少年の心を持つ男?
ロールプレイとか言っている時点で、自分もダメダメと気づいたけれど、そこはスルーでお願いします。
私にもかれこれ10年以上前に黒歴史があったとでも言っておきましょう。
「ファン。あれは鉄馬車だよ。見えない所で炎の精霊さんが馬車を走らせてるんだよ。」
ガソリンを爆発?させているから炎の精霊でいいのかな?
電気自動車なら雷の精霊とか・・・。
何かをこじらせるような発言をして、動揺しているっぽいファンを内玄関に戻しました。
「精霊が・・・?」
たぶんファンタジー系ならそんな感じだろうと思って出鱈目を伝えればビンゴでした。
それにしても、このロールプレイ・・・ふつうの服に着替えでもしたら終わるのかしら。
ファンは胸を押さえながら「初めて見た・・・。」と呟いています。
こういうノリは嫌いではありませんが、ファンもいい年してどこまでどっぽり浸かっているのか気になります。
ファンは本当に好みの超ド真ん中だし、体の相性もいいし、黒歴史を脱皮して成長した私には今の段階でこのロールプレイだけではマイナスにならないのです。
いますぐ結婚でもするなら障害になるかもしれませんが、今は別に一緒にいられればいいし。
「・・・ファン。"おやっさんの店"にくる前にお連れさん(一緒に飲んでいた男性たち)とホテルをとってたって言ってたよね。名前覚えてる?」
さすがにホテル名を聞けばそこまで送れます。
「ホテルってほど高級じゃないが、"青い悍馬亭"で宿をとった。」
私、この土地に26年住んでますが"アオイ・ガンバッテ?"(青いgannbatte?とか?何語?)というホテルは近隣でも聞いたことがありません!
スマホで検索をかけても"青い"にすらかすりません・・・。
"おやっさんの店"の名前も電話番号も知らないし。
「パスポート持ってる?この国に入る時に見せたやつ。」
アザンプールとかドリューズというのがどの国にあるのかわかりませんが、もし万が一本当に迷子なら大使館くらいには連絡をとります。
「パスポート?」
ファンはわからないという顔をしています。
「えーと、入国許可証とか、通行手形みたいなヤツよ。」
「それなら持ってる。」
ファンは器用に首からシャツの中に手を入れて、内ポケット?から何かを取り出しました。
えっとー・・・。
私も外国のパスポートを全部知っているとは言えませんが、だいたいサイズ的にも外見的にも日本のものとそう変わらなかったはずだと思います。
ファンがニコニコして差し出したのは、クレジットカード大の何かのカードでした。
「触っても?」
「どうぞ。」
ファンから受け取ったのは、ひんやりとした銀色の何かの金属でできたものでした。
・・・何て書いてるか読めない。
「もしかして・・・これって有名な・・・ギルドカード?」
ファンの目を見ながら尋ねると、ファンはコクコクと頷いています。
ダメだ、こりゃ。
これじゃあ、大使館には連絡はとれません。
「リサはカード持ってる?」と尋ねられ、クレカにしようか悩んで自動車の運転免許証←ペーパー&ゴールドを見せました。
「すごい・・・リサの顔の精密な絵がついてる。」
・・・
「ここで話していてもラチがあかないから、一回"おやっさんの店"を探しに行きましょう。・・・ファンは・・・えーと、この辺りの服に着替えた方がいいわね。」
本来なら食事をして飲み屋さんを3軒くらいはしごして、途中でたこやきとかおでんとかを買ってなんとなく歩いていると辿り着くのですが、ファンも用事があるので早くみつけるために今から出動です。
幸い、今日は土曜日。用事のない私だけ時間はたくさんあります。
「アニキの服入るかな・・・。ヤツの暗黒時代の服なら入るかも。」
今は別な場所に住んでいる兄の部屋(現在は物置)に何か捨てていない衣類があったはず。
出かけるための衣類を調達が必要そうです。
ちなみに兄の暗黒時代の服とは・・・とある事情で一時期ストレスで超太った時期があり、その時の2Lサイズ?の服なのです。
今は奥さんもいるので、食事も管理されて暗黒時代よりは痩せてます。
ファンは身長もあるけどかなり体が鍛えられているから・・・入るかな?
「ファン。兄の服で悪いけど、ちょっと着替えてみて。」
断られたらどうしようかと思いましたが、ファンは「?リサがそういうなら着てみる。」と着替えを始めました。
結論から言うとTシャツは腕と胸の部分がピタTになりました(汗)
腰がシュッとしているのでズボンのウエストは余裕で入りますが、太もも部分はけっこうピッタリで更には7分丈状態です。
さすがに靴はないのでそのまま皮のブーツのようなものを着用で出かけます。
7分丈が隠れるのでいいでしょうか・・・。
剣はさすがにそのまま持ち歩くのは憚られるので、「布にくるんで持ち歩くか、大事に預かるから"おやっさんの店"を確認できたら一緒に取りに戻ろう。」と頭をさげてシーツでぐるぐる巻きにして紐でしばってファンが持って移動することになりました。
職務質問されたらどうしようとドキドキしながら、昨日の記憶を頼りに二人で歩き出しました。
ファンはキョロキョロとせわしないです。
いっそここまで来るとイタイを通り越して妙に生ぬるく微笑ましいです。
「手、つないでもいい?」
さらに迷子になりそうなファンに右手を差し出します。
ファンは私の手を見つめてから、照れくさそうに彼の左手で私の手を握りました。
「歩いて15分くらいの範囲にあるはずだから、きっとすぐみつかるって。」
こうして二人で"おやっさんの店"を探して練り歩きました。
*
結果・・・撃沈です。
"おやっさんの店"は建物のまわりを木に囲まれた木造で味わいのあるお店です。
一見店とはわかりづらく隠れ家的な店というのでしょうか・・・道で尋ねても知らないとしか答えが返ってきませんでした。
「・・・これは、ハシゴして順番に探してみるか・・・。」
ファンは重いものを持っているので疲れてないか尋ねてみると「全然大丈夫。こんなの散歩のうちにも入らない。」と笑っています。
今まで住宅街でしたが、今度は街の飲み屋街からスタートに変更しました。
夜とは様相が違う飲み屋街を歩いているとファンは押し黙ってしまいました。
日中に来ると人通りもないし寂れた感じがするというか、なんとなくキレイじゃないですよね。
「えっと・・・スタートはたいがいこのお店。」
まだシャッターの降りているダイニングバーを確認し、次に行くお店へと歩きました。
「だいたいここで1時間くらいいて、次はあっちの方へ・・・。」とファンの手を引くと、ファンが動かなかったので自分がよろけてファンの方に倒れこんでしまいました。
「どうしたのファン?何かあった?」
ファンに受け止められて見上げると「・・・いや、なんでもない。」と何でもなさそうでない顔でこちらを見つめています。
「もしかして疲れたの?それともどこか見覚えのある場所でもあった?」
すると「リサ。」と何かを言いかけて、頭を振りました。
「・・・いつも一人でこんな場所に来ているのか?」
何か話題を変えた感じがしますけど「うん。」と頷いておきます。
今は寂れてますが、夜には活気もあるし、いかがわしい店もないせいか女の子もいっぱいいます。
ファンは私の頭を自分の方に寄せると「少し心配になった。」と耳に囁きました。
「大丈夫。この辺は治安もいいし、若い女の子もいっぱいいるよ。」
顔を寄せてきたファンの頭を撫ぜて、「こんどはあっちね!」と手を引きます。
だいたいこの辺で屋台が出てたり、ラーメン屋があったりお土産の店をみかえるんだけど・・・さすがに今はやってないか。
お店のハシゴの後に寄るそれらしい店はみつけましたが、その後どう歩いているかよく覚えていません。
うーん・・・夜&酔っぱらわないとダメかもしれませんね。
しばらくあちこち歩いてみましたが、結局そこで"おやっさんの店"をみつけることはできませんでした。