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8、村は危険がいっぱい

  怠惰なシロネコを抱き抱え、メイドのミミットの先導の下で女子を避けながら村の市場を抜けて冒険者ギルドを目指す。

 井戸水がたっぷりの水樽を運ぶ少女達が元気よく歌を歌いながら行進していた。


  その行列が通り過ぎるのを待ってから蔦のアーケードを抜けて大通りを横切り、夫人方の井戸端会議を大きく迂回して近道の人気(ひとけ)のない裏路地に入ると気配を感じて物陰に隠れる。




「どうしました?ブルー。」


「…いや、昨日のショタの匂いがした気が…。」


「…あの天使ちゃんですか?

 冒険者ギルドにはいませんでしたね。

 市場でしょうか?」


「マジか?

 じゃあこっちだな!急げマーベット!ブルー!

 昂ってきたぜ!」




  褐色女戦士が走って行き、それを追うように赤毛の戦士が追っていく。

 鼻の効く白肌青ボブ髪の戦士はこちらを振り返った気がしたけど、2人の後を追っていった。


  昨日森で【お姉さんキラー】がぶっ刺さった3人組お姉さん冒険者達だった。

 褐色女戦士は完全に男に飢えた目をしてたから捕まったらどうなることか。


  でも今なら彼女達は市場に行ったので冒険者ギルドは少し安全だ。

 そう油断して裏路地の物陰から出た瞬間。





「はぁ~い、ボウズチャン。

 また会ったわネ。

 今日はパンツを履いているの?残念だワ。」




  森であった毛深い男戦士、いやオカマ戦士。

 盛り上がる二の腕、割れる太もも、背負った分厚い両手剣。

 こいつの腕はぶっといから捕まったら抜け出せないぞ。

 



「ベル様お下がりを!

 この発情したゴリラからただならぬ不純な妖気を感じます!」


「…何よこの女。

 メイドの分際でしゃしゃり出てこないでヨ!

 まさか主人に発情してるのカシラ?

 なんてはしたない淫乱メイドなノ!?

 恥を知りなサイッ!」



  振るわれた大剣と、どこから現れたのかミミットの戦斧が交差して裏路地に明るく火花が散る。

 法では村中での抜刀行為及び戦闘行為、そして冒険者規約では冒険者同士の戦闘行為は禁止されているけれど自衛戦闘は認められている。


  このオカマ戦士は男日照りが続いているのだろう。

 色欲に顔を歪ませており、男性ホルモンが濃縮されたむさい臭いをプンプン撒き散らしながら剣を振り下ろす。

 その眼は血走り、眼光は赤く光を放ってる。

 ガチでヤバい人だ。


  オカマ男の振り下ろした大剣は、ミミットの軽快なステップで回避されて裏路地を抉る。

 しかし男はそのまま回転斬り【ランペイジ“斬”】に繋げてミミットに迫った。

 村中で、しかも狭い裏路地で範囲スキルぶっぱなんて何を考えているのか。

 通行人や器物を損壊したらどうするんだ。




「ウフフ!アンタなんか切り刻んでショタちゃんとハネムーンよォ~!

 何人子供できちゃうかしらンゥ~!」




  道の堅土を削り飛ばしながら移動する様は斬撃のサイクロン。

 僕を襲うために本気を出しすぎだろう。

 あと僕は男の子なので子供は産めない。

 相手を孕ませようなんてお姉さん属性じゃなくてただの強姦魔の疑いアリだ。

 ミミットさん、殺っておしまい!




「…うるさいゴリラですね。

 ベル様、ここは余波が飛んで危険です。

 野次馬も集まるかもしれませんから女性を避けて先にギルドへお向かいください。

 すぐに終わらせて駆けつけますので。」


「うん、気をつけてね!」




  バーサーカーの疑いもあるミミットがオカマ戦士に負ける事はないだろう。

 僕より強いし、もし勝てなくてもミミット1人なら逃げれるスキルもあったはず。

 僕がいてもミミットの邪魔になるだろうし、足早に立ち去ってミミットの武運を祈ろう。

 シロネコを抱き抱えたまま走って逃げ出した。





  それを見届けたメイド服のミミットは壁を蹴って三角飛びで宙を舞い、【ランペイジ】系統の弱点である頭上からの攻撃を行ってスキルを中断させる。

 しかし着地点を狙われて剣腹で吹き飛ばされてしまい壁に叩きつけられて砂煙が裏路地にたちこめた。




「……これだから男はベル様以外ゴミなのです。

 臭くて毛深くて利己的で野蛮な男ばかり。

 鳥肌が立ちます。」




  砂煙の中から姿を現したメイドのミミットは砂をはたいて落とすと戦斧をもう一本取り出した。

 木柄の戦斧2本は目の据わったミミットの両手のひらでクルクルと回転している。


 パッシブスキル【鉄壁】で大剣の一撃を完璧に無傷に抑えて、【不屈】が衝撃による気絶を無効化させた防御重視のミミットは並の攻撃では傷つかない。




「主人に発情するアバズレメイドだけあってしぶといわネ。

 でも可愛いショタちゃんに必要なのは淫乱メイドじゃなくて恋人であるアタシなのォ!」

 



  縦に叩きつけた大剣をかわして横薙ぎに払われた大剣を防がずにその身に受けるミミット。

 大剣は【鉄壁】化したミミットによって甲高い音をたてて欠け、欠けて飛んだ刃が裏路地の古びた配水管を破損させた。

 




「…頭がイカれているようですね。

 ミミットですらベル様のペットになれないのにどうして未開な貴方が恋人に?

 スキルに当てられたとは言え、思考も野蛮すぎて吐き気を催します。

 とりあえず死んでどうぞ。」



 

  突き出されたオカマ戦士の鉄籠手の拳を涼しい顔で受け止めて、戦斧が無防備なオカマ戦士の腹を裂いて鮮血を散らすと縦に一閃、オカマ戦士の鎖骨を砕く。

 オカマ戦士はミミットの振り下ろした戦斧の勢いで地面に叩きつけられると衝撃と出血によって気絶した。




「…でも野蛮なのはミミットも同じね。

 ベル様を襲って気を惹いているのだから。」




  素の表情に戻ったミミットは独り言を呟きながら気絶したオカマ戦士に赤ポーションをかけると戦斧の血を拭ってベルの後を追う。

 裏路地を出た頃にはいつものお澄ましメイドの顔に戻っていた。

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