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1、そのショタはゴブリンに襲われた! 

「ゲゲゲ…オマエガ…オエノヨメ…ネトッタ!」


「うるさい!ゴブリン!」


「ブヘッ…」




  メイスを叩きつけてゴブリンを黙らせると、クネクネ腰をくねらせながら走ってくるゴブリンの盾にメイスを打ち込み蹴り倒してぼこぼこ殴る。


  しかしここはゴブリンが住む森。

 すぐさま別のゴブリンがやってきた。

 既に息が荒くて危険大。


  すぐさまスキル【腰砕き】を発動させて体を回して遠心力でメイスを横薙ぎにゴブリンの腰骨を砕くと、思い切り頭蓋へメイスを振り下ろして地面に叩き伏せる。

 そして周囲を見回して一気に走った。




「ゲヘヘ…マテェ…!」


「ひぃ~!」




  僕の後ろを追う新たなゴブリン達。

 その数5くらい、更にその後ろから追い掛けてくるゴブリンその数5くらい。


  必死に足を動かして岩を飛び越え木の根っこをくぐって逃げるも横から現れたゴブリンに捕まってしまう僕ベルベッドは、左目の眼帯を外す暇も無く白金の髪を地面に殴打しながら押さえつけられた。

 



「ゲヘ…ゲヘヘ…ショタダァー…」


「ゲヘヘ…ショタァ!」


「ショーター!ショーター!ダイコーブツゥ!!」




  押さえつけてきたゴブリン達は各々武器を捨てると口を歪ませて臭い口臭を浴びせながら服を脱ぐ。

 ゴブリン達の濁った目には理性の欠片もなく、完全に色欲に溺れている。



  ショタショタ連呼する小鬼のゴブリンの言うとおり、僕はショタだった。

 冒険者となったショタの僕は、僕より少し小さいゴブリンに組み敷かれて眼帯を取られ革の鎧を剥ぎ取られかけてるところ。


  しかしこいつらはまだいい。

 問題は後ろから走ってくるゴブリン達だ。

 奴らは殺気ビンビンで剣や槍を片手に走ってくる。




「ゲッ!…オマエ…オレノヨメモ…ネトッタ…!」


「ゲヘッ!オマエ…ノセイデ…オエ…フラエタ!」


「ゲヘヘ!…ニンゲン…ノクセニ…ナマイキダ…!

 オレタチ…ゴブリンノ…カチクノクセニ!」



  殺気を放ち迫るゴブリン集団。

 ただ戦っていただけなのに何故寝取った事になっているのか。

 ゴブリン研究者でもない僕が外見だけでゴブリンの雄雌が分かるわけもないのに。

 どれも同じ緑の奇妙な小鬼にしか見えないし欲情するわけない。

 僕はただ向かって来たゴブリン達と必死に戦ってるだけなのに。

 しかし目の前のゴブリン達が発情してるのは間違いない。

 



「ゲヘヘ…シンセンナ…ショタァ…」


「ショーターッ!コチィ…ムイテェ!」

 

「うえぇ…くっさい…!ミミット!助けて!」




  助けを呼んだ瞬間、群がるゴブリンの首が飛び、胴が裂かれて真っ二つになって開けた視界から戦斧が覗く。

 その戦斧は血を撒き散らしながらゴブリン達を薙ぎ払う。

 そして骨の王冠が転がりゴブリンの角笛がけたましく鳴る中で戦斧は地面に突き刺さると、黒いメイド姿に鎧を纏ったお姉さんが手を差し出してくれた。




「ベル様、大丈夫ですか?

 あぁ…こんなに血を浴びて…。

 あとで一緒に湯浴びしましょうね。」


「ありがとミミット!

 助かったよ!

 …でもお風呂は1人で入れるから大丈夫!」


「いけません。

 火傷したらどうするのですか?

 お義父様、お義母様からベル様と寝食共にして守るようお仰せつかっていますからたっぷりとミミットが可愛…お流しいたします。」




  黒い鎧メイド着姿のミミットは、トパーズのように美しく輝く黄色い目で僕の魔眼を見つめつつも欲情する事なく眼帯をつけてくれた。

 そして僕の背に手を回すと起こしてくれる。




「ベル様、ズボンのベルトが外されていますよ。

 穢らわしいゴブリンどもですね。

 やはりベルトは錠前で鍵をした方が良いかもしれません。

 あぁ、ベルトを締める前に怪我をしていないか少々味見…ではなくチェックしませんと…。」


「…ミミット、さっきから心の声が聞こえている気がするんだけど?」


「冗談です。」




  ミミットは欲情する事なく僕の前で屈むと涼しそうな顔でゴブリンに脱がされかけたズボンを直してベルトを締めてくれた。

 ベルトをいじるミミットの両腕が、鎧の胸甲がない白いブラウスの双丘を圧迫し僕の視線を釘付けにしてる。




「…あ、あの…ミミット…?

 そこ触ったら…」


「ダメですよベル様。

 パンツのインナープロテクターがズレています。

 …大人しくしていてくださいね。」



 ちょこちょことパンツの中を触られポジショニングを直してくれた。

 きっと味見なんかじゃない。

 こんな戦場の最中でベルトをいじるお澄まし顔のミミットにはきっと他意はないはず。

 ミミットに僕のスキルは効いていない。

 

 


「はい、できましたよベル様。

 ご馳走さまでした。」


「ありがと。

 やっぱりミミットが隣に居てくれて助かるよ。」


「ふふふ、当然です。

 ミミットはベル様専属メイドですから。

 料理洗濯家事全般から戦闘にご奉」


「ゲヘヘ!…ニンゲン…カクゴシロ…!」




  目を細めて指を舐めながら微笑んでいたミミットの表情が溶けて無表情になっていく。

 緑の小鬼のゴブリン達だ。




「ニンゲン!ニンゲン!カチクニナレ!」


「ゲヘッ…ヨメシンダ…オマエデ…ナグサメル…!」


「うるさいですね…。

 ベル様、少々お待ち下さい。」




  地に刺さった戦斧を抜いて、綺麗な黒髪をなびかせ走るメイドのミミット。

 そのミミットの一振りはゴブリンの剣ごと体を裂いて、払った刃は脚を断つ。

 そして跳躍から叩きつけた一撃は地面を割って衝撃波がゴブリン達を薙ぎ払う。

 そのダウンしたゴブリン達の頭蓋や腹に戦斧を叩きつけてトドメを刺して歩く血濡れのミミット。


  黒い鎧のプレートからはゴブリンの返り血が滴り落ちて、戦斧を抜く度に噴き出す血潮がミミットを悪魔のように染めていく。

 普段は過保護で優しいメイドさんなんだけどオーバーキル気味で少々脳筋気質なのは、きっとメイドはサブジョブでバーサーカーが本職なんだろう。

 多分。


  そんな血の気の多いミミットを視界の隅に収めつつ、僕は目の前に転がる押し倒してきたゴブリンの亡骸を検分してる。

 さっき走ってきたゴブリンの中に骨で作った王冠のゴブリンの姿が見えていたのだ。

 きっと族長ゴブリンだ。




「…あった!族長の腕輪!!

 これで1つめだ!」




  族長ゴブリンがしていた腕輪を奪って腕にはめる。

 骨と蔓で編んだチープで野性味溢れる腕輪だけど僕の目当てはこれだった。

 これで少しは楽になれる。

 念願の腕輪を手に入れて天に腕をかざしてまじまじと観察する僕。


  その足元へ矢が飛び、冒険者達の喧騒と共にゴブリン達が駆けてきた。

 でも大丈夫。

 もう腕輪をはめたから。

 皆からはゴミアイテムと捨てられそうなアイテムだけど僕からすれば喉から手が出るほど欲しかった救世主アイテムだ。

 これで恨まれてばかりだった僕の人生がほんの少しの距離だけ平穏に戻る。




「こら!待ちなさいゴブリンども!!」


「ゲヘ!ゲヘ…!…ニゲロ…!」


「…ジョウオー…ヤラレタ…ニゲロ…!」


「…ジョウオウ…ネトラレタ…!」




  寝取られたなんて人聞きの悪い。

 逆に僕が襲われた側なんだけど。

 でも大丈夫、この腕輪があれば僕の世界は平和になるのだ。


  討ち取られた女王様には悪いけど、ゴブリン達も人間襲って殺したり家畜にしたり奴隷にするから自業自得。

 冒険者ギルドにゴブリン大規模討伐依頼が出るほどまでに悪さを働いたのがいけないのだ。 

 追撃に移った冒険者達の鉄槌を受けるが良い。




「おらッ!5匹めェ!!

 …あぁん?てめェ何サボってやがる。

 おめェも戦え!報酬泥棒は許さねェぞ!!」


「…ひぃっ。ごめんなさいっ!」




  モヒカンの血まみれ強面冒険者に恫喝されてメイス片手にゴブリンを追う。

 僕の腕輪奪取の任務はもう終わったのに…。



文字数が少し多かったので1話を2話分に分けました。

2000~4000字で今後は書いていこうと思います。

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