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破壊者_全ての敵を破壊せし復讐/デストロイヤー_ペネトレイト・ヴェンジェンス  作者: D-delta
第一章 世界の裏と奥底の真実に隠れた憎き仇敵、復讐すべし
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▽3・8 プランヴェル軍・復讐

 敵の一撃から始まった戦闘。

 ヨシノリとプランヴェルは、市街地を模した試験場の中へと飛び降りる。

 その最中、建物群の中からスラスターの推力もなしに浮き上がる灰色の巨人――背部と肩部に武装を施した人型兵器の姿がヨシノリの目に映った。


「あれはあの時の……『ベウ・マサクレイ』に似ている」


 思い出す。

 父親と共に研究所を逃げ出した時に見た、街を焼き尽くしていく黒い一つ目の巨人――人類連合軍が『ベウ・マサクレイ』と呼称する、プランヴェルの兵器。

 そして似ている。

 機体の大きさ、スラスターの有無と武装の違い、人間の如く一対の目を持つ細部の違いはあっても、その姿は『ベウ・マサクレイ』を思い出すほどに似ている。


≪今のを見たか、タキ一等兵≫

「見えた、あの機体が将軍の試作兵器だな?」

≪そうだ。あの10m級の人型兵器こそが奴の試作兵器。貴様の父であるタキ・サエアキが私の技術を取り入れて開発した身体(しんたい)拡張(かくちょう)システム搭載人型機動兵器、そのコピー機体『(しん)(りゅう)』だ。奴はあれに乗っている≫


 ヨシノリと二機のプランヴェルは市街地のビル群の中に入り込み、その身を周りの高い建物で隠す。


「どこに隠れおった、サエアキの子供!」


 ヤン将軍が乗る試作兵器――『真龍』が上空から一対の目を光らせ、隠れたヨシノリとプランヴェルを探している。


「どういうことだ? あの機体が父さんの作ったものなら、なぜ将軍が乗っている!?」


 自分との時間すら削って父親が頑張って作った機体。

 それなのに父親の命を奪ったヤン将軍が我が物顔で乗っている。

 ヨシノリの怒りは増す。


≪良いタイミングだ、教えてやろう≫


 怒りの疑問に答えるプランヴェル。言葉は続いて――


≪奴はタキ・サエアキに対しての復讐と自身の権益のため、核兵器を使って研究の妨害と同時に研究物の奪取をした。そして既得権益の拡大のために作られたのが、あの『真龍』という訳なのだよ≫


 真実が告げられる。


「……っ! 父さんの努力まで奪って、あんなのものを作ったのか!」


 父親の命と努力を踏みにじられ、道具のように扱われた真実。

 もはやプランヴェルの言う真実に矛盾があろうとなかろうと、どうでも良くなるほどに怒りが頂点に達して溢れ出る激情が理性を塗り潰す。


「タキ・ヨシノリ一等兵! どこだ、その姿を現せ!」

「ここだ、ヤン将軍!」


 限界出力で跳躍。建ち並ぶビルの屋上に着地し、ヤン将軍に応えるように姿を現す。


「出てきたか!」

「そっちの望みのままにな!」


 堂々と現れたヨシノリに反応して『真龍』の一対の目が、その姿を見つけた。

 お互いに矛先を向け合う。ヨシノリは30mmチェーンガンを、ヤン将軍は『真龍』の背部に搭載された140mm滑腔砲を。

 両者の機体にどれだけの性能差があろうとも、両者にある殺意は変わらない。


「では、私の望みのままに死にたまえ!」

「誰が!」


 そこに手加減も容赦もなく、140mm滑腔砲の一撃が放たれる。

 多脚戦車の主砲と同じ火力。

 破壊されるビルの屋上から粉塵(ふんじん)と破片が舞い、人の臓物は舞わない。


「なにぃ!?」


 ヨシノリの機体が粉塵と破片の中から『真龍』に向かって飛び出す。これにヤン将軍は反応出来ず、瞬く間に発射されたマイクロミサイルの爆発で視界を奪われた。

 両者の距離は至近距離。

 爆煙が晴れて血肉の付いたフレイムパイルがヤン将軍の目に映る。

 プランヴェル軍の技術を使った『真龍』とて『ベースドアーマー』のフレイムパイルを貫かれてしまえば、あっという間に焼死させられるだろう。


小癪(こしゃく)な、サエアキの子供っ!」


 ヤン将軍はそんな簡単に想像出来る死に焦り、全力で後ろへ下がった。

 焦りは失敗を招く。視界を遮られた状態で距離を取ろうとした『真龍』は背面から試験場の壁に激突した。


「なんだ、壁か! ええい!」


 その激突が招くのは140mm滑腔砲の損失。機体と壁に押し潰されて壊れてしまう。


「一つ壊れた程度など……まだ武装はあるのだよ!」


 ヤン将軍は壊れた背部の140mm滑腔砲を切り離す。

『真龍』に残る武装は右肩部のミサイルポッドと左肩部の30mmガトリングの二つ。

 ここまで戦いらしい戦いになっていないが、その性能の差を見せつけるが如くヤン将軍はヨシノリの機体が追い付けないほどの速度でかなりの距離を離していた。

 そのままヨシノリの攻撃が届かない内に、ヤン将軍は逃げ回り始める。


≪苦戦しているようだな、ヤン・ウェイライン将軍?≫

「プランヴェルか!」


 試験場のどこかで隠れているプランヴェルの通信がヤン将軍に届く。


≪兵器の性能差で戦力的に圧倒的な有利だった私を敗戦に追い込んだ人物――タキ・サエアキが(のこ)した最新兵器を使って『ベースドアーマー』程度に苦戦とはなぁ≫


「黙れ! 私に加担する気があるのなら、今すぐに援護しろ!」


≪〝核兵器を使った悪者〟と、レッテル貼りを私にしておいて、よく言う。私の尻がそこまで軽いと思われているとは……これでも私は一途な乙女なんだよ≫


「そんなことはどうでも良い! その気がないなら話しかけるな!」


≪それならば黙るとしよう。後何分かの命、しっかり生きたまえよ。フフフ……≫


 それだけ言い残して、プランヴェルからの通信が消える。


「サエアキから設計図を奪って作った機体、プランヴェルの技術で作られた機体だ、この機体が『ベースドアーマー』如きに劣るはずは……っ!?」


 プランヴェルの挑発じみた通信に気を取られた途端、チェーンガンが『真龍』の右肩部に直撃。右肩部に搭載されたミサイルポッドが故障し、切り離しを余儀(よぎ)なくされる。

 ヨシノリの姿は見えず、武装を減らされていくだけの一方的な戦い。

『真龍』に残る武装は後一つ。左肩部の30mmガトリングのみだ。


「私は……私こそが世界を支える人間になるのだ! タキ一等兵、貴様の父のような成り上がりが私の上を行くことなど許され――うぉ!?」


 建物と建物の間を一瞬通る影。ヤン将軍がそれを(とら)えた瞬間、正面から数発、チェーンガンが『真龍』の左肩部に直撃する。


「私を(なぶ)り殺しにする気か……!?」


 30mmガトリングの弾倉部分に直撃したが、保護装甲で止められた。

 残る後一つの武装、ヤン将軍とて撃たずして終わる訳ではない。


「ふざけるな……サエアキは死んでも、貴様は死ななかった! 今まで〝計画〟に生かされてきた恩を仇で返す気か!?」


『真龍』の30mmガトリングの回転。それと共に火を噴かせ、レーザーのように撃ち出される弾幕が無闇にビル群を穴だらけにしていく。

 その威力は大きい。当たれば陸上戦闘仕様の重装甲でもビル群のように穴だらけだ。


「そんな恩を仇で返す、サエアキの最後の血筋(ちすじ)は!」


 30mmガトリングの発射は執拗(しつよう)に続き、発射数は千発を超過。


「今日で根絶やしにしてやる!」


 幾つかの建物が轟音を立てて崩れる。

 ガトリングに当たらなくても倒壊に巻き込まれてしまえば『ベースドアーマー』だとしても耐えることは出来ない。


「恩を仇で返したことを後悔したまえ!」


 ヤン将軍は自身の復讐のままに撃ち続ける。

 貫いて、四散させて、粉砕して、ヨシノリの姿を確認出来なくても破壊を繰り返す。

 そうしてビル群の一部を倒壊させる光景が出来上がる。


「サエアキの血筋であったことを恨みたまえ!」


 その光景の中でヨシノリが動いている様子はなく、反撃する気配もない。

 ヨシノリからもプランヴェルからも通信に届く声は一つもなくなった。


「人の皮を被った化け物の貴様は、この世に生まれるべきではなかったのだ」


 ヨシノリの死の確信。

 ビルの倒壊に巻き込まれたか、数を撃って当たったのか。

 どちらにしてもヨシノリの死を確信して疑わず、攻撃の手を止める。


「さぁ私は勝ったぞ、プランヴェル。黙っていないで声を出したまえ」


 ヤン将軍は勝ち誇ってプランヴェルに呼びかける。


≪フフフ……流石の将軍様、よく数分も耐えている≫


 ヤン将軍の呼びかけに応じ、プランヴェルの称賛めいた声が一つ。


「なにを言っているのだね? 私は耐えるどころか、サエアキの血筋に勝利したのだぞ」

≪相変わらず勝利に盲目だな、将軍。敵ながら感謝するほど、その姿勢に昔から助かっているよ。記念に、今日を最後に感謝の印を与えよう≫


 しかし称賛は一転して皮肉に変わり、人型の影が死角から飛び出す。


「は……っ!?」


 視界外からヤン将軍を襲う衝撃。機体の上に乗り上げる人型の影。

 ヤン将軍が目前の影を捉えた時、そこにはヨシノリの『ベースドアーマー』がいた。


≪復讐を成就(じょうじゅ)する時だ、タキ一等兵。機体の首元に最後の一撃を刺し込み、ウェイライン将軍の息の根を止めてやれ≫


 プランヴェルに言われるまま復讐を実行。

 ヨシノリは無言でフレイムパイルの先を『真龍』の首元、その直下にあるコックピットへと向ける。


≪これが私からの感謝の印だよ、ヤン・ウェイライン将軍! フハハハハハ!≫

「ま、待て!」


 ヨシノリは躊躇いも容赦もなく、フレイムパイルの杭を貫通させる。

 (もろ)い首元、そこからコックピットに入り込み、アーマースーツに身を包んで座っているヤン将軍の目の前に火炎放射器を内蔵した杭がやって来る。


「やめろ……!」


 杭の先端から燃料が噴き出される。

 全火力を叩き込むつもりでコックピットの中をたっぷり濡らし、アーマースーツで身を包むヤン将軍も濡らす。


「やめろぉぉぉぉ!」


 そしてありったけの炎が噴き出されて燃料に一斉に引火。

 密閉された狭いコックピット内部を復讐の業火で満たした。


「あぁあ! ああああぁぁぁ!」


 業火と共に聞こえてくる、ヤン将軍の断末魔。

『真龍』は力を失い、試験場の地に落ちて倒れる。

 機体は完全に沈黙。凄惨な断末魔は徐々に薄れて途絶えた。

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