夜の蝶
夜の暗さ。煌びやかな光に誘われて、見間違う。
蝶、昆虫鋼、鱗翅目チョウ類。
鮮やかに彩られた羽を纏い、杯の蜜を吸い上げる。粘つく甘い鱗粉を振り撒いて、掴み取ろうとすれば、ひらひらとすり抜ける。
濁りの中に映る輪郭は次第に線が失われ、不正常な思考に浸される。享楽は喘ぎにも似て、時は過ぎて、沈んでいく。
草むらの中で目は覚めた。青空にしょぼくれる。よれた衣服を直すと、身体は節々が鳴り、空っぽなところに響いた。濃い緑が匂う。流れてきた白い羽が、野花に留まる。無意識に、両手はそれを包み込んだ。そうっと潰さぬように、顔の位置まで持ち上げて、ゆっくりと開く。
白い蝶。それは一瞬の静止の後、ひらひらと飛び去った。花から花へ、移りゆくのだろう。
夜に蝶はいない。灯りにたかる。あるは蛾のみ。
陽光の心地良さに暫し耽り、やがて、飽きて途に就いた。
日のあるうちに帰る。暗くなると見間違うもの。妖しくも艶やかな羽。夜に蝶はいないのだけれど。