生命のはじまり、火の襲来 第1章ー2
麗たちが中に入ると、体育館では生徒らが騒いでいた。教師らは特に窘めることはせず、生徒の自由にさせている。
しかし、生徒らの騒ぎが、指摘されていないのに、突然止まった。皆、麗と少年に注目している。今まで聞こえるような大きさでしゃべっていたのが、ボソボソと二人について呟きあっている。
「だから言ったじゃない! こんな格好で来れば目立つに決まってるわ!」
「それがどうした? そんなことは、どうでも良いだろう。別に、死ぬわけじゃないし」
「それはそうだけど、貴方と違って、私はそういうことを気にするの! それに、今までツッコミそびれてたけど、何、その眼帯! 貴方、そんなに目立ちたいの!?」
「はあ……」
少年は、呆れたようなため息を吐き、指定されているAクラスの椅子に麗を降ろす。
「さて、要求通り降ろしてやったぞ。これで満足か、円麗さん」
「な、何で私の名前を」
麗が問いかけたところで、それを遮って少年が答える。
「君は、きちんと渡された資料を見た方が良い。クラスメイトの写真と名前は、知らされているのだから」
「資料?」
鞄を開けて、学校から配布されたカタログを見ると、そこにはクラスメイトのデータが載っている。もちろん、麗の名前と写真もそこにあった。
「じゃあ、僕はこれで」
少年は、リュックから杖を出して腰までの高さにすると、体育館の奥にある、舞台の方へ歩いていく。
「何で、そっちへ行くの?」
麗の問いかけは、少年には届いておらず、あわてて自分のクラスメイト表を見る。
「確か、入学式の挨拶は、うちのクラスの人がやることになっていたはず」
パラパラと、写真と少年の顔を照らしあわせていくと、見つかった。右目を黒い眼帯で覆った、少年の姿が。その名前は、
「それでは、入学式を始めます。新入生代表、神皆葉君」
「はい」
少年――神皆葉は、教頭の呼びかけに応えて、壇上に立った。