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"おやっさんの店"は家から徒歩15分の異世界にあります。

やってきました金曜日!


日中に買い物をして、20時から"おやっさんの店"探しにトライする私たち二人。


20時はダメでした。


21時に再度トライするも、21時もダメでした。


22時にも再々度チャレンジしました。


行けましたよ!


いつもの繁華街から・・・。


ファンは剣を布でくるんで持っているし、荷物は重いし(私が持つと言い張って失敗・・・)で大変でした。




それにしてもどうなってるんでしょうね、ウチの街は・・・。


それとも私だけなのかな・・・。


異世界に行ける条件その3に『22時以降』を追加いたしました。




繁華街からいつの間にか暗い林のある道に出て、少し先にドリューズ?の町が見えます。


ここまでくればおやっさんの店はすぐ近くです。


帰る時はこの道を道なりに進めば住宅街に出たはず・・・。


家まで徒歩15分です。


「ファンはこれからどうするの?」


暗い道に出るとファンは早速剣を布から取り出して帯剣しました。


「今日は宿をとって、明日は一度首都に戻ろうと思う。」


「半月もごめんね。まさかこんなことになると思ってなくて。」


ファンは抱いた肩越しにこちらを見て「謝らなくていい。お互い予測不可能な事態だった。」と柔らかく笑いました。


「リサ。改めてティルディグにようこそ。」


そしてチュッと額にキスをします。


「このままリサを首都に連れていきたい所だが・・・。」


「金曜日以外に戻れるならついていきたいけど、帰れなくなると困るから。」


残念だけど首都には行けません。


「何かあったら、おやっさんの店で伝言をお願いして。」


電話があればいいのになぁ・・・。


ファンに肩を抱かれたまま"おやっさんの店"に到着しました。


「鎧を受け取ったら、一度宿をとってくる。」


ファンと共に"おやっさんの店"に入りました。







「おっ、ファリサちゃん!」


店に入るとお客さんはまばらでカウンターには常連のタムさんだけが座っていました。


「ぼうずも一緒か。」


おやっさんはファンを見て何とも言えない表情をしています。


「ファンのことぼうずって言わないで下さいよ。あ、鎧預かっていただいてありがとうございます。」


ファンは目礼をして私の隣に立っています。


私がおやっさんから鎧の包みを受け取ってファンに渡します。


「ありがとうございます。」


ファンもお礼を言って「じゃあ宿をとったら戻ってくる。」と店を出て行きました。




ファンがいなくなると、タムさんが「ゼットがいなくて良かったなぁ。」と呟きました。


私が首をかしげていると、おやっさんが「ファリサちゃん、何のむ?」と聞いてきました。


「あ、そうだ。お土産持ってきました!鎧を預かってもらったお礼です。」


私の言葉に「久々に"たこやき"か?」と目を輝かせるタムさん。


「あ、ごめん。タコヤキじゃなくて、今回は私の国のお酒なの。酒場にお酒持ってきてごめんなさい。」


重かったですよ。瓶ですから。


カウンターの上にウィスキーとブランデーの瓶を二本づつ並べます。


それを見たおやっさんとタムさんが何やら目くばせをしました。



やっぱり酒場に酒はまずかったでしょうか?


それともどんだけ酒好きなんだよ、とか思われたのでしょうか。


「えっと。ゼットさんは今日まだ来てないの?マントを返そうと思ってたんだけど。」


おやっさんとタムさんが「ありがとう、大事にいただくよ。」と早速それぞれのお酒を自分の所に分けています。


「ゼットは今日は遅いんじゃないか。前にディルノーグで仕事って言ってたから。」


そのディルノーグという名前は初めて聞きました。


「そうですか。高価なマントと聞いたので直接お返ししようと思ってたんですけど、もし帰るまで会えなかったら預かっていただけますか?」


かさばるマントの包みとお礼のワインとお酒の荷物に視線を送ると、おやっさんもタムさんも揃って青くなって首を横にぶんぶんと振っています。


「「ダメダメダメ!本人に直接返してくれ!」」


そんなに高価な品物だったの?


一週間も借りちゃいましたけど。ワインとお酒とじゃお礼に釣り合わないかも。


「・・・もし今晩会えなかったら、ゼットさんに必ず来週お返ししますって伝えていただけます?」


おやっさんとタムさんは安心したように今度は縦に首をコクコクと振りました。




「ファリサちゃん、最近どう?」


いつものを頼んで、待っているとタムさんが話かけてきました。


「最近って、先週と何も変わってないよ?仕事して息抜きして・・・って感じ。」


「仕事は慣れたのか?」


タムさんの質問の意図がよくわかりません。


「こう見えてもけっこう長いからね。今更慣れるとかの問題じゃないけど?」


「・・・そうだったのか。親御さんが亡くなってから大変だったもんなぁ・・・。」



確かにあの時は裁判とか大変だったけど。もう終わった話だしね・・・。


「どうしたのタムさん、今日は何かヘンだよ。」


「たまにゃあ、(ワシ)だってまじめな話はするわい。」


「・・・そう?」


おやっさんが頼んでいたお酒(柑橘系のにおいのするサッパリしたお酒)を持ってきて、一緒につまみも出してくれた。


チーズは向こうと全く同じチーズだ。


チーズを口にして、お酒をチビチビ飲む。


「そういえば、今までお金で払ってなかったね。今日からちゃんとお金で払うから。」


ファンに渡されたお金のうち、これを使うといいと教えられたちょっといびつな銀貨をお財布に入れてきました。


「いや、いいんだよ。あれはあれでものすごく高く売れたから。」


最初にこの店に来た頃は身につけていた元彼からもらったネックレス(金)とか指輪(金)とかで支払をしてました。


その後も手持ちの不要なものでいいと言われ、持っていたアクセサリーとかでお支払いしてましたよ(汗)


そんなにゴツくなくて細かい鎖とか、透かし彫りみたいなものだったから高価ではなかったけど、こちらでは高値がついたみたいです。


細工が細かくていいと言われたけど、現代日本製品ですから当たり前です。


タムさんもゼットさんもよくおごってくれたなぁ・・・。


「今度来る時、"たこやき"持ってきてくれよ。」


タムさんの言葉に親指を立てて「了解!」と合図を送ると「女の子がそんなことして!」と(たしな)められました。


ここでは親指立てたらダメなの?


今度ファンに意味を聞いてみよう・・・。







お酒を何杯か飲んでいるうちに時間がかなり経っていました。


こっそりとスマホの時計を見ると23時45分になっていました。


「おやっさん、お勘定お願い。もう帰らなきゃ。」と清算をお願いします。


「・・・ぼうず戻ってこなかったな。」


おやっさんの言葉に「半月ぶりだから用事がたまってたんだよ。」と返して、言われた額を財布から取り出します。


ファンに習って覚えましたよ!


この国(ティルディグ)の通貨単位は"スウェン"だそうです。


千スウェンなんて目茶苦茶言いづらいですけど!


「ゼットさんにも会えなかったな~。残念。」


かさばるマントとお酒の包みを持って「おやっさんまたね~。タムさんもおやすみ~。」と手を振ります。


帰る前にファンにも会いたかったな・・・と店を出ると「喧嘩だ!」と野次馬の声が聞こえました。


けんか・・・あっそ。


そのまま家に戻ろうとすると「ゼットが・・・。」と聞こえました。


ゼットさん?


思わず人だかりの方を振り返ります。


「おい、剣を抜いたぞ!」「やばいぞ。」「さがれ!」


えっ、剣?


思わず人だかりの方に駆け寄ります。


全然見えない~!


ピョンピョン飛んでも、ドリューズの男たちの人壁が高くて全然見えません。


「すみません!通して下さい!」


無理に押し通ろうとすると、急にその一角がザッと開けました。


持っていた大きな荷物が人にぶつかったのか、ドンと前に押し出されます。




その時、あの大きな剣を振りかぶったファンの姿が目に飛び込んできました。


スローモーションのような時間の中、剣を振り下ろすファンが一瞬顔を歪めて・・・。


その直後・・・


何か大きい黒いものが視界いっぱいに広がって、息が詰まるほどの衝撃を受けたのでした。







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