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破壊者_全ての敵を破壊せし復讐/デストロイヤー_ペネトレイト・ヴェンジェンス  作者: D-delta
第一章 世界の裏と奥底の真実に隠れた憎き仇敵、復讐すべし

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▽4・4 現体制派・新世界の秩序

 再会。ホオズキという姉の存在を認識した今、ユリの表情は憎悪に変わる。


「会うのは私が政党の議員に(とつ)いで、議員の一員になった以来かしらね?」

「お姉ちゃん、政治家の妻が軍の重要施設に何用なの?」

「あらやだ。軍隊で人の足を引っ張ってばかりの不出来な妹には、私がここにいる意味を察せなかったかしら?」


 姉のバカにした物言い。

 妹のユリは「それはお姉ちゃんが!」と語気を強くして反論を返す。


「さぁ、私は知らなーい。あなたが勝手に志願して苦しんだだけでしょ?」

「全部仕組んでおいて今更!」

「なんのことか知らないもん。でも妹の負け犬っぷりが耳に心地いいのは事実だわ」


 姉の嘲笑と妹の憎悪の光景。


「最低な人だ、この人」


 ヨシノリは小声で呟く。

 ホオズキはユリから聞いた通りの最悪な人物。その目は敵意が強くなる。


「ライカゼ議員、我々を呼び出したからには早く本題に入ってください」


 姉妹喧嘩が起きる一歩手前。事態が大きくなる前に〝計画〟を知る一人であるノアが間に入る。


「こほん、それもそうね。妹と口喧嘩をしている暇なんてなかったわ」


 ようやく本題に入り始める。


「じゃあ用件を言うわ。ユリ、それとタキ・ヨシノリ。二人には私と来てもらうわ」

「お姉ちゃん、話が見えないんだけど」

「一緒に来てって言ってんのよ! 分かる?」

「理由は?」

「理由? そんなに知りたい? じゃあ全部話してあげるわよ。あんたら全員のバカな頭でも分かりやすくね!」

「早く話して」


 姉のバカにした物言い、言いなりにならない妹。姉妹揃って頭に血が上ってくる。

 徐々に冷静さを欠きつつあり、ホオズキは「分かってるわよ!」と応じた。


「私はね、来風家に戻りたいのよ!」

「ふぅーん……追い出されたの?」

「うるさいわねぇ! 私のやってきたことがお父様にバレて、家を追い出されたっていう説明が事細かに必要!? とにかく、あんたが家に戻ってこなきゃ私も来風家に戻れないんだってば!」


 まずはユリを求める理由。

 家を追い出されたホオズキにとって、ユリは家に戻るための切符(きっぷ)であった。


「私を求める理由は分かった。じゃあヨシノリ君を求める理由は?」

「私にも聞かせてほしいな、要人様。タキ一等兵とノア軍曹がなぜ必要なのか」


 後はヨシノリを求める理由。ユリもジャン少将も真剣に聞きたがる。


「はぁ……タキ・ヨシノリは〝計画〟に必要なの。分かるでしょ、ノア軍曹?」

「……はい、ライカゼ議員」


 ホオズキは〝計画〟を知るノアを名指し、その正体をバラすも同然の発言をする。


「だったら計画の詳細を言うのはノア軍曹に任せるわ。私、部外者や決戦兵器の前で計画を話してペナルティ受けたくないから」

「ノア軍曹……あなた一体……?」


 ユリにとっては知らない事情。

 ノアがホオズキ側にいる人間という急展開は驚くしかない。


「ユリ少尉、私はライカゼ議員の言う〝計画〟に関わる一人です。詳細説明を任されたので全員にご説明します」


 事情を察しているヨシノリは沈黙。ノアの次の言葉を待つ。


「我々の計画。それは既存の世界秩序を全て、我々の色で塗り替えることです」


 そしてノアの口から出てきたのは、裏に潜む者たちのとてつもなく大きい計画。


「なるほど? クーデターか」

「そんな、ノア軍曹……この内戦が世界を乗っ取る布石みたいなことを言って……」


 ノアが言っていた、ヨシノリに新世界を背負わせるという意味。

 その新世界とは世界を乗っ取った後の世界を示す。


「ジャン司令とユリ少尉のご想像通りです。人類連合軍を分裂させ、内戦を起こさせたのはこの計画のため。既に準備は始まっています」

「じゃあ軍が分裂する原因になったニュースは事前の打ち合わせで?」

「そうです、ユリ少尉。ですが、ニュース程度で反乱は起きません。だから軍に潜む計画の協力者に反乱を大きく扇動してもらいました」


 ニュースも反乱軍の結成も全て〝計画〟の内。

 その上、軍内部にこのクーデター同然の計画に参加する者がいる。


「ではなぜ、反乱軍は協力しなければ民間人も虐殺する過激な行いを? あれでは民衆の支持を得られないはずです」


 そこでユリは質問する。

 腐った現体制を打破すると目標を掲げているが、実際は民間人の虐殺を行う過激派。

 そんな過激派な反乱軍に積極的に付いていく民衆は少ないだろう。


「反乱軍は悪役なんですよ。計画を悟られないために用意された存在、邪魔になる勢力を堂々と正面から潰すための駒なんです」


 だが、それが反乱軍に与えられた役目であった。


「悪役だなんて……それではまるで、この内戦が自作自演みたいじゃ……」

「実際そうですよ、ユリ少尉」


 ユリの思ったことは的中していた。

 過激派として暴れる反乱軍は、いわゆる反乱軍という皮を被った〝計画〟における暗殺部隊のようなものだった。


「悪役か。だからあんなに過激という訳か……」


 ジャン少将は納得する。

 仮に反乱軍が〝計画〟にとっての邪魔者を排除しても、過激派の反乱軍がやったとして裏に潜む〝計画〟に関わる者は疑われない。


「じゃあ反乱軍の結成も計画の内なら、反乱軍には指導者クラスの協力者が、正規軍には階級の高い協力者がいるはずです。それなら両軍次第で、内戦はすぐ終わるのでは?」


 噓で固められた自作自演の内戦。

 お互いに〝計画〟で通じ合っているなら、いつでも内戦は終わらせられるだろう。


「はい、上位者たちの意見が合うなら好きなタイミングで終戦に出来ます。終戦になる時はきっとこの『ヘキサ』を乗っ取った後になるでしょうが……」


 ユリの問いに、ノアは正解であることを示す。

 そこでホオズキが「良い計画だとは思わない?」と口を挟み始める。


「この計画が順調に進めば全ての人間を奴隷に出来るわ。大量の労働力も手に入るし、好きなように他人を使役出来る。あなたも計画に賛同する? 見返りは大きいわよ」


 要約すれば一部の人間が神と同然の存在となり、その他大勢は神同然の人間に隷属する新世界。

 壮大で欲望に満ち溢れた企み。

 しかしユリの中に一つ疑問が生まれる。


「こんな下らない計画、私はやらない……それに、どれだけ戦力を集めても人類連合軍の総力には敵わないと思うけど」


 その疑問は全世界を乗っ取る際の戦力的な問題。


「ふん、だからタキ・ヨシノリ一等兵が必要なの」


 そして戦力的な問題を解決出来る回答はヨシノリだった。


「ノア軍曹、説明」

「本人がいる前ですが、本当に言って良いのですね?」

「ペナルティを受けるのは私じゃないもの。別に構わないわよ」

「そういう問題ではないですが……まぁいいでしょう」


 ヨシノリを求める理由が次第に見えてくる。


「タキ・ヨシノリという個体。それは計画における決戦兵器です」


 ヨシノリを求める理由。ノアの口から説明が始まる。


「ヨシノリ君が決戦兵器?」

「ユリ少尉も知っているでしょう、ヨシノリの力。その一騎当千の力を(もっ)てして邪魔者の殲滅をする。例え人類連合軍の全戦力、プランヴェル軍だとしても、その全てを殲滅してもらう。そして新しい秩序の番人にさせるんです、ヨシノリを……」


 これがヨシノリに新世界を背負わせるという言葉の意味。

 これがヨシノリを求める理由。


「敵を全部殺して、新しい秩序の番人ですか……俺が……」

「ヨシノリ、お前は操り人形だった。真実を知らず、我々の言葉に騙され、人類連合軍とプランヴェル軍を打ち倒す切り札。計画にとって都合の良い殺人マシーンなんだ」


 ノアが話した真実が示すのは、ヨシノリを〝計画〟に都合良く使える道具にしたかったということ。

 こうして真実を聞かなければ、知らず知らずに作戦に従って戦い続けただろう。


「だけど私はお前に触れてきて確信した。お前は人間だ、誰かの切り札でも殺人マシーンでもない!」


 しかしノアは姉弟にも等しい仲のヨシノリを想う。


「ちょっと、なに言っているの? そいつは私たちの決戦兵器よ?」

「違う! 兵器なんかじゃない、私の大切な教え子だ!」


 ここに来て状況が一転。

 ホオズキのボディガードたちは咄嗟に拳銃を取り出し、ノアに裏切りの前兆ありとして銃口を向けた。


「なにを急に! 教官やっただけの下っ端が私に口出しして! 気に入らないわ、今すぐここでペナルティを受けさせてやる!」


 ペナルティという名の死。

 今まさにノアに拳銃の引き金を引こうとしている。

 ヨシノリにとって両親と同じくらい大切な人がまた殺されてしまう。


「させない! ノア軍曹は殺させないぞ!」


 だからヨシノリはノアに向いた全ての銃口の前に立ちふさがる。


「邪魔をするんじゃない、タキ・ヨシノリ! そこを退きなさい!」

「嫌だね! お前たちを殺してでも、絶対にノア軍曹を殺させるもんか!」


 もう大切な人は失いたくない。絶対に殺させる訳にいかない。

 ヨシノリは殺人も覚悟して退かず、ホオズキのボディガードたちは銃口を下げない。


「早く退きなさいっていうの! 計画への裏切りは絶対に許さないし、あんたを言葉一つで動かせる人間は死んだ方がいい!」

「お前たちの計画も都合も知ったことじゃない! 俺の大切な人を殺すってんなら、計画も全部ぶっ壊してやる!」


 最も〝計画〟に重要な存在が〝計画〟に刃向かう。

 ここで発砲すればヨシノリと敵対することになって〝計画〟の破綻は確定。ペナルティがホオズキに下る。

 だから引き金は引かれず、どちらも意見を曲げないで矛先を向け合う。

 緊張した状況が続く。


「よくも計画を壊してやるだなんて言えたわね! あんたが計画に必要なかったら、この世界にあんたはいないんだから! なんでプランヴェルはこんな奴を――」


 ホオズキがそう言いかけた時、突然の爆発音と揺れが次の言葉を遮る。


「なに? なんの爆発!?」


 爆発がドンッドンッと司令室に近付いてくる。

 突然のことにホオズキも含めて全員が驚くしかない。


「全員伏せろ!」


 ジャン少将は叫び、自身のデスクに隠れるように伏せた。

 続いてユリも伏せて、ヨシノリはノアを庇うように一緒に伏せた。


「ライカゼ議員も伏せて!」

「ちょっと、どうなって――」


 そして爆発がこの司令室に訪れる。

 爆発で壁が吹き飛び、室内に高速で飛び散る破片は、ホオズキの盾となるボディガードたちに直撃していく。

 それに対して伏せていたユリ、ノアとヨシノリ、ジャン少将は無事。


「こほっ、こほっ! なにが起きてんのよ……!」


 死体となったボディガードたちの下敷きになった、ホオズキもまた無事だ。


「ヨシノリ君、ノア軍曹、今の内です! 逃げましょう!」

「はい! ノア軍曹、一緒に!」

「あぁ、一緒に行こう!」


 この場に銃口を向けてくる人間はいない。三人は司令室から逃げていく。


「あんたたち、ちょっと待ちなさい!」


 もちろんヨシノリたち三人がホオズキの言葉に耳を傾けることはない。


「クソ! ジャン司令、ユリとタキ・ヨシノリを捕まえて!」

「残念ながら私の管轄(かんかつ)(がい)だ。ご自分で捕まえては?」


 ジャン少将は〝計画〟が破綻する滑稽(こっけい)な状況を見ながら笑みを浮かべる。


「あんた、私が誰だか分かってんの!? あんたの家族を殺すわよ!」

「また脅迫か? ハイロウ要塞の総力を敵に回して死にたいなら、もう一度どうぞ」


 笑みは浮かべても冗談は言わない。

 デスクから取り出した拳銃を握って、ホオズキの殺害は本気であることをジャン少将は示す。


「……だったら、私に足を寄越しなさい!」

「では要人様には『ベースドアーマー』を貸与(たいよ)しよう。ユリ少尉らの機体がある第二格納庫の機体を使っていい。さっさと出て行ってくれ」

「クソが! これが終わったら覚悟しておきなさい!」


 ここで死にたくないホオズキは脅迫から自分で追いかけることに変更。

 ヨシノリたち三人を追いかけて司令室から出ていく。

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