表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/85

お土産の"木札"

ファンとの生活で週末も近くなってきたその日。


「あーちゃん!!」


バターンという音と共に飛び込んで来たのは・・・兄だった。


今日は合鍵で登場のもよう。


「リサ、下がってろ!」


今までついていた食卓の前にファンが立ち塞がります。


「あーちゃん、その男は誰だ!」


兄がファンを見て叫ぶと、ファンも「そちらこそ何者だ。」と少し抑え目の声で聞き返します。


「お兄ちゃん、この人は私の恋人のファンよ!ファン、この人は私の兄だから!」


ファンがこれ以上前に出ないようにと出した手につかまって『兄である』と連呼しました。


「・・・先週のゼットという男はどうした。」


ぜいぜいと肩で息をしながらも、若干冷たい目で私を睨む兄。


「・・・ゼットさんはおばあさまと旅行中よ。それよりお兄ちゃん、どうしてここに?」


「どうしてでもいいだろ!それにサラッと彼は旅行で別の男が恋人ってどういうことだ。」


ファンはムッとして「リサの恋人は俺だけだ。」と兄を見下ろしています。


「ははーん。例の"よっちゃん"とやらから連絡が行ったのね?ファンがここに来て昨日の今日なのにどうしてここに?」


「ナチュラルにスルーするな!」


兄が何か言っています。


ふと思ったんだけど、よっちゃんとやらは実はストーカーか何かでうちを監視しているのでは?


兄は私の心中を察したのか、さも嫌そうに口を開いた。


「うちの裏の牧野さんがよっちゃんちだ。よっちゃんいわく二階の部屋からうちの狭い庭で朝な夕なに素振りやシャドーボクシングをしている金髪の男がよーく見えるそうだ。」


あ・・・ナルホド。


玄関のある通りがうちに対して裏面だから、そちらの通りのお宅については名前を言われてやっと思い出せるような存在感しかない。


言われてみれば庭を見下ろす位置に窓があったな。ついでにレースのカーテンをしていなければ家の中が見える位置かもしれない。


ましてやファンは冷房が嫌いだから窓全開だし。


「で、また金髪の男がいると・・・。」


ファンを下から上までじっくり観察すると「格闘家か?」と私に視線をむけます。


「まぁ似たカンジね。」


依然と私をかばうファンの腕の後ろでやりとりをすると「本当に兄で間違いないんだな?」と確認します。


こくりと頷くとファンは腕を下ろし「兄者を前に失礼した。私はファンリエッテ=マエジャーマと申します。以後お見知りおきを。」とにこりともせず、しかし優雅に挨拶した。


「ファン。こちらは私の兄の"川原 潤"よ。ちょっといきすぎた心配症なの。」


「あーちゃん!」


兄を無視してファンには席に座ってもらう。


「で、なんの用って、ファンのことね。」


わざわざ2時間も離れた町から来る理由はそれくらいしかないだろう。


「そんなことで来て美嘉さん(←兄嫁)も呆れてるんじゃないの?」


兄はムッとしたまま「美嘉はおろおろ心配するくらいなら行って来いと言った。」と勝手に食卓につきます。


美嘉さんこんな兄でゴメン。


「二時間もかけてくるくらいなら電話すればいいじゃないの。」


冷蔵庫から麦茶を出してドンと兄の前に置く。


「で、ごはんは?」


「車で食べた。」


兄は麦茶を口にすると「前の男とは別れたのか?」とこちらの様子をうかがっている。


「ゼットさんは彼じゃないわ。事情があってうちにいただけよ。」


ファンのほうをチラと見て「お前は彼氏じゃない男と抱き合うのか。」と吐き捨てるように言った。


ファンがグラスをカタンと音をたてて置いた。


「・・・どういうことかな?」


目が笑っていない。


「あれは・・・まっ、」


兄に魔力を感じる練習中と言っていいものか。


ファンの耳に手を当ててボショボショと小声で「兄が来た時に魔力を感じる練習をしてた。」と伝える。


「・・・いや、俺の過失だ。それにアイツも悪い。」


ファンの声が少し震えている。


「ごめん。」


ファンと二人小声でやりとりしていると兄が「そこ、二人の世界に入らない!」とつっこんでくる。




私はため息をつくと「・・・お兄ちゃんに大事な話があるの。」と兄を見つめた。


兄はぶるぶると震えだして「あーちゃんはまだ嫁にはやらんぞ!」と、まさにシャウトする。


「ファン、ごめん。うちの兄は重度のシスコンで口癖みたいなものだから気にしないで。」


「"しすこん"?」


・・・ファンの知らない言葉だったらしい。


「えーとね、姉妹が大事すぎてちょっと行き過ぎになっちゃった人のことよ。」


残念な兄をチラリと見る。


「ちょっと待ってて。」


私はバッグの所まで行ってスマホとギルドカード(仮)を持ってきた。


木の角に穴が開いていたのでストラップをつけてある。


「なんだその通行手形みたいな木札は。」


兄がギルドカード(仮)に手を伸ばす。


「どこの土産モンだ。」


これと今の話に何の共通点が?と疑問をアリアリと浮かべている。


「これ、私のギルドカードなの。」


「何?ネットでオンラインゲームでもしてるのか?」


兄らしい発想に私は首をフルフルと振った。


「ファンの見せてあげて。」


ファンは少し逡巡して"収納"からカードを取り出した。


「手品か?」


兄は空中からカードを取り出したファンの手に注目する。


銀色の不思議な光沢のカードだ。


自分の指輪を見比べてやはり同じような金属だと確信する。


「仮がとれたら鉄製に、Bランクから魔法銀(ミスリル)カードになる。」




「・・・あーちゃん。」


兄が沈痛な面持ちでこちらを見ている。


「その男は現在進行中で厨二病・・・」


私は皆まで言わせず「ファン、"(ライト)"お願い!」と遮る。


ファンは即座に"(ライト)"を発動した。


兄は事態を飲み込めずポカンと"(ライト)"の光を見つめている。




ここで私は超特大の爆弾を落とした。




「お兄ちゃん。私、ファンのプロポーズを受けたの。」


正確にはプロポーズの前フリみたいなものだけどね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ