▽0・0 破壊者(デストロイヤー)の誕生
色んな応募で一次落ちしまくった作品の供養&ゆっくり最後まで描き切るために連載開始
こちらは最初の一章以降はすごーくゆっくり連載するので、お付き合いしてくれると嬉しいです
一つの遠い記憶。
幼い目に映る平和な世界。
写真だけの母親。
現実にいる父親。
手招き、世話と触れ合い。
時間が来れば父親と共に外へ出る。
揺れる車の窓から見える空は青く、街並みが見える。
そんないつもの光景を見ながら幼い口が父親と話す。
ドライブ中の親子の楽しいひと時。
そしていつもの場所――研究所へと行く。
そこは白衣や作業着、それぞれの私服を着た大人たちのいる場所。
到着すると、父親はその目に使命感を持って離れていく。
もっと話したい、遊びたい、そんな幼い感情を抑えて父親の忙しい姿を見つめる。
過ぎていく時間。
朝から昼へと、昼から夕方へと、夕方から夜へと、昇っていた太陽は沈む。
父親は来ない。代わりに父親とよく話している女性が何度か来て世話をしてくれる。
今日も父親は忙しい。その忙しさのせいで遊ぶことも、話すことも出来ない。
憂鬱な気持ちで窓の外を見る。
その時、夜空から街へと光が走った。
床を揺らす衝撃。
炎と煙が街から立ち昇り、次に走った光が生み出す衝撃と爆発は窓を割った。
「ダメ!」
「……っ!」
覆い被さってくる女性。
それまで世話をしてくれていた女性には窓ガラスが突き刺さり、動かなくなった。
死んだ。
幼い手で揺さぶっても起きることはない。どうにも出来ない。
幼い目は破壊された窓の外を見る。
視界にあったのは焼き尽くされた世界。
焼ける街の中に赤い一つ目の黒い機械たちが光を走らせる。
研究所内に実弾の銃声すらも響く。
「お父さん!」
「こっちだ、逃げよう!」
攻撃、爆発、悲鳴、焼けながら助けを求める人たち。
父親に連れられ、研究所から出た先にある光景は地獄。
父親と共に十歳にも満たない幼い足で、光が走る中を逃げる。
逃げている背後で命を奪う音がひたすらに響き続ける。
「はぁ……はぁ……!」
「こっちに敵はいない! 後少し、おいで!」
敵を避ける父親の後を追い、街から出ようとした時、空に死の光が満ちた。
閃光と共にキノコの如く巨大な火球が空に立ち昇る。
全員に死がやってくる、その時――
「ヨシノリッ!」
父親は幼子を守る。
直後の体を襲う衝撃と肌を焼く熱量。
父親と共に吹き飛ばされ、焼かれて、死と共に目を閉じる。
それが彼の幼い頃の記憶。
≪タキ・ヨシノリ(瀧 義徳)訓練生≫
人ではない声の敵に名を言われた者の記憶。
幼い記憶から意識を戻し、十七歳のヨシノリは敵に視線を向ける。
「わざわざ来てくれたのか、向こうから」
地球に似た異星の空、分厚い壁に囲まれた遮蔽物のない演習場。
空から降りてくる赤い一つ目と黒い装甲。
「上空からプランヴェル軍残党が演習場に侵入! 訓練は中止!」
「教官機は全機武装して迎撃に出ろ! タキ訓練生を狙わせるな!」
演習場に乱入した黒い敵――プランヴェル軍。
ある日突如として現れ、無言の武力で宣戦布告してきた人類共通の敵。
人類が二十年も相手にし続けた少数精鋭の機械軍団。苦戦の末に勝利した相手。
≪破壊者と同じ名の者。あの核攻撃から生き延びた生存者≫
その残党が運用する機体――3mという大きさのFデバイス搭載型汎用パワードスーツ『ベースドアーマー』――敵に鹵獲されて黒く塗り直された陸上戦闘仕様。
頭部バイザーの内側に潜む赤い一つ目がヨシノリを見る。
≪ようやく会えた≫
それが五機。右腕部の未知のエネルギー兵器から光を走らせ、周辺施設を破壊しながら演習場に舞い降りる。
「ようやく会えた」
そんな敵に対して訓練生であるヨシノリの方はたったの一人。
敵と同じ陸上戦闘仕様に換装されたモスグリーン色の『ベースドアーマー』に搭乗しているが、武装は右腕部の30mmチェーンガンのみ。しかも模擬戦用の非殺傷のペイント弾。
「父さんの仇……!」
武装の差に加えて、単純な数だけでも五倍の戦力差。
だが、ヨシノリは逃げない。
無差別に命を奪い、母親を遺影だけの存在にした敵。父親を核攻撃で惨殺した仇敵が目の前にいるのだから。
「討ち取らせてもらうぞ、プランヴェル軍!」
怒りと復讐心を抱いて待ち遠しかった復讐の一歩目。
≪討ち取らせてもらおう、ここで殺せるのなら!≫
訓練を通り越した初の実戦、復讐が始まる。
章の最後に、その章に登場した兵器の設定資料集を書きます
細かい兵器の設定が好きな方はそちらを見てください