後悔の洗濯機
場末のリサイクルショップの隅に、見たこともない機械が置かれていた。それは「過去の後悔」を買い取り、その重さに応じて現金を払い出すという、夢のようなガジェットだった。
店主の老人は、客が持ってきた「後悔」を専用のレンズでスキャンする。
「ほう、これはなかなかの苦味だ。あの時、勇気を出して告白していれば……という後悔ですな」
ガシャンという音と共に、機械から千円札が数枚吐き出された。
ある日、一人の男がやってきた。彼は事業に失敗し、友人を裏切り、自暴自棄になっていた。
「俺の後悔を全部買ってくれ。どうせ、もうやり直せないんだ」
男が機械の前に立つと、センサーが激しく点滅した。彼の人生には、数えきれないほどの過ちと絶望が詰まっていた。
機械は唸りを上げ、見たこともないほどの札束を吐き出した。男は狂喜し、その金で贅沢の限りを尽くした。
しかし、一ヶ月後。男は再び店を訪れた。その顔は、以前にも増して土色だった。
「頼む、買い取った後悔を返してくれ。金は利子をつけて返すから」
店主は不思議そうに尋ねた。
「なぜです? あの重荷が消えて、清々したはずでしょう」
男は震えながら答えた。
「後悔が消えた瞬間、俺は同じ過ちを何度も繰り返すようになった。苦しみがないから、自分が最低なことをしている自覚すら持てないんだ。……俺は、人間じゃなくなっちまったんだよ」
店主は悲しげに首を振った。
「あいにく、買い取った後悔はすぐに再利用されるんです。ほら、あそこの『青春の思い出』という名の香水の、絶妙な隠し味としてね」
男の手元には、もう紙切れにしか見えない札束だけが残されていた。




