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1話「幼女とナポリタン」

 ……何故か俺は今、幼女と風呂に入っている。

 というのも俺が言い出したんだけど。

「……風呂、入るか?」

 なんて自分でも何言ってんだと思ったがどうやら俺は戸惑うと一息入れたくなる人間らしい。

 さっきのナポリタンも然りだ。


「シャンプーとボディソープはそこにあるから。 適当に使ってくれ」


 いくら幼女と言っても異性には変わりない。

 目のやり場に困りながら俺は幼女に指示をする。

 厳密にいうと俺は風呂場の天井を見ながら話している。


「身体洗うの手伝って」

「はい?」


 聞き間違いか? とんでもないことを頼まれたような気がする。


「髪と身体、ごしごしして」


 なんてこった、聞き間違いじゃなかった。


「……拒否権は?」

「……ない。 そっちから誘ってきたんだし」

「おい、その言い方は誤解を招くからやめてくれ」

「……責任とってよね」

「勘弁してくれよ……」


 しぶしぶ俺は幼女の髪をシャワーで濡らし、シャンプーを掌に乗せごしごしと幼女の髪を洗う。

 まったく俺は一体何をしてるのだろうか……


 *


 風呂から上がった俺たちはテーブルを挟んで正面に向き合うように椅子に座った。

 これまた一息つくためにお茶を一口すする。

 そして一息ついたところで俺は話し始めた。


「とりあえず順を追って説明してくれ」

「私と結婚してほしいの」

「おい、話聞いてるのか」


 まったく話にならない。

 うーむ、どうしたことか。

 まあ、ここはとりあえず、


「挨拶が遅れたな。 俺は千賀樹貴」

「……千代。 私の名前は松城千代まつしろちよ

「千代か。 いい名前だなよろしくな」


 俺はそう言ってちよに握手を求める。

 すると意外にもちよは素直に握手に応えてくれた。


「……よろしく」

「それで、何で結婚なんだ?」

「……それは秘密」

「……秘密ってそう言われるとこっちは何もできないんだが」

「人には言えないこともあるの」

「かなり重要なことなんだけどなあ……」

「樹貴がまだ両親に会社を辞めたことを言ってないのと同じこと」

「おい、なんでそれを知っている」

「それも秘密」


 ちよは少し意地悪な顏をしてにししと笑った。

 いつの間にか打ち解けたかのかなって思ったけどそれよりなんで俺の内情を知っているんだ?


「何だよそれ」

「秘密なのは秘密」


 そっちがその気なら俺にだって考えがある。


「ふーん、そんなこと言うなら結婚してやらないからな」

「いいよ別に」

「いいのかよ」

「そしたら警察に通報するだけだもん。 いきなり部屋に連れ込まれたって」


 ちよはさっきよりも増して意地悪な顏でそんなことを平気で言う。

 それにしてもずるい。 こんなの俺が不利になるに決まってるじゃないか。

 俺は23歳のニート。 向こうはただの可愛い幼女。

 血のつながりもなければ知り合いでもない。

 通報されれば怪しまれて言い訳さえもできないだろう。


「ナポリタン……もう作ってやんないぞ」


 と、まあ最後の悪あがきというか俺に勝ち目はないと分かったのだがとりあえず抵抗してみた。

 ほんと……もっと考えろよな俺。

 と思いきや千代を見ると顔をしかめながら俯いていた。

 ほほう、こいつさては……


「食べたくないなら仕方ないなあ。 あー残念だなあ」

「……樹貴ずるい」


 ずるいのはお前だろうが千代。


「……分かった。 通報はしない」


 千代は悔しそうに俯きながらそう言った。


「でも結婚はするから」

「いや、だからなんでだよ」

「それは秘密」

「意味分かんねえよ」


 俺がそう言うと千代は突然今にも泣きだしそうな顔をして俯いてしまった。


「とにかく……秘密なの」


 幼女にそんなことを言われると何も言えないじゃないか。

 ……何だか考えるのが面倒になってきた。


「はあ……結婚のことはとりあえず置いといて、千代お前家に帰らなくて平気なのか? そろそろ19時だけど」

「平気。 この世界に私の両親はいないから」

「はあ、何言ってんだよ」

「だからここに住まわせてよ、樹貴」

「そんなのダメに決まってんだろ」

「樹貴がそんなこと言うなら私にも考えがある」

「なんだよ」

「樹貴にお風呂に無理やり連れ込まれたって今からアパートの外で大声で叫ぶ」

「そんなことしたらナポリタン食わせないぞ」

「……樹貴のバカ」

「……はあ、少しの間だけだからな。 本当に少しの間だけだからな」


 こうして俺と幼女との同棲生活が始まった。


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