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修行の第一歩は・・・

あれから一時間ほど経ちました。


あぐらをかいたファンの上に座らされ、後ろから腰に手をまわされて抱きつかれている状態です。


抱きつかれて体がじんわりと温かいような気がするのはファンの体温だと思います。




これって・・・ただいちゃいちゃしているだけでは?と疑念が頭をよぎります。




最初に大事なことを聞くのを忘れていました。


「ねぇ、ファン。」


「なんだ、リサ。」


ファンがわざわざ耳に口を寄せてくれるので吐息がかかります。


「これって・・・どのくらいで体感できるようになるの?」


今度はファンが耳を甘噛みしはじめました。


「一般的な才能の子供で・・・一日一刻の・・・約10日程度で感覚をつかむ。」


・・・途中に耳を噛んでます。これは修行と関係ないですよね?


「じゃあ、ファンがここにいる間で間に合わないじゃない!」


一刻一時間程度と聞いているので、倍にしたとしても大人の私が10日というのは難しそうな気がします。


「向こうに行ってもリサと会う時に練習する。どうせいつもくっついてるから。」


「うまく週に一回会えたとしても、何年かかるのかなぁ・・・。」


物凄くがっかりしていると、ファンがチュッとリップ音を立てて頬にキスしました。


「じゃあ、寝る時もこうするか。」


「私が寝ちゃったら意味がないんじゃないの?」


「そうかも。」


ファンは頬を寄せたまま体を揺らして笑っています。


「今度は宿じゃなくてドリューズに部屋を持つつもりだ。その方がリサも来やすいだろう。」


「でも・・・私はその部屋に泊まれないと思うよ。一週間も仕事を休めないから。」


泊まったら一週間後まで帰れなくなる可能性は高いかも。


金曜日の夜に向こうに行ってその日に戻るので、ファンの家があると言う"首都"とやらを拝める日は来ないですね。


「都合をつけてまたこちらに泊まりに来る。リサ、いいか?」


「もちろん!」


絶対迎えに行きます!


「先週は二回も遅くなったけど、そうそうあんな時間になることはないと思うから。この先金曜日に予定をいれないようにしておくね。」


うう・・・遠距離恋愛(しかも異世界?)突入です。


ファンは基本的にドリューズ以外にいるそうなので、二人で予定をあわせて落ち合うしかないですね。


「ねぇ、ファン。ファンの魔法って光と癒しの他にどんなのがあるの?」


「俺はあまり魔法は得意じゃないから、後は"火"と"水"くらいしか使わないな。しかも、必要最低限の生活魔法に毛が生えた程度だ。」


それでも魔法が使えるというのは現代日本人の私から見るとスゴイと思います。


「俺は剣がメインだから、魔法はあくまでも補助的なものだ。自分で軽い怪我を治したり、移動の途中で煮炊きをしたりとそういった感じだ。この弱すぎる魔法で攻撃するよりも剣で切りつけた方が早い。」


そうなんだ。


「私の目標はとりあえず"光"を出すことです。センセイよろしくお願いします。」


「"光"なら魔力が少なくても会得しやすい。こちら育ちのリサでも覚えられるかも。」


修行という名目でファンに抱きしめられたまま、二人でいろんなことを話しました。




ただ単にイチャイチャしているだけでは・・・という疑惑はとうとう晴れないままその日は就寝となったのです。







家路に向かう電車の中で、ファンはもう全く緊張していませんでした。


生まれながらのこちらの人間のように平然としています。


行きはあんなに緊張していたのに、冒険者だけあって順応が早いです。




ファンの隣に座って、昨日二人で話したことを頭の中で色々と考えます。




ファンのいる世界にある(いる)もの。←ドキドキ編




魔法。


魔物(魔力があり意思疎通のできない凶暴な生き物)。


竜。(魔物の一種とされている)




ない(いない)もの。←ガッカリ編




エルフやドワーフ的な人種。←すごく期待してたのにー!


ケモ耳な獣人。←コレ、ものすごく大事じゃないですか?!


悪魔のようないでたちの魔族や天使のような種族。←いればいいなぁ程度の期待でしたが、裏切られました。




話を聞いて、なんかテンション下がりました。


ファン限定の話だから、知らないだけで実はいるところにはいるのかもしれません。


そもそもファンはティルディグがあるという大陸から出たことがないそうです。


外国に行けば、未知の種族がいるかもしれません!


動物の他は人(ピンクとか緑とか青い髪の毛とかいない・涙)しかいないって、あんまりこっちと変わらないよ。


確かに5年も向こうに通っていて気がつかないくらいだから、こちらとあまり差異はないみたい。



ファンのいる異世界はそういうところだけど、他に行けばファンタジーな世界もあるのかもれません。


いえ、そのファンのいる世界に魔法が存在するだけでファンタジーの国なんですけど、自分が考えていたのとちょっと違ったので残念だったと言うか。・・・贅沢言っちゃだめですよね。


こちらと似ているからこそ、私も行き来しやすいのかも・・・とチラッと思いました。




今日は二人で少し遠回りして水族館まで足を伸ばしました。


そこでのファンの一言。


「この生簀の魚は売り物か?」


でした。


ファンの中ではその辺にいるような魚を見せて商売になるとは思わなかったそうです。


さすがにカラフルな色の魚や珍しい魚を見てやっと納得してくれましたが、動物園も似たようなものなのかも・・・?と不安になりました。




楽しかったけど、最近睡眠不足が続いているのでちょっと疲れました。


いつでも楽しい時間はあっという間に過ぎ去ります。


空港に行ったり、花火を見たり、二人でデート的なものをしたり、ちょっと買い物をしたり、食事をしたり・・・来週からは滅多にできなくなると思うと少しさびしく感じます。


ファンはこちらでの支払いをすべて私がしているのをすごく気にしていて、向こうのお金を渡してくれました。


ぶっちゃけると渡された袋の中身を見ていません。


ファンが気を遣わなくてもいいように、私が両替しちゃった方がいいかもと思いつつ、向こうのお金をどれくらいこちらのお金に交換したらいいのかよくわからないのでそのままにしていました。




火曜日に出勤したら、急だけど金曜日に休みがとれないか打診して休みを確保しておかなきゃ。


明日からまたファンに留守番をお願いする日々が始まります。


警察に職務質問さえされなければパスポートがないこともバレないだろうし、普通に生活していれば問題もないはずです。


一度エスカレーターに乗る練習をしたいと言われていたので、エスカレーターのあるスーパーに一緒に行く予定だけは決まっています。


冒険者なら運動神経も悪くないだろうし、すぐに乗れるようになるでしょう。




「リサ。そろそろ"駅"じゃないのか?」


なんとファンは出発駅名を視覚と音で覚えていました。


すごい記憶力です。


私だったら一回や二回では覚えていないかもしれません。


「ファン、すごいね。」


「?何が?」


ようやく自分の街に帰ってきました。







明日からまた仕事が始まります。


仕事の打ち合わせ途中で二週間も向こうを留守にしてしまったファンを金曜日には帰さなければなりません。


不幸中の幸いと言うか、仕事の最中でなくて良かったです。


違約金が発生したり、最悪ギルドを除名されることもあるとか。




「リサ。おいで。」


人間椅子と化したファンがまた私を呼んでいます。


家に帰っても、時間さえあれば「修行をしよう。」と言うファン。


私をずっと乗せてるけど足が痺れないのかな。


今度は横抱き体勢でファンの上に座っています。




やっぱり、この体勢って教師と生徒じゃマズイんじゃ・・・と思いつつ、子供相手にマズイとか思う時点で自分がおかしいんじゃないかと思い直す私。


自分の心が清らかじゃないからそういう発想になるのかも・・・と反省しきりです。


そもそも異性とは限らないしね!




「早く、魔力を感じられるようにならないかなぁ・・・。」


そう呟くと、目の前のファンは「急いでもいいことはない。ゆっくりでも確実にいこう。」と更に私を自分の方へと引き寄せたのでした。


逞しい体躯を布ごしに感じてドキンと心臓が跳ねました。


いっぱい直に触ってるんですけどね、それでもやっぱりドキドキするものです。




やっぱり、これって・・・。


いえいえ、私がわからないだけでちゃんとした修行なんだよね、ファン?







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