタインに警戒されるということがなかった。

 それでも、時間を置きすぎれば繋ぎを断ったことに不審を抱いたワムから通達が行っただろうが、そこは通信手段を持たぬ相手方の悲しさだ。

 俺たちにとっては、十分な時間的猶予があったのである。


 その時間を使い、俺たちはシノビが探っていたイッキを企ててると思わしき者たちへ接触。これを仲間に加えた。

 この時、モノを言ったのはバンホーの勇名……そしてウルカの存在である。

 メタルアスルを使い、疑似的な里帰りを果たしたウルカは、この地本来の姫君にふさわしい、堂々とした言葉と振る舞いでイッキ志願者たちを説得した。

 その様子は中継で見させてもらったが、さすがは我が嫁という一言であろう。


 まあ、ウルカも見事だったけど、いちいちオーバーリアクションで感動してくれるタスケたち有志諸君に釣られたというのもあるだろうが……。

 襲撃から救った夜にも、同じようにしてウルカから言葉もらってるのに、何度でも感動してくれるね。彼ら。


 で、イッキ志願者たちを仲間に加え一気に数を増した俺たちは、数日かけて装備の使い方を軽くレクチャー。

 ノウミの城を襲撃し、一夜にしてこれを占拠したというわけである。


 現状確認、終わり!

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