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おばちゃん、魔王城へ突撃!?

街外れの露店がずらりと並ぶ一角で、幸子は色とりどりの野菜や道具を眺めていた。

そこに、ちょっと小太りな体型に丸いメガネ、口ひげを生やした商人の男がふらりと近づく。

「へっへっへ。 おばちゃん、どないです? 今日もええもん揃ってまっせ。」

「うわ、マーヴィンさんやん。 今日は何売ってるん?」

幸子がそう聞くと、彼は大きなカバンをずり下ろしながら笑い、肩をすくめてみせる。


「こないだはご愛顧ありがとさんでした。 実は今、魔王城の近くで新種の鉱石が採れるって噂があんねん。 レアアイテムがザクザクやとか。」

「魔王城って…。 ちょい待ち、それってめっちゃ危ないとこちゃうん? そんなん、知らん人が行ったら魔物にやられてまうんちゃうの?」

幸子は眉をひそめるが、マーヴィンは自信たっぷりに首を横に振る。

「いやいや。 あんたら最近、魔物と上手いこと話つけてるんやろ? 噂になってまっせ。 やっぱ世の中、交渉術やで。」


その言葉を聞きつけたジェードが横から口を挟む。

「魔王城だと? いいじゃないですか。 俺は勇者として、いつかは行かなきゃならない運命ですからね。 魔王を倒してこそ、本物の勇者ですよ。」

「また始まったわ、勇者論。 まあ…せやけど、城に行くやなんて大丈夫かな。」

幸子は少し心配げにマーヴィンを見上げると、彼は鼻の下のひげを撫でながらにやりと笑う。


「どうせあんたら、なんやかんやで突き進むタイプやろ? なら、道中の安全を確保できるアイテムを売ったるわ。 ちょっと値は張るけどな。」

「値ぇ張る? ふーん…。 そしたらちょいまけてもらおか。」

幸子がさらりと言うと、マーヴィンはあからさまに顔を引きつらせる。

「い、いや…今回ばかりはサービス厳しいかもしれへんで。 魔王城周辺のアイテムは需要が高いし…」

「なんやと? ウチは常連さんやろ。 そこをなんとか、あんたがマーヴィン流の商才見せてくれたら、こっちもいっぱい買うかもしれへんやん。」

幸子がじりじりと詰め寄ると、マーヴィンは冷や汗をかきながらカバンの中身をがさごそと探り始める。


「しゃあないな…ほ、ほなちょっとまけときますわ。 いくらおばちゃんでも、これ以上は無理でっせ。」

「おおきに。 やっぱ商売はそうこなくっちゃ。 ウチもちゃんと買うときは買うさかいに。」

満足そうに頷く幸子を見て、ジェードは苦笑しながら「さすが大阪のおばちゃん…」とぼそりとつぶやく。


かくして、一行は魔王城へ向かうべく街を出発することになった。

ジェードはテンション高めに先頭を歩き、幸子はマーヴィンから買ったお守りやポーションをカバンに入れている。

「魔王城ってやっぱり森を抜けて、山を越えた先にあるん? どないにしんどい道なんやろか。」

そう尋ねる幸子に、ジェードはロングソードを叩きながら胸を張る。


「まあ道中の魔物は、前みたいにおばちゃんがうまいこと説得してくれればいいんじゃないですか。 俺は万が一のときに剣を振るうだけですよ。」

「あんた、それ勇者の役目としてどうなん?…ま、ええわ。 ウチも命は惜しいからな。 うまいことやって無事にたどり着こ。」


森の入り口を抜け、少し険しい山道へ入ると、案の定さまざまな魔物がうろついている。

牙をむいたイノシシのような生き物や、小鬼の集団が通せんぼするように固まっていたが、幸子が一歩前に出るだけで空気が一変する。

「アンタら、こっち通りたいだけなんやけど、どうしたらええ? なんか見返りがいるなら言うてみ?」

ゴブリンたちは戸惑い気味に顔を見合わせる。

「あら、ほなこの飴ちゃんやるから、道開けてや。 そん代わり安全に行かせてな。」


謎の威圧感と愛嬌を混ぜ合わせたような幸子のやり口に、魔物側も戦意を失うらしく、次々と道を譲ってくれる。

ジェードは唖然としながらも、「もうこの光景には慣れてきた…」と小さく呟く。


険しい道を進むうち、遠くに不気味な城が見え始める。

そびえ立つ塔や尖った屋根がシルエットになり、薄紫の空を背景にまるで異世界の要塞のようだ。

「おお…あれが魔王城なんやろか。 なんや、ホンマに怖そうやな。」

幸子が思わず息を呑むと、ジェードは燃え立つような目つきで城を見つめる。

「ついに来ましたね。 俺はここで魔王を倒して、勇者としての真の力を示すんだ。」


マーヴィンは少し距離を置いて後ろを歩きながら、鼻息荒く城を見上げる。

「採れるレアアイテムって、どこにあるんやろ…宝物庫か地下の鉱山か。 ああ、儲かる予感がするで。」

それぞれが違った目的を胸に抱きながら、重々しい城門の前にたどり着いた。

意外なほど警備が薄いというか、人の気配が感じられない。


「なんでこんなにあっさり来れたんや? 魔物が襲ってこーへんのは、アンタのおかげやろうけど、まさかこんなすんなり辿り着くとはなあ。」

ジェードはまじまじと城の扉を見ながら呟く。

幸子はお守りを握りしめて、ひとまず大きく深呼吸する。

「こっから先、どないなるかわからんけど…とりあえず、見て回るだけやし。 そない難しく考えんでもええやろ。」

そう言いながら、幸子は笑みをこぼす。


扉には荘厳な装飾が施され、まるで「入ってこい」と誘うようにも見える。

勇者の名を背負うジェードと、大阪パワー満載の幸子、そして儲け話を夢見るマーヴィン。

バラバラの思惑を抱えた三人が、ゆっくりと魔王城の門へ手をかけた。

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