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はじめてのお持ち帰り

・・・まだ眠い。


誰かが自分の体を文字通りまさぐっている感触で覚醒した。


そういえば・・・、昨日最後に【おやっさんの店】に寄って、ストライクゾーン超ど真ん中!の人に出会ったんだっけ。


常連のゼットさんや、タムさんにひやかされたけど、意気投合した揚句に酔いにまかせてめちゃくちゃ口説いた記憶がある。


「リサ。」


やっぱり彼の声だ。


「んー。まだ眠い。」


半分寝ている状態で彼の腕に甘えてみる。


すると、体を抱き寄せられて熱い口づけを何回もおとされた。


彼の唇が首に移動し、裸の胸へと降りてきた。


「・・・起きられなくなるよ~。」


私の胸の上にいる彼の髪を両手でなでなですると、サラリと髪の毛が肌をくすぐった。


「"今日は休みだから自分の家に来い"って言ったのはリサだろ?」


たぶんそういうことを言ったのだと思う。


カーテンをひいているが、カーテンの向こうには太陽の気配がするし、かなり日も高いと思われる。


「じゃあ、一回だけ。」


何回もそう言って朝方までずっと二人で睦みあっていたはずだけど、まっ、いいか。


「・・・リサ。」


「なあに?」


彼の顔が近づいてきた。


空のような水色の瞳、少し長い少しくすんだ感じの金色の髪、イケメンとまではいかないけど整っているし見た目は実直そうな人だ。


実直な人が逆ナンでお持ち帰りされるかどうかはわからないけど。


「あの店でリサに会えて良かった。」


「私も。"おやっさん"に感謝ね。」


二人で微笑みあって、私から彼にキスをした。


その後のもう"一戦"の後に、お風呂場で"もう一戦"になるとも知らずに。







「ねぇ、ファン。」


ファンというのは彼の本名に近い名前らしい。


私のリサも本名のアリサの愛称だ。


「何か?」


ファンはバスタオルを巻いた自分とは対照的に何も身につけていない。


昨夜から何回も拝見させていただいているので、今更恥じらったりしないけど目のやり場には困る。


「今思ったんだけどファンの服って・・・個性的ね。」


繊維が荒いというかずいぶんざっくりした作りの服だ。


飲み屋から我が家に直行で下着の替えもなくて申し訳ないです、ハイ。


下着はふんどしとまでいかないけど、ヒモでしばるタイプのものでした。


「そうか?俺はリサの服の方が変わってると思うが・・・。その胸当てとか防御力もなさそうだし、華美であまり実用的じゃなさそうだなと思う。」


ブラジャーに防御性は必要ないのでは?


「で、それ・・・鎧?に見えるけど。」


「軽量の皮鎧だ。」


えっと・・・コスプレ同好会か何かのオフ会だったのでしょうか。


ずいぶん凝ってますよね。


玄関でもつれるように転がり込んで、即ベッドにGO!状態だったし、脱ぐ時にはあまり時間を感じさせなかったから今まで気にしてなかったけど・・・。


自分もかなり酔ってたもんね(汗)


ファンはベッドサイドに立てかけてあったソレを手にとった。


私はもう酔っていないはずだけど、【剣】?に見えますよ、それ。


「その剣・・・」


思わず本物?と聞きそうになると、ファンはその剣をスラッと鞘から抜いて何か確認していた。


そして鞘に戻す。


アルミ箔とかプラスチックにメッキとかじゃなくてもっと重そうな金属に見えます(汗)


「この剣が何か?」


ファンが剣を持ったまま、着替え途中の私の前まで来ました。


「・・・重そうだと思って。」


もう本物?と聞く勇気はありません。


「鉄剣だからそりゃ重いさ。リサの細腕じゃ持てないかも。」


ファンは屈託なく笑っていますが、それ、持ち歩くと銃刀法違反で捕まりますよ?


ファンがその剣を無造作に私に手渡しましたが、その途端にものすごく重みを感じてよろけそうになります。


絶対に床に落としちゃだめだ~!傷になる!


「・・・ファン。笑ってないで助けてよ。」


涙目になりながらプルプルと剣を支える自分から、ファンは軽々と剣を取り戻しました。


「リサ、可愛い。・・・ベッドではあんなに積極的なのに。」


ファンは私を抱きしめると、頬に軽くキスをしました。


この調子だと"ファンとは今日限り"ということはなさそうに思いました。


「ファン。・・・もし良かったらこのまま私とつきあってくれる?」


「つきあうってどこに?」


真面目な顔でボケをかまされてしまいました。


スマホや携帯も持っていないって言われたので、もしかして本当はお断りなのかもしれません。


「私と交際してくれる?って聞いたの。」


逃げられないように言い直しました。


これで断られたら、一夜の夢をありがとうでお別れです。


我ながら都合のいい女だと思いますけどね。


「交際?何言ってる?あんなにしておいて今更違うなんて言わないよな?リサはもう俺の女だろう?」


「飲み屋で男を口説く女でも大丈夫?」


「常連が、あの店で俺以外を口説いたことがないって言ってたし、大丈夫。」


ごめんなさい。過去によそのお店で"お持ち帰りされたことが何回かあります"とは言えません。


さすがに口説いてお持ち帰りしたのは初めてです。


だからビタ好み!だったんだって。




ファンと二人の世界状態で遅すぎる朝食(いえ昼食)をとった後に、お別れすることになりました。


まだ日も高いけどコスプレのままでお帰りのようです。


内玄関で名残り惜しくキスを交わします。


「ファン。その剣はこの辺で持ち歩くとまずいよ。警察・・・ポリスって言えばわかるよね?につかまっちゃうから何かにくるんで持って行って。」


「ポリス?今まで咎められたことはないが・・・。」


堂々としていれば案外大丈夫なのかな。


「・・・やっぱり帰りたくない。」


ファンがまたキスを求めてきました。


「だってファンは夜から用事があるんでしょう?私もホントは帰したくないけど・・・今度また家に来て。」


家に連れ込んだので、もう家はわかりますよね。


「用事が終わったら来てもいいよ。」


背伸びしてチュッとキスをすると「く~っ。」と口惜しそうにファンが唸りました。


「絶対来るから、他の男を口説くなよ?」


「今までファン以外口説いたことないから!」


私はどんな女なのよ!と少し赤くなってファンの腕(胸は鎧が堅そうなので)に抱きついてグリグリと顔をこすりつけました。


ご近所さんに見られて"外国人のコスプレ男を連れ込んだアリサちゃん"と言われても構いません。


ヒトメボレってこういう状態をいうのでしょう。


ファンが「名残惜しいけど、そろそろ帰る。」とドアを押し開けました。




「・・・ここはどこだ?」




外の景色を見たファンは目を点にして固まっています。


「どこって、幸町(さいわいまち)だけど?」


「サイワイマチ?ドリューズにそんなところあったか?」


「ドリューズ?」


間髪いれずに「"おやっさんの店"があるところ。」とファンが言います。


「"おやっさんの店"ってこの近くじゃない?飲みに行って最後に寄るから場所はよくわからないけど、いっつも歩いて帰ってきてたよ?」


「・・・確かに二人で1/4刻もかからずに歩いてここまで来たな。」


ファンはドアを開けたままの状態で固まって眉根を寄せて難しい顔をしています。


「なぜか素面(しらふ)の時に探しても見つからないんだよね。夜と昼じゃ景色も違って見えるしさ。」


「じゃあ、首都アザンプールはどう行けばいい?寄り合い馬車の場所を教えてもらえるか?」


「アザンプール?寄り合い馬車?」


そんな二人の前の道をタクシーがスピードを出して通りすぎました。


ファンはビクッとなって「リサ!い、いまの化け物は何だ!」と驚きを隠しません。




・・・ずいぶん凝った設定でロールプレイしているのですね(汗)


かなり、かなーり、痛いヒトだと思います。


でも、でも、でもー!


やっぱりストライクゾーン、超ド真ん中なんですってば!






超見切り発車にて亀更新かもしれません。完結を目指します。

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