▽5・3 プランヴェル軍・記憶の中に潜む真実と真の復讐
――ヨシノリの中に流れてくる、プランヴェルの記憶。
≪フフフ……破壊者、貴様がどこに配属されるのかはお見通しだ≫
ハッキングした監視衛星やカメラからヨシノリの位置と配属先を特定。
ヨシノリの到着前に蝦夷基地の司令官を殺害、隠蔽。
蝦夷基地の司令官に成り代わり、自分に都合の良い任務を出す。
その任務とは、ヨシノリの捕獲を目的に待ち伏せした旧整備工場の調査、ヤン将軍殺害を目的とした森空基地の攻略。
全て仕組まれた任務の記憶。
「嗚呼、出来損ないの妹。他人は踏み台にするものよ、例え家族であってもね」
「お姉ちゃん、どうして!」
「私は家の全部が欲しいの。だからあなたは名誉の戦死を遂げてね」
見えてくる、ユリとホオズキ。強欲の策略と歪まされる者。来風姉妹の記憶。
「なるほど、プランヴェル軍の協力か」
≪あぁ、計画の詳細は見たかな?≫
「見させてもらった。我々が全人類を支配し、莫大な富を手に出来る新世界。まだ戦時中だが、是非とも計画に協力したいな」
≪協力感謝する。これで我々は神に等しい存在になれるだろう≫
裏舞台に潜む者たち。プランヴェルと協力者の会話の記憶。
――次々に流れてくる記憶。
その中に父親の仇、ヤン・ウェイライン将軍の姿もあった。
≪ヤン・ウェイライン将軍だな?≫
次の記憶はプランヴェルの声がヤン将軍に話しかける様子。
「プランヴェル軍……対プランヴェル戦術群から外された私を笑いに来たのかね?」
≪いや、私はどん底に落ちた貴様を救うために来た。そのために一つ協力してほしい≫
「……協力?」
≪単刀直入に言おう。貴様の代わりに戦術群に入ったタキ・サエアキを殺害したい。私は彼が憎いのだ。貴様にとっても憎いだろう?≫
父親の名前が出た。その先には、真実が見えてくる。
「憎い……! 私が得るはずだった手柄を横取りした、奴が憎い!」
≪では、協力してくれるな?≫
「あぁ……協力してやるとも! 私のこの面子に懸けて!」
≪フフフ……協力感謝する≫
これが見えてきた真実。
プランヴェルとヤン将軍は協力して、タキ・サエアキの殺害を計画していた。
「テメェ……ッ!」
ヤン将軍を殺してから、ヨシノリはプランヴェルを父親が死ぬ間接的な原因を作っただけの敵だと思っていた。
そうではなかった。噓であった。
プランヴェルも直接的に関係していた。それどころかプランヴェルが主犯であった。
――そこに更なる真実を映す記憶が来る。
≪私は街と研究所を襲撃、その隙にタキ・サエアキの試作兵器の回収及びデータや設計図の回収を行う。回収後は私の襲撃を口実に戦術核の発射を頼みたい。それで全ての証拠は消え、タキ・サエアキは墓の下に入るだろう≫
「手順は分かった。データ類はこちらが用意したサーバーにアップロードしろ、その方が早く済む」
≪了解した。では計画を実行に移すとしよう≫
全てはプランヴェルが計画していた。
それも合理的な敵意を抱き、私怨と私欲に駆られた黒い動機によってのもの。
ヨシノリにとっては到底許せない。父親の努力と成果と命を奪われたのも、その真実に黒く歪んだ理不尽な部分も含めて。
≪将軍、やってくれたな? なぜ私が戦術核を撃ったことになっているのだ≫
「これは新世界へ旅立つ計画の意向だよ。つまり貴様は計画から追放されたのだ」
≪なるほど。このまま私を潰し、乗っ取る気か≫
「私は君に救われた身だ。その礼に立案者が追い出される様を笑ってやろう」
≪ふん……貴様たち、覚えていろよ≫
裏切りと〝計画〟奪還の決意。
ヤン将軍の嘲笑いにプランヴェルが怒りを表すところで、その記憶は過ぎ去る。
「ッッ……!」
ヨシノリは真実を知って怒りに染まる。記憶の中のプランヴェル以上に。
「ヤン将軍が父さんを殺したとか言っておいて……お前もだったのかぁ!」
もはや人ならぬ者に相応しい鬼の形相となって、その怒りに染まる感情をプランヴェルの記憶の先にある本心へ向ける。
「見せろ、プランヴェル! お前の本心を!」
「ぐぁ……あ……ぁ」
怒りに身を任せ、プランヴェルの心に強引に入り込んでいく。
心の中に見えるもの。彼女の本心。
≪――タキ・ヨシノリの力……一騎当千のその力があれば、計画を奪還出来る≫
聞こえてくる。
≪いや、計画の奪還だけじゃない。家の再興も、全人類の支配も出来る!≫
高揚と微笑み。成し遂げたい夢に浸る感情。
≪この私がこの世に新世界の秩序を生み出す!≫
プランヴェルの欲する未来。
突然変異体の力で既存の人類文明を破壊する世紀末。
そこに築かれる新しい世界。
ヨシノリにも見えてくる。
≪そしてこの世界の神となり、我が家の名をこの世に再誕させるのだ!≫
全ての人類を従える社会の妄想。
世界の管理者という神になったプランヴェルを、全ての人類が崇拝する光景。
「お前は神にはならないッ!」
本心を見た今、脳に触れていた拳を引く。
「その前に俺が殺すからなぁッ!」
「や、やめ――」
制止など耳にせず、もう怒りは止まらない。
風を切ったヨシノリの拳はプランヴェルの顔面に直撃。
ユリに似た美少女な顔も、頭蓋骨も、脳も全て殴り壊した。
≪アあぁぁァァァァあぁぁぁッッ!≫
殴り壊れされた痛み。全ての意識に広がっていく死ぬほどの苦痛。
プランヴェルの悲鳴が艦内に響き渡る。
その末に制御を失ったように母艦が一気に揺れ、急激な重力の重みが掛かった。
「く……っ! 脱出しないと!」
プランヴェルとの意識の繋がりはもうない。つまり突然変異体となったプランヴェルは殺せたということ。これで本心に隠した企みを遅らせることが出来る。
後はユリとノアと合流して全員で脱出するのみ。
ヨシノリはすぐにラブラブ部屋という名の調整室の自動扉を殴り壊し、二人のいる格納庫へ走る。
「無事でいてくれ、少尉! 軍曹!」
プランヴェルに反抗した今、ユリとノアが殺されるか、もしくは身体的苦痛を与えられる可能性は高い。
静寂に包まれた通路を、大きい足音を立てて走っていく。




