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無断欠勤の週末夜

結論から言いましょう。


日本の戻ってきました。


ファンと私・・・それとゼットさんとアオイさんです。


時間が早かったせいか、私についてくる気がなかったのかタビーには会えませんでした。







「・・・うちに行きましょう。」


今回は何が悪かったのか繁華街に戻ってきました。


家からちょっと遠いです。


ファンは日本にくるつもりだったからか、鎧と大剣は身につけてませんでした。


ゼットさんは刃物のような危険物は"収納"してるんでしょうね。


家について落ち着いたら、とりあえずユッカに連絡しよう。


職場に電話してもこんな時間じゃ誰もいないだろうしね・・・。


「その前に、買い物して行ってもいいかしら?」


アオイさんがフードをめくると、そこには白い髪の毛はなく黒々とした長い髪の毛が現れました。


「ナガラー様!」


いきなりファンが叫んでその場で胸に右手を当て膝をつきます。


「ちょっ、ファン。どうしたのいきなり!」


「リサっ、この方はものすごく偉い方なんだ。」


膝をついたファンと、アオイさん・呆れている様子のゼットさんを見比べます。


亜莉紗(ありさ)さんの彼氏さんね?畏まらないで頂戴。」


アオイさんはそのまま怪しいねずみ色のローブを脱ぐとどこかに消します。


ローブの下には日本でも通用しそうな落ち着いた色彩のワンピースを着ています。


「畏れ多いことでございます。」


「その礼・・・あなた、貴族ね?名は?」


えっ、ファンてお貴族さまなの?


アオイさんがファンの肩に手をかけると「・・・ファンリエッテ=ルガル=マエジャーマと申します。」とファンが名乗りを上げた。


「マエジャーマ!・・・そうマエジャーマなの。」


アオイさんが少し驚いた様子に、ファンの身内が有名なのか知り合いでもいるのかとアオイさんを見つめました。


「ファンリエッテ=ルガル=マエジャーマ。命令はしたくないけれど、この国では亜莉紗(ありさ)さんに接するように普通にして下さい。そうしないと悪目立ちしてかないません。」


「はっ。」


ファンが膝をついた姿勢から中腰になって私の横に下がりました。


「・・・アオイさんて顔を見ただけでわかっちゃうレベルの有名人だったのね。だからベールをとった時に侍女さんたちが驚いたり咎めるような感じだったんだ。」


「リサ・・・。」


アオイさんと対等に口を利く私に若干非難の目を向けるファン。


「バレちゃったら仕方ないわね。そうよ、私、ティルディグでは色んな意味で有名人だと思うわ。」


そのアオイさんの横に黒ずくめのゼットさんが寄り添います。


「アリサ。破天荒な祖母だが、これからも普通に接してやってくれ。」


その言葉にファンがギシッと固まるのがわかりました。


ゼットさんがアオイさんの孫と知ってショックだったのでしょうか。


「アオイさん、買い物は何を買えばいいの?」


アオイさんは「まずはコンビニで事足りるから、近くのコンビニに行きましょう。」と微笑む。


・・・あれっ?


アオイさんが召喚された70年前にコンビニってなかったよね?


ゼットさんに話を聞いたのかな?







「そういえばまだ夜ごはん食べてなかった。ファンとアオイさんは食べたの?」


ボタンを押して自動ドアがゆっくり開いてみんなで店内に入ります。


「ずっと門を抑えていたから全然食べてないわ。」


「俺も仮眠から覚めて直接行ったからまだだ。」


アオイさんは一番に入口の新聞を手にしました。


そうだよね、現代の日本がどうなっているのか気になるよね。


「ゼット。カゴを持っていて。」


ゼットさんにカゴを持たせて新聞の夕刊を入れ(新聞は昔からあったはず!)、コピー機の横の機械に向かいます。



機械が珍しいのかなと思っていると、どこからカードを出してATMに差し込みました。


「えっ?」


少しぎこちない様子で画面をタッチすると、機械がタタタターと音を立て、中からどう見ても数十万円のお金が出てきます。


「・・・・。」


ポカンと見ていると、諭吉さん一枚を残し後は手元から消えてしまいました。


「物持ちが良くて助かったわ。」


アオイさんが私に一万円札を渡すと「これで支払ってね。」と笑っています。


えっ、えっ?


「話は後でね。」


アオイさんは目を丸くしている私たちを残して店内を探検しています。


今の何かの魔法?


「とにかく何か食べるものを買って行こうよ。」


呆然としているファンとゼットさんに声をかけてお弁当コーナーに行って食べるものを仕入れました。


そんな私たちをよそにアオイさんはコーラの500mlのペットボトルを文字通り握りしめていました。







店から出て「うちに行きましょう。」と声をかける。


「・・・これ見てくれる?」


アオイさんが袋の中から新聞を手にとります。


「夕刊が何か?」


アオイさんから新聞を受け取り記事を見ると・・・「あれっ?」でした。


私の反応にアオイさんが文字通りニヤリと笑いました。


「このニュース。前にも見たような・・・。」


一面の政治関連のニュースなんてどれも似たりよったりだけど、この人失言がもとで先週辞任したはず・・・。


日付を確認すると2週間も前のものでした。


コンビニで古い新聞がまぎれていた・・・そんな訳ないよね・・・。


「これで無断欠勤は消えたわよ?うまく先週に戻ってこれたみたいで良かったわ。」


アオイさんがこともなげに言いましたが、先週ではなく2週間前ですが?


「どうやって?いえ、その前に先週じゃなくて2週間前ですよ?」


私の言葉にアオイさんは「えっ、計算間違ってたっ?!」と新聞の日付を見て「ゼットが持ってた電話の日付を勘違いして覚えていたみたい・・・。」と、てへっと笑いました。


・・・"てへっ"って。


「ときに亜莉紗(ありさ)さん。二週間前は何をしてたか覚えてる?」


コンビニの前で大人4人が立ち話です。


「えっと・・・先週は帰れなくて、その前はゼットさんを連れてきて・・・いえ、ゼットさんはその前だから、二週間前は早めに戻って・・・タビーを連れて来たんだった。」


「タビーって誰だ?」


さりげなくファンが口をはさみました。


「タビーは猫だよ。動物。」


動物なら・・・とファンは口をつぐみます。


「じゃあ、今から行ったらそのタビーと亜莉紗(ありさ)さんが家に帰ってくるわね。」



「・・・それはまずいですね。まさか自分に会ったら爆発したり死んじゃったりしませんよね?ドッペルゲンガーに会うと死ぬとか言うじゃないですか。」


私の発言の意図がわからないファンやゼットさんは二人のやりとりを見守っています。


「会っても爆発もしなければ死なないわよ。厳密には同じ人間だけど"生きてきた時"が違うから大丈夫よ。でなきゃ、私、今生きてないし。」


私はごくりと喉を鳴らしました。


「その言い方だと、アオイさん自分に会ったことがあるんですね?」


「ええ、あるわ。だから大丈夫って太鼓判を押すわよ。」


とりあえず、うっかり会ってしまっても大丈夫そうです。


「・・・どこかホテルをとりましょう。」


あまりこの辺をうろうろしていると、これから猫砂を探してお店をはしごする自分に会いかねません。


「いろいろと説明はホテルでお願いします。」


明日はペット用キャリーを買って動物病院に行っていたはずなので、自分に会う前にどこかに隠れていた方がいいでしょう。


タビーを連れて来た翌日は同期会だったからこの街にいても大丈夫かな・・・?




この後、アオイさんには護衛が必要と主張するゼットさんと残ったファンと私がダブルととろうとした所、アオイさんが私と同じ部屋になりたいと揉めて、アオイさんと私・ゼットさんとファンの男女別の部屋割になるまでに一時間を要するのは想像外で・・・。


その夜、男部屋で何が起こったか、二人とも翌日に寝不足だったのは不思議な出来事でした。



亜莉紗(ありさ)が過去の自分に会って攫われないように忠告するというのはアリでしょうか?←話の流れのためにさせないけど・・・。

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