換わらない日々
痛みとはなんだろうか。痛みとは。
僕は今、殴られている。
いわゆる、フルボッコというやつだ。
右の頬を殴られ、
左の頬を殴られ、
足を蹴られ、
胴を蹴られ、
腕を締め付けられ。
――ここは校舎裏。
屋上の次に人々から忘れられている場所だ。
忘れられているというより、隠蔽されている場所と言った方がふさわしい。
ここに来る人間は不良な人間くらいしかない。
茶色い地面。まばらに生える雑草。そこにはそびえ立つ校舎が暗い陰を落としている。わずかに見える青い空が希望の光のように見える。
腹の中がぐるんと、回るように躍った。
苦しみが喉のあたりまで来る。
そして、紅い液体をわずかに吐き出す。
「あははははははは!」
「あははははははは!」
「あははははははは!」
「あははははははは!」
4人の汚い笑い声が僕を包んだ。烏の濡れ羽色の学ランを着た不良生徒たちがぼろぼろになった僕を見下していた。さながら、自分たちが賢者にでもなったかのように。
「あははは! いい顔してるぜ! 円堂! まるでレイプした後の女みたいだぜ! これだからお前は虐めがいがあるんだよ! ほら! もっと、すごい顔、してみろよ!」
蹴る、蹴る、蹴る。
随分楽しそうに蹴っている。
人間は虐めることがそんなにも好きなのだろうか。
だから戦争とかはいまだになくならないのだろうか。
「さぁ、馬鹿の円堂もこれで懲りたかねぇ。また馬鹿なことしたらちゃんとしごいてやるからよぉ、覚悟しとけよな!」
あははははははは! と甲高い笑い声を出しながらやつらは校舎裏を去っていった。
はは……これでもう終わりかよ。
現代人は本当、骨がないなぁ。
僕はぼろぼろの身体を抱えて立ち上がる。
傷はしばらくすると塞がってくる。不死身の僕にはなんでもない傷だ。
痛みなんてすぐになくなる――。
虐め。
人によっては自殺したくなるほどの――極悪で卑劣な所業。
僕はそれに遭っている。
僕は顔を上げて、校舎のてっぺん、屋上を見た。
そこには蝶のように脆い少女がいた。
夢見ヶ原サツキ――。
確か昨日も僕を屋上から見下げていたなぁ……。
****
放課後。
僕は廊下を俯きながら歩く。
しばらく歩いていると、目の前から見知った少女が訪れる。
少女、夢見ヶ原サツキはいつもの笑い顔で僕を眺めていた。
「こんにちわ」サツキが挨拶する。
「……こんにちわ」
「治くん、ちょっと校舎裏に来てくれない」
「校舎裏……」
僕はその言葉にわずかに驚いた。サツキは一体何を考えているのだろうか。
「ちゃんと来るのよ」
釘を打つようにサツキは言った。
校舎裏へと向かった。
グランドの外れにある校舎裏。そこの暗い道の入り口にサツキが立っていた。
「どうもおひさしぶり、治くん」
随分と短いお久しぶりだ。
「僕に何の用なんだ……」
「私は君に訊きたいことがあるのよ」
そう言って、サツキは校舎裏の暗い空間にいる――4人の男子生徒を指差した。
「ここで問題! あの人たちはどんな人間でしょーか!」
子供の様な明るい声でサツキは言った。
サツキの指の先にある生徒たちは口に白い棒を咥えていた。
それはどう見てもタバコだ。プカプカと煙を吹かしている。
いまどきタバコとは……ずいぶんとダサいことしてるじゃないか。
「せーかいはねぇ。“不良”さんたちでしたぁ!」サツキは言った。
「あの人たちすっごく悪いことしてるのよ! タバコ吹いたり、授業さぼったり、そして虐めをしていたり!」
サツキは朗らかに言った。
「ねぇ治くん、君はあの“不良”たちに虐められているのよねぇ!」
「…………」僕は沈黙を返す。
「ねぇ治くん、虐められるってどういう気持ちなの! 苦しいの? 悲しいの? 憎いの? 恨めしいの? 悔しいの? 楽しいの? 愉しいの?」
「うるさい……」僕はそう答える。
「もし苦しいとか悲しいとか感じていたんなら、治くんが自殺していたのもうなずけるわねぇ。虐めを苦にして飛び降り自殺! ああ、なんか面白いわぁ!」
笑顔でさらりと、そんなえぐいことを言うサツキに僕は少し恐怖を感じた。
「虐めを苦にして自殺って……馬鹿じゃないの! あはは! なーんで虐められてる人はいじめられている自分を殺してしまうのかしら! 殺したきゃ、虐めているやつらを殺せばいいものを!」
サツキは僕を笑顔で見つめていた。
「ねぇ、そう思わない? 治くん」
僕は……
「殺すなんてそんなことできないよ」そう言った。
「へぇぇ。それじゃあ自分が虐められてもいいって訳なの?」
「そうだよ。弱い人間は一生強い人間に虐げられるんだ。それはずっと昔から変わらない人間の摂理だよ」
「へぇぇ」サツキは感心したように言う。
「なんだか他人事みたいに言うのね、治くん。それに弱い人間とはねぇ」サツキが皮肉った口調で言う。
「治くん、君はこの状況をどうにかしたいと思わないの?」サツキは言う。
「たとえば……虐めっ子たちに復讐をするとか。さっきの“虐めていたやつらを殺せ!”みたいな、そういうのしようと思ったことないの?」
サツキの言葉に、僕はため息をついた。
「それじゃあ、やってこようか」僕は言った。
「やってくるって、虐めっ子たちに復讐を?」
「いや、状況を変えに行くだけだ。平和的にね」
「ほぉ……それはそれは、殊勝なことだわ!」サツキが声を上げて言った。
「あの不良たちに、虐めをやめさせてもらうようにお願いしてくるよ」
「へぇぇ。頑張ってね、治くん」
「ああ」
これは僕の気まぐれだった。
どうせ状況なんて、生きることなんてどうでもよかったけど。
でも、何となく、サツキの笑顔につられてというか……。
僕は校舎裏の暗い空間に向かう。そこの、しゃがんでタバコをくゆらせている不良4人組のところへと向かう。
4人のうちの一人、リーダー格でいつも僕を積極的に虐めている『浜田健二』の前へ立った。
浜田健二とその取り巻きは尖った目で僕を睨んだ。
「なんだよ、円堂」野太い声でつぶやく浜田。
僕はその浜田に、笑顔を送り、
「虐めを、やめてもらえませんでしょうか」
そう言った。
痛みとは……一体。
ドスン、ドスン、と衝撃が走る。痛みが走る。
また蹴られている。殴られている。
昼休みに続き、放課後もとはとんだフルコースだ。
「このやろぉ! 気持ちわりぃ顔しやがって!」
人は気にくわないことがあれば、人を殴るのだろうか。いじめるのだろうか。
気に入らないなら、ほっとけばいいものを。人間というものはよくわからないものだ。
「ははは! 気持ちわりぃ顔がさらに気持ち悪くなってらぁ!」
気持ち悪いのはどっちなんだろうか。
いや、僕の方か。断然僕の方だ。
だからこそ、浜田は僕を蹴っているんだ。
何度目かの鼻血が垂れる。血の匂いが漂う。
これだけ血が垂れているなら、誰もかれもこれを虐めだと認めるだろうか。
いや、学校の人間ならもしかしたら認めないのかもしれない。
虐めを隠蔽していた、なんてニュースはよく聞くことだし。学校の人間、教師たちも人間だから、いやなことには首を突っ込みたくないだろう。
そうだ。人間は誰も人間を助けない。
助けるなんて行為は、ただ損をするだけの行為だから……。
そう、誰も……。
「そこで何をやっているんだ!」
突然、向こうから低い声の怒号が聞こえた。
それは生真面目な感じの声。真っ直ぐな正義の声だった。
耳が痛くなるような声だった。
その声の主の足音が、次第に近づいてくる。
顔を上げてみると、そこには……担任の男性教師、鬼山先生がいた。
先生の顔は険しい顔をしていた。鬼のような顔を浮かべていた。
その顔で、4人の不良たちを睨んでいた。
浜田が率いる不良たちは、ばつの悪そうな顔をしていた。
「お前たち……こんなところで、4人がかりで虐めるなんて……」
「い、虐めてるって先生、俺たちは虐めてなんか」
「ほざくなぁ!」声を荒げて言った。
「お前たちには罰を受けてもらうからな! 今すぐ職員室に」
「逃げろぉ!」
その声と共に、不良たちは脱兎のごとく校舎裏を走って逃げていった。
「あ、待て! お前たち!」
先生は叫ぶが、不良たちは遠くへ逃げてしまっていた。
先生はその不良たちを追う前に、まず地面に倒れたぼろ雑巾のような僕に手を差し伸べた。
「大丈夫か円堂! 立てるか!」
混じりけのない、純粋な救済の言葉をこの先生は投げかけた。
こんな人間がいるのか。こいつは人間なのか。
「ほら、しっかりつかまれ、早く保健室に行こう」
先生は僕の手と肩を取って、僕を抱えて持ち上げた。
僕は先生の肩を借り、立ち上がる。
僕はすごく嫌な気分になった。まるで、宇宙空間に一人取り残されたかのような苦しみを抱いた。
なぜ先生がここにいるのか。……まさか、誰かがここに先生を連れてきたのか。
一体誰が……そんなことを。
「大丈夫か、円堂」
こうしちゃいられない。こんなことしていては。
僕はポケットから折りたたまれた銀の刃を展開する。
そして、銀の刃を、手に持ち、それを先生の喉元へと向ける。
先生は刃の光に気づき、ハッと驚く。冷たい汗を噴き出した。
先生の肩をぎゅっとつかむ。ナイフの柄もしっかりと握る。
先生を殺す準備をする。
「動かないでください」僕は言った。
「円堂、お前何を……」
突然の出来事に先生は戸惑っていた。
そりゃ、誰でも助けている人に刃物を向けられたら驚くに決まっているだろう。
「鬼山先生、さっきのこと、黙っててくれますか」
「え、円堂、どういう……」
「いいから聞いてください!」
僕は握る刃を先生の喉元に寄せる。
「先生、あんた死にたくないでしょう? 先生まだ三十路でしょう。家庭もあるし、仕事もあるし、毎日がそれなりに楽しいでしょう? それを放り出したくないでしょう? だったら僕の言うことを聞いてください。これは脅しですよ!」
「え、円堂……お前そこまで浜田たちに追い詰められてるのか。先生に言うなと釘を打たれてるのか……」
「そんなんじゃありませんよ」僕は冷たい口調で言った。
「これは先生には到底理解できない話です。これは僕個人の問題です。だから僕のことなんか放っておいてください」
「だから円堂、おまえ……」
「死にてぇのかお前は!」
悪魔のような声を発した。
その声に、先生はいっそうの恐怖を感じていた。
「僕はいじめられていません。あそこでは何もありませんでした。夢見ヶ原さんが言っていたことはただの勘違いです。そういうことに、しといてくれませんか」
先生は震えていた。
「え……ん、どう」先生は小さな声でつぶやく。
「わかった。お前の言うとおり、そういうことに、しておこう……」
「そうですか、ありがとうございます」僕はそう言って、先生を開放した。
先生は解放された途端、その場にバタンと倒れこんだ。
「先生、くれぐれもここであった真実を言わないでくださいね。言ったら、どうなるか分かってますね?」
「ぁ……ぁぁ……」
さっきまで気丈だった先生は、もはや見る影もない、犬の死体のように地面に伏していた。
これじゃあ、まるで僕が先生を虐めてるみたいだ。
ほんと、世の中って矛盾だらけだ。
鏡を覗いてみる。
もう顔には一本も傷がない。
傷は自然的になくなっていた。不死身である僕は傷の治りも速い。顔は元ののっぺりとした僕の顔へと変わっていた。
僕はトイレを後にして、廊下を歩く。
と――、
誰かに羽交い絞めにされ、
暗い部屋へと誘われた。
そこは先ほどいた男子トイレの中――ではなくて、その隣の女子トイレ。
幸いにもというべきなのか、そこには誰もいない。
後方には僕を捕縛するカマキリのような不審人物がいるのだが。
その不審人物は僕をトイレの個室へと運んでいった。
不審人物と僕は個室の中。不審人物はトイレの鍵をかける。
そして不審人物は僕を蹴った。
また蹴られた。今日は踏んだり蹴ったりだ。僕はタイルの床に倒れこむ。
「あははは! 虐めって面白いわね!」
笑っている、というより嗤っているって感じ。
確かに痛いけど、受けるダメージは浜田の2分の1ぐらいしかない。
笑い声は……夢見ヶ原サツキの声だ。
僕は顔を上げる。
「ほらほら! パンツとか見るんじゃないわよ! 負け犬なら負け犬らしく地面を這ってなさい!」
僕は蹴られ続ける。
僕は何も言わない。
何も抵抗しない。
僕はサツキの方に顔を向けた。
すると、サツキはハッと驚き、蹴り続けていた足を停止させた。
「あ、あ、あんた! 治くん! なんて顔してるのよ!」
僕は笑っていた。嬉しい顔をしていた。
「何を笑っているのよ君! 君まさかマゾなの! 痛められるのが好きなの!」
もし僕がマゾなら、サツキは生粋のサゾだろうと思った。
「君、本当に意味不明よ。キ〇ガイよ。やってること矛盾だらけじゃないの! 虐められてるのに笑ってるなんて、虐められてるのにそれを隠蔽しようとして先生に刃物を向けるなんて……何が何だかわからないじゃないの!」
もっともだ。と僕は思った。
そうだ、僕のやっていることは何もかもおかしい。
でも、僕はこういう風にしか生きられない。
「昨日の昼休みもそうよ! 浜田にパシられてカレーパンを買いに行ったとき、あんたわざと違うの買ってきたでしょう! それで浜田は案の定逆上して君をいつもの校舎裏で虐めたのよ! でも虐められる原因を作ったのはあなたでしょう! あなたがわざと違うものを買ったから浜田が逆上したのよ。これじゃあまるで虐められるためにわざと間違って違うものを買ったみたいじゃないの!」
どうやら、僕の行動はサツキに筒抜けみたいだ。探偵よろしく僕を尾行でもしていたのだろうか。
そうだ……。
僕は昨日、浜田の命令で『虚幌高校自家製カレーパン』を4つ買って来いと言われた。
でも僕はあんぱんを5つ(一つは自分の分)を買ってきた。
なぜわざとあんぱんを買ったか。
それはサツキの言うとおり、虐められるためにそうしたからだ。
僕は、虐められたかったんだ。
一日最低一回は虐められないと、苦しくなってしまう。
虐められたい。誰かに虐められたい。
「虐められたい……」
知らないうちに、声に出してしまっていた。
サツキに、告げてしまった。
「どうして、君は虐められたいの?」サツキが訊く。
「愛され……たいから……」僕は力なく言った。
「愛されたいなら、愛されたらいいじゃないの。なんで虐められようとするのよ」
「“愛される”のは嫌なんだ。僕の場合、誰かに愛されたら、もしくは自分が誰かを愛したら、苦しくなるだけなんだ。僕は不老不死で、時間が止まっているから、誰かと共に生きることができない。……誰かを愛してしまってはいけないんだ。誰かを愛しても、誰かを愛し続けることはできない。僕はずっと高校3年生だから大人になれない。だから、愛する人が大人になったら僕は……その人から離れなきゃならないんだ。その人と一緒に生きることはできない。不老不死の化け物は、誰かを愛しちゃいけないんだよ……」
僕は言い切る。言い切ると、目の上が熱くなっていた。
「そう。たしかに不老不死との恋なんてタブーっぽいもんね」サツキが言う。
そうだ。誰かを愛すれば、誰かを傷つけることになる。
それが不老不死の僕の場合なら相手に極大のダメージを与えることになる。
実際、そんな極大のダメージを与えてしまったことが僕にはあった。
だからもう僕は……誰も愛してはいけない。愛せない。
それはすべての人に対しても同じで、友情でさえも持ってはいけない。
友情も愛することと変わりない。だから……僕はずっと孤独のまま、高校3年の時を続けていた。
「でも、愛することが禁忌だったとしても、治くんは誰かを愛したいとか愛されたいとか思っていたでしょう? 人間なら、絶対そう思うはずだわ」
「ああ。誰かを愛したい気持ちは……どうにも消えなかったよ。ずっと、僕は人恋しかった……」
誰かを愛してはいけない。愛されてはいけない。
だから一人ぼっち。
さびしい。
どうしたらいいのだろうか?
どうしたら、誰かを傷つけることなく愛し合うことができるだろうか。
誰かが傷つかない愛……それは。
「虐待、それなら誰も傷つかない。僕はそう思ったんだ。虐待なら傷つくのは僕だけだ。相手はむしろすっきりとした気分になるんだ。それに相手と別れたって一向に悲しくなることはない。だって相手は自分をゴミみたいに嫌っているんだからね。僕は“虐待”なる愛のために今は生きてるんだよ」
「“虐待”なる愛ねぇ。なんだか哲学だわね。それともただの戯言かしら」サツキは冷たい口調で言う。
「愛情の反対は無関心って偉い人が言ってたわねぇ。それじゃあ虐待とかは決して愛情の反対側とは言えないわねぇ。虐待はむしろ……愛情の突然変異みたいなものかしらね。つまり愛情は虐待で虐待は愛情なのよね! なるほど、たしかに小さい子供に虐待する親って愛情表現からひどいことすることもあるからねぇ。しつけの度が過ぎたりして子供を殴ったり。つまり治くんはそう言う愛情が欲しいわけね」
「ああ……」
「気持ち悪いわね」
きっぱりと刀で切るように言った。
「やっぱり治くん、君マゾだわ。不老不死でマゾだなんて君っておかしすぎるわよ。サンドバッグには適材かもしれないけどねっ!」
僕を思いっきり蹴った。ゴンと壁に背が激突する。
「そんなに虐待なる愛ってものが欲しいなら、私が虐めてあげようかしら、治くん」
それは、
願ってもないことだった。
「僕を……虐めてくれるのか! サツキ!」
「あ、やっぱやめたわ」サツキがきっぱりと言った。
「だってなんか気持ち悪いもん、君。“僕を虐めてくれるのか!” なんて引くわよ君。私、言動はどぎついけどサドってわけじゃないからねぇ」
いや、サツキはどう見てもサドだ。
「虐めて……くれないのか……」
「ええそうよ。虐めるのなんて、めんどくさいもの」
「そうか……」
僕は立ち上がる。
虐めてくれないのは悲しいが、しかしサツキに少しでも嫌われてよかったと思った。
僕が立ち上がると、キーンコーンカーンコーンと鐘の音がした。
そして、ドボルザークの『家路』が流れる。いや、ドボルザークの『新世界より』の編曲だったけ。
「さぁて、治くんの特殊性癖もわかったことだし、帰るとしますか」
「そうだな……」
僕と彼女は二人並んで女子トイレから出ていった。
もし誰か女子トイレにいて僕たちが出てくるところを見られてたら、変な誤解をされそうだなと思った。