果てしなく落ち込むところでした
ファンは18歳という驚愕の事実!
向こうの人はちょっと老けてるの?それとも自分が判別がつかなかっただけ?
若いせいか・・・道理で盛んというか・・・ゴニョゴニョ。・・・でも自分も人のこと言えないし。
私26歳、ファン18歳・・・と言ってももうじき19だとか。
年の差、約8歳です、ハイ。
良かった・・・淫行にならなくて。って、違ーう!向こうでは成人してるらしいし!
こうなったら18でも19でもあまり変わらないような気がします。
私が小学校入学の時にはまだ生まれてなかったファン。
私が中学校の頃には、幼稚園児くらいのファン。
私が高校の頃には、やっと小学生になったくらいのファン。
・・・。
残念ながら向こうの一年の日数も一日の時間もさほど変わりがなく、一年が500日だったとか、一日が32時間だったとか数字のトリックはないようです、くすん。
結婚適齢期が何歳なのかわかりませんが、成人が16で、21が嫁き遅れに片足を突っ込んでる(夢の話だけど)というなら、26歳って向こうではどういう状態なのか怖くて聞けません。
私のことを22だと思ってるファンに本当の年齢を伝えたら「そんな年だったのか?!」ってドン引きされたらどうしよう。
これじゃあ、本当に若いコをたぶらかした女になっちゃうよ。
4歳くらい気にしないって言っても、さすがに8歳は気になるよね?
その時、私はファンに本当の年齢は言えませんでした。
*
「亜莉紗、今日は暗いよ。私5000ペソ勝ったみたいね。ちゃんと警察に届けたの?」
更衣室でユッカに肘でつつかれます。
「あのさー、5000ペソっていくらよ。家の荷物は無事だし、今日も大丈夫よ。私が落ち込んでるのはもっと別のことよ。」
スカートをはいて制服のブラウスに着替えていると「うわー。」と他の女子に聞かれないくらいにユッカが隣で小さな声をあげていました。
「何が・・・」
ユッカの視線は胸の上から肺あたり?
思わずバッと前をしめてボタンを慌ててとめました。
「はげしー。」
ユッカはニヤニヤしています。
「何見てんの。ほっ、ほっといてよっ。そして5000ペソ払え!」
「ペソって両替どこでやってると思う?」
「素直に円で払え!」
ベストを着てボタンをとめます。
見える所は気をつけていましたが、胸にキスマークつけるのもやめてもらいましょう。
「さ、朝礼して、体操して頭を切り替えましょ。笑顔、笑顔。」
ユッカは腰のあたりをバンと叩きました。
今の5000ペソの恨みですか?せめてユーロとかUSドルとかウォンとかレートがわかりやすいのにしてよ。
*
昨日の今日なのでまたお弁当持参でのお昼です。
今日はユッカの分はナシ。理由はファンは思ったより量を食べるから作った分全部置いてきたのでした。
それにしても朝起きるのが辛かった・・・。
自分の計画性のなさにほとほと呆れます。
女子休憩室には人がまばらにいるので、ユッカとは当たり障りのない話だけしました。
「そろそろ同期会しようかって話出てて、今度こそ亜莉紗連れてこいって言われてるんだけどどう?」
う。
同期会は最近避けていましたが、同期の皆には理由はバレバレでしょう。
いきなり当たり障りなくない話になりました。
職場では気をつけていたのですが、一回お持ち帰りされてしまった相手が同期にいるのです。
つきあうことはありませんでしたが、別な支店でもたまに会うしかなり気まずい相手です。
ユッカは「気にすることないって。」と言いますが、同期内では微妙に二人をくっつけようとする空気があって私はそれが嫌だったのです。
相手が嫌な人じゃないから余計に悪くて・・・。
後輩のコは私の同期は"豊作でうらやましい~!"(男性がカッコイイらしい)だっていう話だけど、私はそう?としか思えません。
だって好みの超ド真ん中はファンだったのですから、同期がカッコよく見える訳がありません!
「さすがにそろそろ出ようと思ってるけど、金曜日は用事があるから他の日なら・・・。」
「よし!亜莉紗OK!と。」
ユッカは誰かにメールを送っています。
「金曜日はダメだからね!」
「ハイハイ。ダーリンとデートね。」
デートじゃなくて、今度こそ異世界?訪問の予定ですから!
平日は時間がどうなるかわからないので、たぶんどこかの土曜にでも設定されるでしょう。
「先輩、飲み会あるんですかぁ?」
自分たちの後ろの席のコから甘ったるい声がかかりました。
ユッカが「ごめん、同期会だから誘えないの。今度声かけるように言っとくから期待しないで待ってて。」と後輩の子を制します。
部外者を一人誘うと芋づる式に女の子が増えるので面倒なのです。
同期の人たち、フリーかどうかわからないけど一応独身ぞろいだし、人気があるようです。
私的には、もっとカッコイイ人いると思いますけど。ファンとか。
残念ながらユッカも私も、一部を除いて同期内では既に女扱いされてないです。
「ごめん、そのダーリンに電話してくるわ。」
ここじゃ電話できないので、ユッカに断って休憩室を後にしました。
ドアを閉める時に「アリサ先輩の彼氏ってどんな人なんですかぁ?」とユッカに興味津津で訊ねているのが聞こえましたが、まさか自分から異世界?人で18歳とは言えません。
ユッカに写メは見せましたが、18には見えないでしょう。
4階の階段でファンにこっそり電話をしました。
エレベーターがあるので誰もここは利用しないはずです。
・・・と油断してたら「あ、川原か。」と下から人が上がってきました。
同期の一人でよその支店にいる森田くんです。
一般的に見れば彼は格好良くてイケメンの部類なのでしょう。
「森田くん。今日なんかあった?」
「昼からちょっと本部に用事があって来た。今は煙草でもと思って屋上に行くとこ。」
「ふうん。じゃ、私昼休み終わるから帰るね。」
手を振って戻ろうとすると「同期会出るんだって?」と言われました。
「はは。今さっきなのに情報早いね。出るよ。」
「じゃあ、その時にまた。」
森田くんが階段を上ろうと一歩足を踏み出したあたりで「うちの後輩のコたちが同期メンバーと飲み会希望なんだって。一応伝えたからね。」と言い逃げしました。
あー、会ったのが日下部くん(お持ち帰りされた相手)じゃなくて良かったよ。
*
今日は早く帰れました!
昨日が遅かったから仕事が終わったらさっさと帰ろう!と皆の気持ちが一致したので定時から少しで帰れましたよ♪
繁忙日じゃなくて良かった。
まだ暗くならない道をてくてく歩いていると、前からファンが歩いてきました。
手を振っています。
日曜日はファンの衣料品を買い込んだので、どう見てもただの外国人です。
いえ、ガタイはいいですけど。服装が普通ということで。
剣は持ち歩かなくてもファンの腕なら何も危険がないと説得して素手で出歩いてもらってます。
信号や交通ルールは理解してるみたいだし、けっこう順応力があるので、少し不安はありますが基本は自由です。
「ただいま~。散歩してたの?」
「"こんびに"に行って来た。」と袋を持っています。
もう、お買い物もOKですね!
「リサの好きな"あいす"を買ったぞ。」
「わあ、ありがとう。」
幸せな気分でファンに腕を絡ませて二人で家に帰りました。
*
「ファンはだいぶこっちに慣れてきたね。」
「今でも驚かされることは沢山ある。"こんびに"の"れじ"とやらで小竜が動いてて飛びのきそうになった。"てれび"を知らなかったら危なかった。」
ゲームのキャンペーンか何かやってるのかな。あー、そりゃびっくりするかもねぇ。さすがファンタジーの国の人だわ。
「ファンは近くで竜を見たことあるの?」
今までなんとなくそういう話はしたことがなかったので、いい機会だから聞いてみることにした。
「遠くを飛んでいるのはある。近くで見ていたら命がいくらあっても足りない。」
「今度私も見てみたいなぁ。」
竜!王道ですよね!
目を輝かせていると「危ないからダメだ。」とファンにドきっぱり言われてしまいました。
「どんなに小さくても野生の動物は生きるために牙をむく。リサは平和なこの国の生まれだから危険に気づかないだろう。俺のいない所で何をしてるか心配だ。」
いえ、それで今まで26年間無事に生きてきましたよ・・・。
「でも、四六時中ファンと一緒にいられるわけじゃないし、今までも一人暮らししてきたから大丈夫だって。」
「そうは言っても心配は心配だ。リサを向こうに連れて帰りたい。」
知り合って5日目なのにそう言ってもらって嬉しいけど、私もこっちの生活があるし・・・。
「そんなこと言ったら、ファンと離れがたくなっちゃうじゃない。」
一番早くて次の金曜日には向こうに帰る予定なのに。
「俺の妻になればいい。こう見えても稼ぎはいい方だ。」
サラッとファンに言われたので何を言ったのか最初は理解できませんでした。
「つま・・・。」
・・・。
「えっ?知り合って5日目だよ?・・・それに・・・。」
「こっちの成人が20歳なのは人に聞いた。俺の年齢を聞いたリサの様子がおかしいから変だと思って。」
ぐぐっ。バレてましたか。
「そっ、そうよ、私26歳よっ。それでもいいの?」
ファンはくっくっくと笑っています。
「向こうでそんなこと言っても誰も信じないさ。リサが何歳でも俺はリサがいい。」
川原亜莉紗26歳。
もう戻れない道に足を踏み出しちゃってもいいですか?!
・・・
ダメダメ!
5日目だからこそ冷静にならないとっ。