新しい土地にて
*ゼット視点です。
自分は、異世界・・・?に来たらしい。
異世界と言われてもピンとこない。
ここにはティルディグという国は存在しないそうだ。
ファリサ・・・もといアリサが言うには、一週間後に戻れるらしい。
ならば新しい土地に来たと思って、ここを楽しめばいいと思う。
今まで月に数度会えるか会えないかだったファリサ・・・いや、アリサか・・・の家にいるのだ。
アリサは迂闊にも、女の一人住まいに自分を連れこんだ。
彼女の兄と住んでいないと聞いた時に思わず笑みが浮かびそうになったのはうまく抑えられた。
しかも、彼女の部屋の様子をうかがってみると、鍵もかかっていない。
暗闇の中、健やかな寝息をたてるアリサの顔を見下ろしながら、『さて、どう料理したものか』と思案する。
現在アリサには、男がいるらしい。
それがあの"命知らず"のぼうやだと本人から聞いて知ったわけだが・・・。
男 が い る か ら な ん だ と い う の だ ?
そんな事を言っていたら、明日をも知らぬ命の冒険者などやっていられない。
自分たちは無法者ではないが、欲しいものは自らの手で奪う。
奪われたら奪い返す。それが冒険者の流儀だ。
今までは、年の離れた小娘と自制していた。
自分の気持ちを抑えないと決めた今は、目の前に無防備に眠るアリサは『さあ、どうぞ召し上がって下さい』と言っているのと何ら変わらない状態だ。
「・・・アリサ。」
声をかけても反応はない。
酒の匂いがしていたので、そのせいで起きないのか、眠りが深いのかわからない。
アリサの上にかかる薄い上掛けをそっとめくる。
そこには夜目にもわかる白い肌があった。
大きく開かれた胸元、柔らかい曲線を隠しきれない薄い布。
アリサの上にそっとまたがり、顔のわきに腕をついて耳元で「アリサ。」と囁いてみる。
それでも彼女に反応はない。
彼女の柔らかそうな唇に指でそっと触れてみるとかすかに開いた口からほのかに呼吸を感じた。
今度は自分の顔を近づけて彼女の唇を軽く味わってみる。
彼女は依然眠ったままだ。
可憐な唇に舌を割りいれてみる。
指はすでに彼女の柔らかい肌を堪能し、たまらなくなって薄い布を上にたくしあげるとそこには白い双丘が自分を誘っている。
肌理の細かい彼女の肌に唇を寄せ、赤い花を散らす。
しかし、この期に及んでも彼女は覚醒する気配を見せない。
反応が何も得られないことが、自分の欲望を少しづつ彼女から遠くにおいやっていることを感じ、彼女の胸に顔をうずめた自分は「何をやってるんだ・・・。」と苦笑をもらした。
目の前にある双丘の片方の頂を口に含み、このまま続けるかしばし逡巡する。
さすがに行為に及べば彼女も覚醒し、そして驚愕するだろう。
それも一興だが、どうせなら甘い声で啼かせてやりたい。
自分の下で媚態を見せる彼女を想像すると、再度腰に熱が集まってくるのを感じた。
このままやってしまうか・・・。
「アリサ・・・起きろ。」
彼女を起こそうと試みるが、アリサは泥のように眠っていて目を覚まさない。
ある意味チャンスと言えばチャンスだが、つまらないといえばつまらない。
彼女の細い腰を指でなぞったり、きわどいところまで口をつけてみたが、やはり眠ったままだった。
ため息をついて健やかな寝顔を見ていると、邪念が追い払われつつあることを自覚した。
「・・・ま、時間はまだある。」
かなり年下相手に何をやってるんだと思いながら、彼女の着衣をもとに戻してやり、上掛けをかけてやった。
「続きは少しでも意識のある時に・・・。」
彼女の唇におやすみのキスを念入りにして、自分の部屋に戻ることにする。
ファリサ=カーラ・・・いや、カワハラ アリサ。
今、一番自分が手に入れたいと思っている少女・・・いや、"女"か。
彼女は、自分の弱点となりうる存在。
それはあの"命知らず"のぼうやにも同じことが言える。
冒険者として名が売れれば売れるほど、やっかみや恨みを買うことは多い。
本人がダメなら、その女に・・・という下衆な考えをする人間はどこにでもいる。
だから最初は気のないふりをしていた。
それでも心のどこかで彼女を求めていたのだろう。
彼女を怯えさせないように気を使ったり、陽気を装ってみたり・・・自分らしくない行動をしていた。
年が離れているからと自らに枷をつけたまでは良かったかもしれない。
数年も抑えていた気持ちは、もう戻すことはできないところまで来ている。
"冒険者"の"女"にできるだろうか。
いつ戻るかわからない男を待ったり、男が死んでもすぐ次に男をみつけるくらい図太くないと彼女が苦しむはめになる。
一生幸せにしてやると言い難い仕事をしている自分達。
そもそも"一生"を彼女に約束してやれない。
刹那で享楽的な恋でいいと割り切るか、彼女を囲い込んで逃げられないように愛するか。
彼女の男・・・期待の新人と騒がれ、二年目にしてBランクまで登った"命知らず"のぼうやには想像がつかないだろう。
地に足をつけて生きていない自分たちは、本当の意味で女を幸せにしてやることができないということを・・・。
ゼットさん、アウトォー!
冷凍鮪で助かったリサでした。