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危険なペット

アオイさんが言ったことがある。




【自動翻訳】は便利に思えるけど、各々の発言を自動で【適切】と思われる言葉に翻訳するため実のところ食い違いが発生することがある、と。




それぞれの世界にないものは自動翻訳されないようだ。




しかし、ティルディグの人間の名前は理解できるのに、日本人の名前がティルディグできちんと通用しないのは不思議である。


自分もファンと発音しているつもりで、ジュンをドュニューと呼ぶような不思議変換をしているのかもしれないが・・・。




ティルディグで自分の言葉が通じるだけでなく日本に来たファンやゼットさんの言葉が他の人に通じたことで、アオイさんは【世界の壁】を超える時になんらかの力が働いて自動翻訳能力が備わるのではないかと推測した。


ただし、サンプルが少ないので必ずしも備わるかは断言できないと付け加えるのは忘れなかった。




私は『ファンタジー世界だから不思議はつきもの』程度で納得して深く考えたことはなかったけど、"そういうもの"じゃダメなのかなぁ・・・。







「その(シャー)は危険な魔物だが、リサの"使役獣(ペット)"なのだろう。」


真面目な顔をして断言したファンの言葉はそう聞こえた。


私と美嘉(みか)さんは顔を見合わせる。


愛玩動物(ペット)って、どういう意味?そのままだよね?」


美嘉(みか)さんは猫じゃらしを下に向かって揺らしながらファンに質問した。


その猫じゃらしにタビーの視線が向いている。


兄はまだファンの"(ライト)"に釘づけだ。


触ろうとしてもつきぬけてしまう光球は光っているだけで温度も質量もない。


魔力をこめて触ろうとすると、ようやくしゃぼん玉に触れるような感じで少しはじくことができるのだ。


「"使役獣(ペット)"というのは・・・使役者の言うことを聞いて役に立ったり戦ったりする魔物のことだ。かつてアオイさまが飛竜種(ワイバーン)を使役していたように、リサもその(シャー)を"使役獣(ペット)"としたのだろう。」


アオイさん?と一瞬首をかしげた美嘉(みか)さんだけど、すぐに「ワイバーンて。たぶん愛玩動物(ペット)の意味が違うよね。」と私に話しかけてきた。


「そういえばアオイさんが自動翻訳には穴があるって言ってた。・・・でもタビーを戦わせるって無理がありすぎでしょ。動物虐待だよ。」


美嘉(みか)さんの足元で猫じゃらしに気をとられているタビーをさっと抱き上げる。


「・・・そいつは、体の大きさを自由に変えられる。普段小さいのは魔物にしてはまだ若い個体なのか、魔力を調節して小さいままにしているのだろう。体の大きさがあっても敏捷だし年を経ると魔法も覚えるらしいから魔物としてはA級の危険度がある。」


猫にしか見えないタビーが危険と言われても実感がわかない。


しかもA級と言われて比較対象(他の魔物)を知らない私にはどれほど危険なのかよくわからなかった。


「体の大きさを変えられるっ?!」


美嘉(みか)さんが食いついたのはそこだった。


「どれくらいの大きさまで?どうやって?」


矢継ぎ早にファンに質問するものの、ファンは冷静に「体の大きさを変えるのは・・・その"(シャー)"次第か・・・あるいはリサが命令すれば。」としか答えられない。


亜莉紗(ありさ)ちゃん!今すぐ大きくなるようにタビーにお願いしてっ!これは"危険"だわ!」


少し興奮気味な義姉に若干引いたのは仕方がないと思う。


こんなに興奮した義姉をいまだかつて見たことがない。


「へ?」


「へ?じゃなくてタビーに大きくなるようにお願いしてっ!」


大きくって・・・。


困ってファンの方を見ると、ファンは「・・・リサが命令すればいい。」と言った。







確かにこれは"危険"だった・・・!




「「 も ふ も ふ 天 国 ~ !!」」




タビーは本当に大きくなった。


最初は知らん顔をしていたタビーはさりげなく目線をそらしていたように思う。


3度ほどお願いした所で、ファンが「もしかしたらリサの魔力を少し喰わせるといいかもしれない。と言い出し"(ライト)"を出した所、パクリとそれを食べたタビーは仕方がないとばかりに床の上で小型犬くらいの大きさになった。


その時「前に夢かと思った"大きい獣"ってタビーだったのかも・・・」と思い出し、さらに『お願い』と"|光"を食べさせるのを繰り返した所・・・タビーは大人二人が背中に乗れるようなサイズまで大きくなってくれた。


それ以上大きくなったら部屋が窮屈なのでそこでストップし「タッ、タビー・・・横になって動かないでね?」と上ずった声の美嘉(みか)さんの意図を理解した時に、私もこの"危険"を理解したのだ。




こっ、これは天国・・・。危険な天国だ~。




横になるタビーの柔らかなお腹に埋もれる二人・・・!


寒い季節になったらタビーと寝よう!と心に決めた私をよそに、ファンは「やっとその(シャー)が魔物だと理解してくれたか?」と上から見下ろして言ったのでした。




兄も「そこに入っていいかっ?」と手をわきわきさせて興奮気味に言ったものの、タビーの「ニャー。」と言う拒否?の声と同時に元のサイズに戻るタビー。


体が大きくなっても声の低さや太さは変わらないのは不思議仕様なのか・・・。




その日、私と美嘉(みか)さんだけがタビーの"危険"をすっかり堪能することができたのでした。

ファンは普通に『使役獣』と言っています。

"ペット"は自動翻訳の穴にひっかかってます。


"シャー"は猫系魔物の属する種族名のようなもので、他の魔物も種族名があります

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