漫才脚本「医者」
A……ボケ担当。B……ツッコミ担当。
コンビ名は考えていないので☓☓としました。
A・B、ステージに上がる。
A「どうも~☓☓です!」
B「よろしくお願いしま~す!」
A・B、観客に向かって軽く頭を下げる。
A「いやあ、B君。俺最近、医者に憧れてるのね」
B「確かに医者はいいよね。俺でもいいなって思うもん」
A「ははは、B君如きには務まりませんよ」
B「如きってなんだ、如きって。じゃあ、お前には務まるっていうんだな」
A「当然。今から俺が医者をやるので、B君は患者役をお願いします」
B「ああわかった。やってやるよ」
A・B、それぞれの立ち位置につく。
A「次の方、どうぞー」
B「お願いします……」
B、腹を押さえながら診察室に入る動作をする。
A「今日はどうしました? 誰かにナイフで刺されたんですか?」
B「違うわ! そんなやばい状況だったら、のんきに待合室で順番待ちなんてしねえだろ!」
A「では、どうなされたんですか?」
B「ちょっと、お腹の調子が悪くて。あと、熱もあるみたいなんです」
A「ははあ、なるほど。じゃあ、ちゃちゃっと手術しちゃいましょう」
B「診断早過ぎじゃねえか! ここに来てまだ一分にもなりませんけど!」
A「手術は、お嫌いなんですか?」
B「お腹切られるのは嫌ですし、できることならしたくないですね」
A「ははあ、なるほど。なら、用はないので帰って下さい」
B「てめえ、ただ手術したいだけじゃねえか! 仮にも医者ならきちんと患者診ろよ!」
A「じゃあ、のどを診るので口を開けて下さい」
B「わかりました」
B、口を大きく開ける。
A、Bの口の中をのぞき込む。
A「うーん。あのー、きちんと歯は磨かれてます?」
B「ええ、まあ」
A「うーん。にんにく、食べました?」
B「食べてませんけど」
A「うーん。では、ギョーザなどは」
B「口が臭いって言いたいんだろ? そうなんだろ?」
A「い、いや。そそそ、そんなことは」
A、鼻を指でつまむ。
B「態度と言動にいちいち出すな! 人の心を傷つけてないで、さっさと診察の続きを頼みますよ!」
A「では、次は胸の音を聞くので、服をめくって下さい」
B「わかりました」
B、服をめくり上げる動作をする。
A、聴診器を持ちBの胸に当てる動作をする。
A「う~ん」
B「……どんな感じですか?」
A「……はい。実に規則正しく、やかましい鼓動が響いてきます」
B「患者の心臓にやかましいとは何事だ!」
A「いやあ私、何かと静かな方が好みなんでね」
B「聴診器から何も聞こえなかったら、既にご臨終だからな!」
A「おやおや。脈がずいぶん荒々しいですね。興奮すると、血圧が上がって健康によろしくないですよ?」
B「お前が俺を怒らせて興奮させてんだよ! んなことより、早く結果を教えて下さいよ」
A、Bの胸の音を聞く動作をやめる。
A「では。診断結果を言いましょう。あなたは残念ながら、ただの風邪です」
B「残念ながらって何だよ! あんたは俺に、どんな病を患っていてほしかったんだ? え?」
A「まあ。どうせ殺したって死ななそうな人ですけど、念には念を入れて注射でもしておきましょう」
B「てめえ、患者として病院に行くはめになりたいのか?」
A、Bの視線を気にせず注射を取り出す動作をする。
B、渋々ながら腕まくりをする。
A「では、行きますよ。ちょっとチクッとしますけど、私の知ったことじゃありません」
B「(怒り気味に)でしょうね」
A「はい、刺しまーす。グサーッ!」
B「痛ーっ! どこがチクッなんですか! 滅茶苦茶痛いんですけど!」
A「ははは、大丈夫ですよ。打つ薬と刺すところを間違っただけですから」
B「充分大問題だろうが! この藪医者が!」
A「もし気分が悪くなるようなことがあったら、すぐに連絡を下さいね。早急に霊柩車の手配を致しますので」
B「早々に見捨てるな! ていうかお前、俺に何を注射したんだよ! 不安で仕方ないんだけど」
A「ありがとうございましたー。またお越し下さいませー」
B「ここは普通、お大事にだろうが! 患者は、病院に戻ってきちゃ駄目なもんなんだよ!」
A「お次にご来院の際には、サービスとして注射をもう一本お付け致します。お楽しみに!」
B「注射をサービスに使うな! もうお前、全然駄目じゃん。こんな医者のところなんて、誰も行きたがらねえわ」
A「でも人々はきっと、この医者の元に行くまいと健康管理を徹底するようになる。そう思いませんか?」
B「屁理屈かましてんじゃねえよ! もういいよ」
A・B「どうも、ありがとうございました~!」