ありました!
翌朝にはゼットさんの熱が下がり、私も安心して仕事に出かけることができました。
何かの感染症でなくて良かったです。(医者じゃないので、たぶんと言うしかない)
そして久々に帰宅が遅くなってしまった(と言っても20時)今日、同僚のユッカの彼氏が車で送ってくれると申し出てくれましたが「途中で買い物があるので。」とお断りして家路を急いでおります。
買い物は本当です。
明日ゼットさんを向こうに帰すので、米5kgをスーパーで購入です。
10kgにしようかと思いましたが、祖母さんは首都住まいと言っていたと思い出して、重い荷物を運ばせるのも悪いと5kgにしました。
家までやっと持ち帰って、よく考えればネットスーパーで注文すれば良かったとorg状態になる私。
仕事で扱うお金だって100円玉でも一枚4.8g程度、100枚で約480g、1000枚で約4.8kg(50枚をひと巻きにしたものを20巻入りのトレー一枚の状態)だし、それのトレーを4枚分入れた状態の麻袋を何体も台車に載せるのを考えれば軽い軽いと思っていたら、やっぱり空腹で持ち歩く米は重かったです。
既婚で今はパートの先輩が「子供なんてものすごく重いよ!」と言っていたけど、ごめんなさい私にはまだわかりません。
それを考えると、体重**kg(ヒミツでお願いします!)の私を軽く扱うファンはすごい力持ちだな・・・と思います。
玄関先にドサッと米袋を置いて「ただいま"~。」と濁点混じりで帰宅と告げると、リビングの方から姿は見えないけど「アリサ、おかえり。」とゼットさんの声がしました。
「帰りました~。」
職場から戻ったばかりの格好でマキシ丈じゃないけどいいやと手洗いとうがいをして、キッチンで何か飲もうとそちらに向かうと、そこにはゼットさんが立っていました。
ゼットさんの前には冷やし中華?・・・じゃなくて冷製パスタがあります。
ファンだと絶対に足りない量ですが、ゼットさんは思ったより量を食べないようです。
前に私が作った内容通り、乾燥パスタを湯がいて水でしめた麺の上に、トマト、水菜、半切りの茹で玉子、きゅうり、ツナの缶詰(たまに鶏ササミだったり)、冷凍コーンをお湯で戻したものがのっていました。
プラスでチーズも欲しかったけど贅沢は言えません。
ドレッシングも冷蔵庫に入っている市販のもので、家にあるもの(具はその時によって変えたり)でできてほとんど麺を湯がくだけという簡単メニューです。
空腹で帰宅した私には本当に御馳走です!
「ゼットさんありがとう!良いお嫁さんになれますよ!」
「アリサはよほど食事をしたくないと見える。」
ゼットさんはダイニングテーブルの自分の前に二皿、そしてお気に入りのきゅうりの浅漬けをそばに置くと、そのまま食べ始めました。
「えっ、それ私の分じゃないんですか?」
ゼットさんはニヤリと「食べたいか?」と聞きます。
「当たり前じゃないですか。もうお腹ペコペコですよ。」
私の言葉に、私とパスタのお皿を見比べて「どうしようかな~」と意地悪そうに笑っています。
「ごめんなさい!さっきの言葉のアヤだから!」
手を合わせてゼットさんを拝むように謝ると、ゼットさんはフォークにパスタだけくるっと巻いて目の前を漂わせました。
「ほぉーら、食べたいか?」
あっ、ドレッシング垂れるって。
思わずそのフォークにつられて顔が左右に動きます。
ゼットさんはククッと笑って「じゃあ、一口だけ。」とフォークを口元に持ってきました。
思わずパクッと食べると、ゼットさんは「腹が減ってるんなら・・・仕方ないな。」と手つかずの方のお皿を目の前に彷徨わせます。
「・・・もう、じらさないでくださいよ。これ以上我慢できませんから早く下さい!」
皿に向かって手を出すとゼットさんはスッと手の届かない場所に皿を上げます。
「ゼットさーん。これ以上おあずけされたら泣きますよ~。」
「メシくらいで泣くな。」
やっとお皿を渡してくれたゼットさんは呆れたようにそっぽを向いたのでした。
って、自分でやっておいて、アナタは子供かいっ!
*
食後、お風呂に入った私はゼットさんから魔力を感じる修行?に誘われました。
ゼットさんは昨日熱があったから午前中に入ってしまったそうなので食事の片づけをしてくれました。
本当にいいお嫁さん・・・いえ、言わぬが花でしょう。
「今日と明日しか・・・いえ、明日はどうなるかわからないから今日で終わりかな。」
結局、今回の一週間も魔力がどんな感じかわかる前に終了のようです。
ま、子供時代に約3時間で会得してしまった才能ある人と、26歳異世界人の魔法初心者と比べるだけ無駄でしょう。
次のファンとの逢瀬に期待します。
「あ、そうだ。忘れないうちに明日の荷物まとめておきましょうか。」
「荷物って何の?」とゼットさんが人間椅子の体勢で待っていた姿を崩しました。
「ゼットさんおばあさんにお米食べさせてあげたいって言ってたでしょ。マントのお礼も兼ねてお酒とお米と土鍋を持って行ってもらおうと思って。」
一応、こちらの調味料の味噌と醤油もつけて(更に重量増)や現地でゼットさんに味噌汁くらいは作ってもらうつもりです。
祖母孝行頑張って下さい。
「そこまでしてもらうわけには・・・。」
ゼットさんが断る前に「いいんです。私の気持ちですから孝行してあげて下さい!」と柔らかく笑って断りづらくしておく。
「どうしてもダメって言うなら、ゼットさんにあげるんじゃなくておばあさんに差し上げることにしますからね。」
そこで、ふと先週マントをどこにしまったか思い出せないことに気づきました。
先週野次馬に突き飛ばされた時に持ってたけど・・・その後どうしたっけ?
高価なものだって言ってたよね・・?
背中にひんやりしたものが流れました。
「アリサ、どうした?」
タムさんもおやっさんも本人に返せって青くなってたし・・・。
「ゼットさん・・・私、マントお借りしてちゃんと返しましたっけ?ゴタゴタしてたから記憶があいまいなんです。」
両手を胸の前で組んで、おそるおそる尋ねると「受け取ったけど?」という返事でした。
「でも、見当たらなくて・・・・。」
ゼットさんは「ああ!」と何かを納得して自分の手を腰の後ろあたりにまわしました。
すると、まるで手品のようにゼットさんの後ろからあの黒いマントが出てきました。
今どこから出てきた?!
床にはマントを置いてなかったよね?
あまりの不思議に目をしばたかせていると、ゼットさんの手からマントがかき消えます。
「ゼットさんて奇術師なの?」
思わずゼットさんの後ろに回り込んでそのにマントがないか確認しました。
「"まじしゃん"が何か知らないけど、今のは"収納"の魔法だ。」と笑っています。
「収納?」
なんとなく生活感溢れるネーミング・・・。
「その魔法はどれくらい収納できるの?」
ゼットさんの前に座って興味深々で質問すると「特に上限はないけど?」とさりげなくものすごい発言をかましてくれました。
「上限なし?!」
私が驚いていると「ただし。」とゼットさんが真面目な顔でつけくわえます。
「この魔法は誰でも使える訳じゃないし、"管理"できないと意味がない。」
何だ、誰でも使えないんだ・・・。
「空間魔法と"状態保存"が使えることが前提だ。」
くうかんまほう・・・。
魔力を感じることのできない私には、遠い遠ーい遥か彼方の先にある関係ない話のような。
あれですよね、四次元ポ*ットとか、ゲーム内のストレージとか倉庫的なものですよね!
やっとファンタジーらしいものキター!!
「すごい、ゼットさん!すごい魔法使いなんですね!」
惜しみない称賛を浴びせるとゼットさんは少し照れたようでした。
そこでふと気になった質問をすることに。
「人間も入れますか?」
その収納の中身をチラッとのぞいてみたいなーと軽い気持ちで口にしたのですが、
「・・・死んでもいいなら。」
ゼットさんの若干引いたような面持ちに、"人間を入れる"発想がなかったことを理解したのでした。
だって四次元ポ*ットって中に入れたよね?




