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13、逆襲のゴブリン

  それは突然やって来た。



「止めてよミミット…

 もぉはむれないよぉ…Zzz」




  シルク越しのたわわな楽園に包まれつつ淫夢を貪るショタのベル。


  ベルをがっちり拘束(ホールド)するメイドのミミットは、スキルを交えながら20分間戦斧にガタが来るまで振り下ろし続けてロックタートルを追い返し、その後1時間薬草採集の為に戦斧スキルを使い続けて疲労困憊。

 今は安宿の部屋でぐっすり眠ってる。


  僕も薬草むしりや薬草集めでお疲れで、今日の深夜は静かにぐっすりモード。

 その隣のむっつりシロネコも僕の脱ぎ散らかしたパンツに頭を突っ込み大股開きで静かに寝息を立てていた。



  そんな静かな午前1時過ぎ。

 激しいノックで起こされた。

 ガンガンガン、鍵が外れそうな荒い叩きに響く声。





「起きろ!ゴブリンの襲撃だ!!

 冒険者は武器を持って東門へ向かえ!

 自警団は訓練通りに動け!

 非戦闘員は避難所へ走るんだ!

 ゴブリンはもう来ているぞ!!」




  衛兵達が安宿の部屋を叩いて叫び回っている。

 その声に目を覚ました僕とミミットは寝ぼけ(まなこ)で顔を見合わせ起き上がる。


  さら艶な黒髪が月明かりに照らされて白い丘を撫でるように流れ落ちていくのを真っ赤な顔で凝視したむっつりショタとむっつりシロネコ。


 微笑むミミットの視線に気づいて慌てて目をそらして立ち上がるも白い腕に押されてベッドに腰を下ろした。




「ベル様はお休みください。

 疲れているでしょう?」


「…ミミット1人で大丈夫?」


「はい。

 ゴブリンならばベル様も戦えますが、夜戦となると油断できません。

 それに村の兵力だけでも対応できるはずですし、ベル様は薬草採集でお疲れですのでゆっくりお休みください。」




  寝起きと疲労でほぼ死んでるミミットは、毎朝の見せつけ着替えとは異なり、てきぱきとメイド服へと着替えて鉄靴に脚甲を着けている。

 それを手伝って腹甲のベルトを締めた。



  顔が死んでるミミットは僕に疲れているから寝るよう優しく言ってはくれてるけれど、実際のところはそうじゃない。

 夜戦は見通しが悪くどこから何が飛んでくるかも分からないので護衛対象を護衛しにくい。

 僕は冒険者だけど戦力ではなく護衛対象なのだ残念な事に。


  【お姉さんキラー】持ちの僕がいる事でゴブリン以外にも味方に気を付けないといけないし、スキルが刺さればいらぬ騒ぎも引き起こす。

 戦力どころか完全なお荷物状態。

 そんな僕が、一緒に戦います!なんて言えるわけない。

 僕に言える言葉はこれだけだ。




「気を付けてね。

 いってらっしゃい。」


「はい。ゴブリンなので直ぐに終わらせて戻ってきますので全裸で待っていてくださいね。」


「それはやだ。」




  メイド服に黒い鎧を着用したミミットは白い顔で微笑むと、いつもの涼しい顔で出ていった。

 ミミットの疲労が心配だけどゴブリンに苦戦するミミットではない。

 スキル【鉄壁】と【不屈】持ちのミミットは疲労状態だとしてもゴブリンの如何なる攻撃でも傷つける事はできない。




「にゃ…?」




  ベッドに戻って薄い毛布に潜り込むとシロネコを抱き寄せて眠りに入ろう。

 ゴブリンの襲撃なんて朝起きたら終わっているだろう。

 ミミットがいないベッドなんて何年ぶりだろうか。

 広すぎてなんだか居心地が悪い。


  外からは避難を行う村人達と行き交う兵達の雑踏の音が響いてきた。

 その音を聞きながら【安眠】スキルが発動してゆっくり眠りにおちてった。

 




『ル様…ベル様…。』


「んん~。ミミット、僕もう…。」


『起きてくださいベル様~!』


「ふんぎゃっ!?」




  シロネコの猫パンチを顔面に浴びて目が覚めた。

 目を狙うとはなんて凶悪なシロネコだ。

 もふもふの刑に科してやる!




『ベ、ベル様~!今はそれどころじゃ…

 あっ…そこはダメですぅ!まだ誰にも…あぁ…。』


「…卑猥な反応はやめて。ただお腹を撫で回してただけじゃないか。」


『…ベル様はそうかもしれませんがあたしは裸なのですぅ。

 全身を弄ばれてしまいました…。

 もぅお嫁にいけません…。』




  ぐったりうなだれるシロネコは恍惚そうに目を細めている。

 全身は弛緩して大股開き。

 それをごしょごしょ触りたくると脳内回線で喘いでくる猫。

 ショタの成長に大変宜しくない。




「シロネコ、この前子供達に弄ばれなかった?」


『はいぃ…寝取られちゃいました…。

 …ベル様は汚れたあたしでもいいですかぁ…?』


「…もう立派に堕天してるじゃん。

 もっと撫でたら完全に堕天使になるかな?」




  すりすりもふもふ真っ白なシロネコのお腹を撫で回すと、シロネコは歓喜のうめき声を脳内回線に垂れ流す。

 僕はただ白猫の全身を撫で回して愛玩しているだけなんだけど。




『だ、だめですぅ…もう…あたしこれ以上は…

 外が大変なのに…堕天しまいますぅ…』


「ぬ?外…?」




  シロネコの脳内言葉に撫でるのを止めて耳を澄ます。

 ガキンカキンという剣撃の男。

 ゴブリン達の村への侵入を許したのかな?

 そう思い、窓を開けて2階の安部屋から村を見渡せば村から火があがって夜空をオレンジ色に染めていた。

 それも1ヵ所2ヵ所ではない。


  建物に遮られた所々で眩い閃光が破裂しているのは魔法だろう。

 その爆音は村の夜空に響き渡り、爆煙が良く使っていた遠くの裏路地を走っていく。


  眼下の宿場街の道は避難民が悲鳴をあげて教会への道を急ぎ、それを誘導する村の自警団のメンバーは鉄剣から農具の鎌や農耕用のフォーク(ピッチフォーク)など思い思いの装備で武装しており大声で叫んでいた。

 「そこまで来てるぞ!急げ!走れ!」




「シロネコ、どうなってるの?」


『分かりませんけど、結構ヤバそうですよねぇ。

 防衛ラインが突破されてそうです。

 でもベル様が外に出るのは危ないですよぉ。

 ショタの姿ですからこの前みたいにゴブリンに組み敷かれるか、自警団に捕まって混雑した避難所に押し込まれて【お姉さんキラー】でピンチになるだけですよ~。』


「…分かってるよ。」




  僕が出た所で大した事はできない、むしろ状況を悪化させかねない。

 でも一応着替えて靴を履き、メイスを腰に指して丸盾を背負っておく。

 生命線のお守りタリスマンと魔力消しの指輪も忘れない。

 防衛線を突破し村に侵入したのなら、僕のところまでゴブリンが来るかも知れないのだから。



  準備を整えた僕は窓から燃える家と避難する人達を2階から眺めてた。

 戦力にもならず、人とも接触できない僕はただただ見守るのみ。


 装備なんて革鎧は女冒険者にひん剥かれ、数少ない外行きの服は全部くっさい薬草汁まみれでミミットにポイポイされてしまって、今は眼帯にTシャツと短パン姿。

 戦う冒険者にはほど遠いただの短パン小僧スタイルだ。

 



「…ゴブリンの襲撃にしては被害が大きいね。

 この前のゴブリン大討伐戦で個体数を減らしたのに。」


『ん~…何ででしょうねぇ。

 あの森は深そうなので奥にもいたのかもしれませんねぇ。』




  窓枠にぴょんと飛び乗るシロネコは直立二足の仁王立ちでオレンジの火があがる村を眺めてる。


  転生する時このシロネコに聞いたことがある。

 神がいるなら祈れば助けてくれるのか?天使は人間の味方なのか?と。

 シロネコは基本無干渉だと言っていた。

 天神や天使が直接手を下すのは、敵の魔神やそのシモベの悪魔に対してだと。


  無干渉であるならシロネコはこの景色を眺めて何を思っているのだろうか。

 猫の顔ではその表情は分からない。

 


  そのシロネコに並んで窓から避難する人達を眺めていると突然矢が避難民を襲い、避難民は悲鳴をあげて走るペースをあげていく。

 自警団員は先導し、殿(しんがり)の自警団員2名は迫るゴブリン達へ向かって行った。

 そうして足の遅い者達はオレンジの火が照らすだけの闇の中で先導組と離れてしまい、最も足の遅い子供は家の脇に置かれた木樽の1つへ入って身を隠した。




「行ってくる。」


『ベル様、危ないですよぉ。

 ここは自警団に任せましょうよ。

 ゴブリンも迫ってますし、ベル様が行って負傷したら痛いですよぉ。

 それにあそこは良い隠れ場所かもしれません!』


『ゴブリンは樽を見逃さないよ。

 樽には食べ物を入れるのを知ってるからね。

 大丈夫、あの子を教会に連れてくだけだから。

 それに、もし仮に僕が死んでもプレミアム転生チケットがあるんでしょ?

 …次死んだら今度こそは伝説のシューターをお願いするね。』




  シロネコと脳内会話を交わして窓を全開にして2階から飛び降りて、雨よけの布屋根(オーニング)を転がって地面に着地する。


  僕は非力なショタだけど、助けに出ることに迷いはなかった。

 前世からやってた事だから。

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