第11話 嫉妬 side 延珠
竜帝が怪我をした沙羅のために薬を届けに行ったと付き人の夜起から聞いて、延珠は壁際に置いてあった壺をつかんで床に叩きつけた。
「どうかなさいましたか!?」
部屋の入口を守る女性兵がどんどん、と扉を叩いた。
「何でもないわ。手を滑らせただけ」
延珠がそう言うと、叩打の音は止んだ。
夜起が破片を淡々と片付けていく横で、イライラが収まらない延珠は長椅子のクッションに小刀を刺し、びりびりに引き裂いた。中の羽毛が宙を舞う。
「どうして竜帝様はあの娘の事をあんなに気にするの!?」
衛兵に聞こえないように、吐き捨てるように延珠が言った。
夜起は何も答えなかった。延珠も返答を求めているわけではないのだ。
「忌々しい」
二つ目のクッションに刃が突き立った。いつものたおやかな様子はどこへやら、延珠の顔は醜く歪んでいる。
「どうにかならないの!? あの娘は邪魔だわ!」
「宮廷では専属薬師の権限が強いのです。特に筆頭専属薬師は、竜帝様の御身に関しては冢宰よりも発言力があるとか。白家は代々竜帝様に仕えている一族で、竜帝様も重用しております」
「そんなことは知っているわ! 何とかしなさいと言っているのよ!」
「そうですね……」
手に持った破片の一片をじっと見つめた夜起は、しばし黙考し、そして顔を上げた。
「一つ案がございます。上手くいけば白沙羅を後宮から追い出すことが叶いましょう」
「何がいるの? お父様にお願いするわ」
「では――」
夜起から必要な物と計画を聞いた延珠は、にんまりと笑った。
「そうね。それならあの娘もここにいられなくなるわね」
延珠はさっそく父親に文をしたため始めた。




