めっちゃ口説かれました?
白戸くんと日下部くんの間に座って、最初はなるべく奥(日下部くん)を見ないように気をつけてましたが、あまりにもあからさまだと無視してるようになるのでぽつぽつとあたりさわりのない話をしていました。
問題は話題につまってスマホからタビーの写真を出した時に起こったのです。
「カワイイ~!」
両サイドから覗き込む二人の片方・・・白戸くんが発した言葉です。
「昨日拾ったばかりなんだけど。」
白戸くんはグイグイと私の方に押してきます。
「名前は?オス?メス?今度見に行ってもいい?」
「白戸くんて猫派だったんだ。」
私の言葉に目を輝かせた白戸くんは「ウチも飼いたいけど賃貸で転勤あるし、親は動物のアレルギーあるから実家もムリだし。」とスマホに釘づけです。
「データ送る?まだスマホよくわかんないからメール添付でいい?」
「日々写真アップして。」
白戸くんの言葉に「毎日送れってこと?」と首をかしげていると、日下部くんも「じゃあ俺も。」と参加してきます。
「二人とも猫好きだったんだ。毎日は送れないけどたまにならいいよ。」とアドレスを交換します。
「この手!可愛い・・・。」
成猫とおぼしきタビーでこれなら、仔猫だったらどれだけやに下がっちゃうんでしょうね、白戸くん。
「ねぇー、川原の家行きたいなぁ。」
白戸くんがイケメンスマイルを発動しています。
残念ながら私のタイプではないので落ちません。
彼狙いの子に猫情報を流したら、皆猫を飼い始めるんじゃないでしょうか。
でも、そういう動機で飼い始めてきちんと世話したり長続きするかどうかわからないので流しませんが。
白戸くんは自信家というか、自分の魅力をわかっていると思います。
日下部くんとはまた別のタイプなんだよね・・・。
「帰り送ってくから、家行ってもいい?」
「終電がなくなるからダメです。」
「川原の家からうちまでタクシーでもそんなにかからないから大丈夫。」
白戸くんが私の手を握ろうとするので、手をさっと避けておきます。
すると今度は肩を抱いてきました。
酔ってるのかもしれませんが、目的が猫?というところがビミョーなので苦笑いしかでません。
白戸くん、どんだけ猫に飢えてるんでしょう。
「白戸、やりすぎだ。」
日下部くんが白戸くんの手を肩からはずそうとした時、パシャッとシャッター音が響きました。
へ?と音のした方を向くと、ニヤニヤしたユッカが「モテモテね~。」と笑っていました。
「ちょっと、ユッカ。消去してよ。」
「ダーメ。今、家のパソコンに送ったから消しても無駄だよん。」
「何するつもりよ!」
立ち上がってユッカの方に移ろうとした瞬間、私のスマホに電話が入りました。
相手は『アリサ 携帯』です。
アリサ 携帯ってどういうこと?
ゼットさんが落として誰か拾ったとか?
「・・・ちょっとゴメン。」と席を離れました。
「もしもし?」
警戒しながら電話にでると『アリサか?』と電話向こうからゼットさんの声がしました。
「えっ、どういうこと?まさかこっちに来てるの?!」
驚いて問いかけると、ゼットさんは不思議そうに『いや、ティルディグにいる。』と答えました。
衛星もアンテナもないのに、どうして電話がつながるの?!
ハナから使えないと思い込んでいて、アンテナが立ってるかを確認したことも使ってみたこともなかったので、まさか電話が使用可能だとは思いもよりませんでした。
『祖母がアリサにお礼を述べたいそうだ。』
「えっ。」
電話がつながった事と、お礼と頭の中で何が?と混乱していると、上品そうな女性の声が耳元に聞こえました。
『わたくし、ゼットの祖母でアオイと申します。このたびは貴重なものをいただいてありがとうございました。』
「あっ、はじめまして。私、川原亜莉紗と申します。」
まるでお客さんを相手にするようにペコペコと頭を下げて、いきなりの祖母さん登場をなんとかしのぎました。
少しばかり言葉を交わすと『ゼットとかわりますね。』と言われてホッとする。
『今度祖母がアリサに会いたいそうだ。』
「会いたいって言われても・・・。」
会いたいと言われても、いつ金曜日に行けるかわからないし、そもそもゼットさんの祖母さんに会う謂れもないしなぁ。
『詳しい話は"デンワ"を返す時にでも。』
あー、それがありましたね・・・。一度はゼットさんに会わなきゃならないか。
「わかりました。約束はできませんが今度また。」
通話を終えると、そこに白戸くんが立っていました。
トイレ・・・じゃないよね。ここ外だし。
「今の彼氏?」
「ううん。知り合い。」
白戸くんも電話?と思っていると「さっきの話の続きをしようと思って。」と近寄ってきました。
さっきってタビーのこと?
「もし猫が口実で、実は川原のこと口説いてるとしたらどうする?」
「ナイでしょ。タビーのこと話すまであんまりベッタリじゃなかったじゃん。暑いから店に入ろうよ。」
白戸くんは苦笑すると「こんないい男を目の前にして・・・。」と私の背中に手を添えて店に入ります。
「だから川原が好きなんだよ。」
そう彼が口にした瞬間、目の前で日下部くんがいて固まっていました。
「・・・どうしたの?」
「・・・今の・・・。」
今のってライクだよね?と白戸くんと目で会話をしていると、日下部くんに腕を掴まれてまた暑い外に連れていかれます。
私は冷房がある場所がいいんだけど。
「川原。前に言いそびれたんだけど・・・つきあってくれないか。」
「ごめんなさい。私いまお付き合いしてる人いるから。」
ほとんど反射でロボットのようにぎこちなく頭を下げて答えました。
ごめん瞬殺で。
日下部くんは茫然として「彼氏とは3か月前に別れたって聞いたけど・・・。」と呟いた。
誰から聞いた!それは前の彼氏だ!そして3か月じゃなくて4か月前だし!
「つきあったばかりなの。」
「・・・そっか。また遅かったか。」
日下部くんがしゅんとなって罪悪感が生まれたけど、仕方ないと思ってもらうしかない。
あの時だったら一も二もなくオッケーしていただろう。
日下部くんは真面目でいい人だから。
「白戸くんが私に言ったみたいに、日下部くんのことは同期として好きだから。」
相手が自分に好意を持っているのに、ぶっちゃけ過去にいただかれてしまったけど、男としてじゃなく人として好きというのは酷い女かな・・・?
だってその後いたたまれない空気で避けられてる感じだったし、何もなかったから『実は酒の勢いでつままれちゃっただけ?』ってちょっと悩んだのは事実だったりする。
"また遅かった"とか言ってるけど、本当に今更すぎだよ・・・。ヘタレなのか?
今度は私が日下部くんの背中にポンポンと手で叩いて店の中へと誘う。
しかし、そこで待ち受けていたのは先ほど入口ではぐれた?白戸くんでした。
「さっ、タビーちゃんに会わせてもらう予定をみっちり話し合うか。」
彼にひっぱられて席の角においやられ雪隠づめになった私(注・目的はタビー)は、今度こそ白戸くんにみっちり口説かれ?たのでした。
触らぬ神に祟りなしと二人の世界を邪魔しない冷たい同期たち。
そこまで猫が好きなら猫カフェとかペットショップにでも行けばいいんじゃ・・・という言葉を発した私に「猫カフェは近くにないし、ペットショップに行って我慢できずに衝動買いしたらどうしてくれるんだ。寂しい思いさせちゃうじゃないかっ。」と睨まれてしまう始末。
・・・そんなに猫が好きだと知りませんでした。
過去に何かあったのと聞きたくなるレベルの熱意にかなり引きましたよ。
うちに押し掛けられても迷惑だから、やっぱり猫好き情報流しちゃおうかな・・・。
今日の同期会で一番印象に残ったのは、日下部くんの告白じゃなくて、白戸くんの猫好きでした。
もし異世界に猫の獣人がいたら友達になって(←もちろん私がなりたい!)紹介してあげたのにね、残念。
予約ミスで掲載されてしまったので、そのまま投稿しておきます。
4日に更新できるかどうかは謎です。




