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花火  作者: ばっさー
4/4

4.青い希望

8月1日、21時。東京湾の空に二発目の花火が上がった。青い光が水面に反射し、夜空を鮮やかに染めた。その美しさは一瞬にして人々を魅了したが、直後、轟音と共に政府の象徴である海洋庁舎が爆発炎上した。炎がビルを包み込み、黒煙が湾を覆った。戒厳令下の街は再び混乱に陥り、市民たちは窓辺や屋上に集まり、青い花火の意味を囁き合った。「あれは希望だ」「いや、破壊だ」誰もが息を呑んで見守った。

地下のアジトでは、田中が無線機を通じて全国にメッセージを流していた。「これが民意の執行だ。佐藤和彦、あなたの時代は終わりだ」彼女の声は静かだが力強く、闇のネットワークを通じて瞬く間に拡散された。同時に、藤井が提供した機密文書が公開され、佐藤が大企業から裏金を受け取っていた証拠が白日の下に晒された。

文書には、5年前の取引記録やメールのやり取りが詳細に記されており、佐藤の汚職が明白になった瞬間だった。

首相官邸では、佐藤が会議室のモニターを見つめていた。海洋庁舎の炎が映し出され、次いでネットに流出した文書が画面に表示された。彼の顔は青ざめ、額に汗が滲んでいた。「藤井..お前か!」彼は叫び、側近の山田に目を向けた。

「裏切り者を捕える!今すぐだ!」だが、山田は動かなかった。彼の手には赤いピンが握られ、その目は迷いを帯びていた。佐藤は山田の異変に気づき、声を荒げた。「お前までか、山田?

何だそのピンは!」山田は一瞬目を閉じ、やがて静かに答えた。「正義の火です。田中が教えてくれたものです」

その言葉が佐藤の耳に届いた瞬間、官邸のドアが蹴破られ、武装した警官が突入してきた。彼らは佐藤を逮捕する命令を受けていた。機密文書の公開を受け、閣僚の一部が政府を見限り、司法が動き出したのだ。佐藤は抵抗する間もなく手錠をかけられ、連行されていく。彼の目に映ったのは、遠くで青く輝く花火だった。「希望だと...ふざけるな」と呟きながら、彼の時代は終わりを迎えた。

一方、藤井は官邸の別室で静かに待機していた。

彼は田中に協力したことで免責を求め、司法取引に応じるつもりだった。5年前の裏切りを償うため、彼は全てを賭けたのだ。机の上には、赤いピンのペンが置かれていた。それは彼が田中から受け取った最後の贈り物であり、罪悪感の証でもあった。藤井はそれを手に取り、呟いた。

「これでいいんだな、田中」山田は官邸の外へ歩み出て、赤いピンを手に持ったまま立ち去った。彼は最後までどちら側にもつかず、ただ見守る道を選んだ。田中との過去一内閣府で彼女の理想に共感しながらも行動しなかった自分一を振り返り、彼は静かに夜空を見上げた。青い花火が消え、星だけが残っていた。

街では、「まぼろしの民」の勝利を祝う声が広がっていた。若者たちが青いペンキで壁に「希望」と書き、闇のネットワークには感謝のメッセージが溢れた。「冷血宰相は倒れた」「民意が勝った」。

だが、その裏で新たな不安も芽生えていた。政府が崩壊した後、何が待っているのか?秩序は戻るのか、それともさらなる混乱か?

地下のアジトで、田中は仲間たちと青い花火を見上げていた。Kが興奮気味に言った。「やったよ、田中!佐藤は終わりだ!」ハナは慎重に尋ねた。「でも、これからどうするの?私たちの戦いは終わりじゃないよね?」田中は一瞬黙り、やがて呟いた。「そうだね。でも、今日は終わりでいい。青は希望だよ、K。新しい時代が始まる」彼女の目には、5年前の涙と怒りが薄れ、かすかな光が宿っていた。

7月15日の赤い花火は、彼女の復讐の始まりだった。警告として政府に突きつけられたそれは、田中の家族を奪った過去と繋がっていた。

そして8月1日の青い花火は、希望の象徴として民衆に未来を委ねた。藤井の裏切りは贖罪となり、山田の迷いは静かな別れとなった。赤いピンは「正義の火」として燃え尽き、物語は終わりを迎えた。

花火の光が照らしたのは、破滅ではなく、再生だった。だが、その再生がどのような形を取るのかは、まだ誰にも分からない。

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