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6、昨日くれたスキルの事なんだけど

『起きろシロネコ!

 枕にしてるのは僕のパンツだよ!』


『むにゃむにゃ…んぇ、ベル様…もうおねしょたは終わったんですかぁ?』



  脳内回線のモーニングコールで起きたシロネコは僕のパンツで顔を拭く。

 よだれまみれの僕のパンツは無造作に投げ捨てられて洗濯かごへ。




『もう朝だよ、おはようシロネコ。』


『ふぁぁ~…おはようございますぅ。

 昨晩はお楽しみでしたねぇ…。』


『…それこれから毎朝言うつもり?』


『ふぁぁ~。』




  あくびをするシロネコは直立するといそいそと乱れたシーツを直して横になると二度寝に入る。

 毛布にとシロネコが引っ張りあげたのは着てる時間より干される時間の方が長い僕のパジャマ。

 さっき汗っかきのミミットが汗を拭いていたやつだ。


  そのシロネコの毛布と化すパジャマを下着姿のミミットが剥ぎ取ると、くんかくんかした後に洗濯かごへ。

 今日もパジャマは役目を殆んど果たさなかった。

 そしてこれからは干される時間よりシロネコの毛布になる時間の方が長くなる事をパジャマはまだ知らない。




「…ベル様のお召し物で婬夢を貪ろうなんて、やらしい泥棒猫ですね。」


「…にゃぁ…。」




  サキュバスのようなミミットに言われたくはないシロネコは仕方なく起き上がるとブラシで毛並みを整え出したがそのブラシもミミットに没収されてしまった。

 ブラシを高いところへ置き白い薄シャツに袖を通すミミットには、シロネコが転生サービス職員天使など知らずにただの白猫にしか映っていないのだ。




『後で市場に行ったらシロネコ専用のブラシを買ってあげるよ。』


『…ホントですか!?

 じゃあ歯ブラシとスキンクリームと香水と、あとお洒落なお洋服に靴も欲しいです!

 それとイヤリングにチョーカーに…』


『…待ってシロネコ。

 歯ブラシまでは分かったけどその後のは必要なの?』


『あ~、ベル様は猫を飼ったことないんですね~?

 じゃあ飼い主初心者のベル様に特別に教えてあげます!

 ズバリ全部必要です!

 猫の身体は非常に繊細でただでさえ全裸で恥ずかし…』




  ブチっと脳内回線を切る。

 僕の前世の知識じゃ洋服を来た猫より全裸の猫の方が多かった記憶がある。

 ましてやイヤリングをした猫なんて動物虐待で起こられかねない案件だぞ。




『…酷いです~!

 勝手に回線切るなんて!』


『勝手に回線繋ぐのもどうかと思うよ。

 あとおねしょたを脳内回線で聞き耳立てるのも止めなさい。』




  勝手に脳内回線を繋いで脳内に話しかけてくるシロネコ。

 ぶーぶー文句をいっているけれど聞きたいのは猫の繊細さじゃなくてスキルの事だ。

 自信満々だけあってスキルもまま揃っているけれど気になる事がある。




『ところでシロネコ、昨日くれたスキルの事なんだけど、打撃スキルに偏ってない?』


『ふぇ?あーぁ、それはですね!

 他の武器種は人気なので打撃以外在庫がないんですよー。

 でもその代わり、【メテオインパクト】とかありますよ?

 これ最上位スキルな上に激レアですよっ!』


『…それ今貰ってもMP不足で使えないんだけど?』


『その為の【オーバーリミット】です!

これならベル様のへなちょこ筋肉でも1発は打てるはずです!

 …打ったら暫くダウンしちゃいますけど。』


『ほほぉ、なるほど。

 これがグリフィンもコテンパンにできるって息巻いてたやつね。

 ありがと!』


『えへへ…。

 照れちゃいそうですねぇ、お姉さんキラーが刺さっちゃいそうです~。』




  照れるシロネコを置いといて、【メテオインパクト】と【オーバーリミット】のスキルの詳細を確認していく。

 打撃属性の絶大なダメージを与える範囲技と、発動制限無しでスキルを打てる自己バフスキル。

 これらは切り札で必殺技なわけか。

 【メテオインパクト】よりも【オーバーリミット】の方がヤバそう気もするけど、きっと前者は威力がえげつないんだろう。

 ショタルートの僕は攻撃スキルの獲得が期待できないので正直ありがたい。

 ありがたいんだけど…。




『…で、近接スキルしかないんだけどどうやって空飛ぶグリフィンを倒すの?

 それに相手がお姉さん属性持ちで接近戦挑んだら昨日やその前みたいに相手はおねしょた状態で襲ってくるんだけど?』


『あ"…。

 え、えへへ…えへへへ…。』




  頭を掻いて照れながら安宿の薄いベッドの下にこそこそ潜り込むシロネコ。

 すっかりその事を忘れていたシロネコはプチっと脳内回線を切って身を隠すと僕の視線が来ないのを確認してこっそりベッドに登ってシーツの中へ潜っていった。

 全部見えてるぞシロネコ。





「ベル様、お待たせしました。」



  ミミットの声でステータス画面を消すといつも通りの美人なミミットが佇んでいた。


 朝陽で輝く透き通ったオニキスのような黒髪にヘッドドレス、シンプルな黒のハイウエストなエプロンドレス。

 えちちな黒下着が透けるタイトな白シャツは自慢の垂れっぱいがぱっつんぱっつん。

 黒のエプロンドレスのスカートから覗く真っ白な脚は黒い厚めのブーツ姿といつものミミットの仕事着(メイド服)だ。


  でもショタには刺激が強すぎるのでミミットにカーディガンを掛けてあげる。

 掛けたところで胸部を強調させてしまい逆にエロい可能性があるけれど。




「今日も綺麗だね。でも後ろ向いて。

 折角綺麗な黒髪なんだからミミットももう少し着飾ればいいのに…。」




  ミミットの背後に回って天使の輪がハイライトに光る黒髪を編んでいく。

 こめかみから三つ編みを後ろまで編んでお団子シニヨンに被せてバックカチューシャっぽくすればなんちゃって花嫁ヘアーの完成だ。

 かわいい。




「…ありがとうございます、ベル様。」


「ん。いつも言ってるけどミミットは綺麗なんだから着飾らないとダメだよ。」


「善処いたします。

 …ですがこうしてベル様にして戴けるのがこの卑しく貪欲なミミットの幸せの1つにございます。」


「はいはい。良かったね。」





  涼しい顔したミミットの黒髪をついつい撫でて、良くできた貪欲メイドの手を取り立ち上がる。

 昨日は疲労困憊で帰ってきたので食材がないから朝食は市場で取るのだ。

 ついでに買い物と冒険者ギルドで昨日のゴブリン大規模討伐戦の報酬とグリフィンの情報集め。

 やる事は多い。




「シロネコ、市場に行くけど狸寝入りしてていいの?」


「ベル様、泥棒猫は置いていきましょう。

 ペットがご入り用でしたらミミットが慎んでベル様のペットに成りたく思いますにゃあ。」


「…それ止めて。

 猫耳やバニースーツもいらないから隠れて買ったりしないように。」





  目を細めて微笑む妖艶メイドの出鼻を挫きながらケープコートを着せて貰って魔眼に眼帯をつける。


  実家の屋敷でミミットはバニーガール姿で夜這いに来た前科があるのだ。

 その時は僕の実姉に追い返されていたけれど。




  机の上の分厚い百科事典の入った大きなブックポーチをワンショルコルセットの後ろ腰に付けてもらって、魔道具の指輪とショルダーバッグを斜め掛けに背負えば準備は完了。


  飛び起きてシーツを引っかけながら駆けてくるシロネコを連れて頼れるミミットの手を取り安宿の部屋を出た。

 まずは腹ごしらえだ。

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