5、ご馳走さまでした
「…ル様……ベル様。」
「んん~…。」
落ち着いた小川の流れのように澄んだ小声で名前を呼ばれて目を覚ます。
ショタだけあって肉体疲労の回復力も高いようで昨日の戦いを感じさせない爽快な目覚めだ。
朝陽を浴びながら大きく伸びをして、朝一の安宿の部屋にこもった清く淫靡な香りを吸い込んだ。
「…わわっ!?ミミット!?」
「おはようございますベル様。
ご馳走さまでした。
本日もベル様はお元気なご様子でミミットも大変嬉しく思います。」
メイドのミミットの美しいトパーズのような黄色い双眸と目が合うと、ミミットは目を伏せ綺麗なピンクの唇を布で拭う。
それは僕のパジャマだ。
朝のご奉仕を心行くまで行い、僕のパジャマの匂いを堪能したミミットの額には汗の雫が朝日に輝いていた。
その雫も僕のパジャマの染みとなる。
「もぉ!いつも言ってるけど自分の身体くらい自分で拭けるよ!
その…毎回すっぽんぽんにして身体を拭くのは、使用人の範疇を超えてる思うんだけど…。」
「ベル様のお気持ちはお察しておりますので問題ありませんよ。
ミミットは常々ベル様に心服し敬愛しておりますから。
そしてあわよくば子を成し、正妻へと将来へのステップアップを考えた上での毎朝毎夜のご奉仕ですのでご心配には及びません。
それに汗疹が出来ては大変ですから。
ベル様、お手を失礼いたしますね。」
クールな涼しい顔を崩さずに将来設計を告げる情欲に染まったメイドは色白のショタボディー僕の身体を拭きあげると今度は洋服の着用を手伝ってくれた。
今日の僕は亜麻の白シャツに黒いハーフパンツ、それにズボンと同色のワンショルダーのコルセットアーマーを着けて編み込みブーツ。
同色のコルセットなのでズボンと一体化して見える。
ベストではなくワンショルダーコルセットなのは、防具代わりになるのとベルト代わりになるから。
鎧は奪われてしまったので服装備だし、未成熟なショタボディでベルトに色々ぶら下げるのは腰への負担が大きいのだ。
上着はケープコートが用意されているけど、まだ外出はしないのでハンガーにかかったまんま。
「ありがとミミット。
でもそれはスキルの【お姉さんキラー】の効果でしょ?」
「ミミットがお慕いしてるのはベル様がスキルを発現する前からですよ?
背を押したのはそのスキルですが恋慕を募らせていたのは熊から助けてもらった前からです。
…ベル様、少し頭を傾けますので力を抜いてください。」
お澄まし顔のミミットは僕の後ろに回ると僕の白金の髪をブラシで梳かしてハーフアップに結んでくれた。
「ありがとミミット。」
「はい、これでベル様の身だしなみは整いました。
…ではこれからミミットがお着替えいたしますので心行くまでご覧くださいませ。」
そう言ってシルクのネグリジェのワンピースをさらりと脱ぎだすミミット。
ボディラインに沿って流れ落ちるネグリジェから現れたミミットの肉厚で柔らかい垂れっぱいの白い肌には汗の珠。
「あわわっ…!
ま…まって!」
急いでステータス画面を開いてミミットを隠す。
薄着で透けて見えるのもヤバくて目が離せなかったけれど、ミミットの綺麗な白い肌がガン見えだともう沸騰しそうなほど顔真っ赤。
ショタはまだ純情なのだ。
毎朝の事だけど恥ずかしくて湯気が出そうなのを紛らわすついでにステータスチェックだ。
名前:ベルモッド・ラインクライフ
クラス:ショタ
称号:伝説のショタ
筋力★
体力★
魅力★★★★★★★★★…
……
…
この世界の生物は全員ステータスがありスキルもある。
このように皆自分のステータスを見ることができるけど他人のステータスは閲覧できない。
もしかしたら特殊なスキルや魔道具ならできるのかもしれないけど。
それにしてもクラスと称号が恥ずかしい。
でもこの恥ずかしい称号のお陰で僕は毎朝真顔となって賢者モードに入り昂る心臓を落ち着ける事ができる。
別の羞恥で耳が真っ赤になるけれど。
この伝説のショタとかいう称号はこの世界の黒歴史リストの殿堂入りが狙えるだろう。
そして何度見ても変わらない僕の基礎ステータスは魅力を除けば軒並み低い。
具体的な数値は確認できないけれど多分最低値だろう。
僕のステータスは全ステータスを魅力に極振りしてるような能力値だった。
さすが伝説のショタ、恐るべし。
所持スキル
ユニークスキル:【お姉さんキラー】
パッシブスキル:【魔眼“魅了”】【オールアンチエイジング】【経験値獲得量UP】【安眠】
アクティブスキル:【腰砕き】
【腰砕き】は異世界転生サービス職員天使から貰ったスキルで、それ以外は伝説のショタルートのスキルらしい。
【オールアンチエイジング】のお陰で常にプルプルの潤いお肌、【経験値UP】は年齢が低く脳の吸収率が高いからだろう。
そして【安眠】は寝る子は良く育つ、という見事に幼年期一色な構成。
今は全スキルの上昇を止めてるけど、停止を解除してこの先レベルをあげていってもクラスがショタなのでこのようなショタスキルしか発現していかないだろう。
今はとりあえず昨日のようにシロネコからスキルを貰ってそれでやりくりするしかない。
昨日シロネコが自信満々にくれたナス平原の王者グリフィンもコテンパンにできるとかいうスキルを吟味しよう。
…どれどれ…。
新規獲得スキル
【兜割り】【気絶付与】【メテオインパクト】【ランペイジ“打”】【オーバーリミット】
うん、全部打撃スキルだ。
とりあえずベッドでふんがふんが眠っているシロネコを起こそう。